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◆昨日は、米FOMCが利上げを見送ったことから、米利回りの急低下と共にドルが対円や対欧州通貨で大きく下落したのが特徴的だった。ドル/円は一時119円台へ下落、ユーロ/ドルは1.14ドル台乗せへ上昇した。
◆他方、豪ドル、NZドルやカナダドルもFOMC発表直後は大きく上昇したものの、利上げ見送りでも米株価やコモディティ価格が上昇しなかったことから、すぐに反落しほぼ発表前の水準に戻った。
◆米FOMCでは、GDP成長率、コアPCEデフレータやFF金利の見通しを下方修正した上で、世界景気減速とそのインフレ率への影響の評価にもう少し時間がかかるとして利上げを見送った。Yellen議長は次回10月も含め年内利上げの可能性が高いとしており、筆者も現時点では12月FOMCでの利上げの可能性が引き続き高いとみているが、世界景気や米インフレ動向次第では来年に先送りされるシナリオも意識される状況が続きそうだ。
◆本日は、FOMC後で材料も少なく、Stevens・RBA総裁発言(8:30)、Haldane・BoEチーフエコノミスト発言(20:05)およびカナダ8月コアCPI(21:30)くらいしか予定されていないため、FOMC結果の消化が続きそうだ。ドル/円は、120円前後では押し目買いが入るかもしれないが、利上げ時期が不透明な中で、積極的なドル買いは入りにくそうだ。こうした中、中国株価が大きく下落するようだと、再び119円台もありそうだ。
昨日までの世界:米国の先送り症候群、先送り時期は年内とは限らず
ドル/円は、欧州時間には米FOMCの利上げリスクを織り込む動きからか上昇し、発表前に一時120.99円へ強含みとなった。その後、米FOMCが利上げを見送ったことから、米利回りの急低下と共に一時119.80円へ下落した。但し本日早朝にかけては120円台前半を回復している。
米FOMCでは、2016年、2017年のGDP成長率とコアPCEデフレータ、およびFF金利見通しは2015年から2017年分まで下方修正した上で、世界景気減速とそのインフレ率への影響の評価にもう少し時間がかかるとして利上げを見送った。Yellen議長は次回10月も含め年内利上げの可能性が高いとしており、筆者も現時点では12月FOMCでの利上げの可能性が引き続き高いとみているが、世界景気や米インフレ動向次第では来年に先送りされるシナリオも意識される状況が続きそうだ。
ユーロ/ドルは、欧州時間にかけては1.13ドル丁度を挟んだもみ合い推移が続いた後、米FOMCの利上げ見送りを受けて急上昇し、1.1441ドルの高値をつけた。
ユーロ/円は、欧州時間にかけてはドル/円の強含みとともに136円前後から一時137円乗せとなり、更にFOMC後は対ドルで円よりもユーロの方が上昇したことから、137.45円へ続伸した。
豪ドル/米ドルは、欧州時間にかけては原油などコモディティ価格の反落を眺め0.72ドル丁度前後から0.71ドル台半ばへ軟化して推移していた。その後、米FOMCの利上げ見送りが伝わると急反発し、一時0.7276ドルの高値をつけた。もっとも、米利上げ見送りでも米株価やコモディティ価格が上昇せず、リスクオンにはならなかったことから、すぐに0.71ドル台後半へ反落し、ほぼ発表前の水準に戻った。利上げ見送りの一因が世界景気に関する慎重な見方だったことが背景にあるとみられる。
豪ドル/円も、欧州時間にかけて86円台前半へ軟化した後、米FOMC発表後に87.51円へ急反発する局面があったもののすぐに反落し、一時86円割れとなった。
きょうの高慢な偏見:焦点は再び中国に
ドル/円は、本日は材料も少なく、FOMC結果の消化が続きそうだ。120円丁度前後では押し目買いが入るかもしれないが、利上げ時期が不透明な中で、積極的なドル買いは入りにくそうだ。こうした中、中国株価が大きく下落するようだと、再び119円台もありそうだ。
ユーロ/ドルも、米利上げ先送りと中国株価への警戒感から高止まりが続きそうだ。ECB追加緩和期待は燻るが、ECB高官からより明確な追加示唆発言が出ないと、下落基調への回帰は難しそうだ。
豪ドル/米ドルは、米FOMCも世界景気減速の悪影響の可能性を認めたことで、コモディティ価格と同様に上値の重さが再認識されたかたちとなっており、中国株価とコモディティ価格が下落すると、豪ドルも再び下落基調に戻りそうだ。
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