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◆昨日は、米10月FOMC声明文が次回12月利上げ開始の可能性を残すタカ派的な内容だったと解釈され、ドルが対主要通貨でほぼ全面高となったのが特徴的だった。ドル/円は120円台半ばから一時121.26円へ上昇、ユーロ/ドルは1.10ドル台後半から一時1.0897ドルへ急落した。対ドルでの下落は円よりユーロの方が大きかったため、ユーロ/円は133.50円近辺から一時131.98円へ下落した。
◆豪ドルは、豪3QCPIが予想外に鈍化し、コアCPIは2.15%とRBAのインフレ目標レンジの下限に近づいたことから、11月利下げ期待が高まり大きく下落、その後のタカ派的なFOMCを受けた米ドル高もあり0.7081ドルへ続落した。
◆対米ドルで唯一上昇したのはカナダドルで、昨日は原油価格が大幅に上昇したことを受けて急上昇、その後の米FOMCを受けた米ドル高で対米ドル相場は小反落したが、前日比での上昇は維持した。
◆本日早朝のRBNZでは大方の予想通り政策金利は2.75%で据え置かれたが、今後の利下げの可能性が示唆されたことで発表直後にはNZドルが下落した。但し経済指標次第であることも示されたことからあまりハト派度が強いとは受け止められず、NZドルはその後買い戻された。
◆本日は、本邦9月鉱工業生産(8:50)、米3QGDP速報値および新規失業保険申請件数(21:30)、ドイツ10月HICP(22:00)、米9月中古住宅販売仮契約件数(23:00)などが予定されている。また29日まで開催されている中国・5中全会の結果も発表される可能性がある。
◆12月利上げの可能性を残す米FOMC声明文を受けて今後再び米重要指標に注目が集まる中で、第一関門として米3QGDPが重要となる。特に今回は前期の+3.9%の高成長から+1%前後への大幅減速が予想されており、市場予想を更に下回る弱い結果だと12月利上げ開始期待が後退しドル安圧力となりそうだ。
昨日までの世界:FOMCを受けて次回12月利上げ期待が高まる
ドル/円は、米10月FOMC声明文が次回12月利上げ開始の可能性を残すタカ派的な内容だったと解釈され、米中長期債利回りの大幅上昇と共にドルが対主要通貨でほぼ全面高となり、ドル/円も120円台半ばから一時121.26円へ上昇した。但し26日の直近高値である121.56円には達していない。
米FOMC声明文では前回と比べて①海外経済・金融情勢が米経済活動を幾分抑制し、目先のインフレを押下げ圧力となる、という表現が削除されたこと、②従来は低金利をどれだけ長期間続けるか、と表現されていたのが、今回は次回会合で利上げが適切かどうか、と言う表現に変更され、12月に利上げの有無を議論することがほぼ予告されたこと、が最大の特徴で市場がタカ派的と捉える根拠となった。このため労働市場に関する記述がやや下方修正されたことはあまり材料視されなかった。12月利上げ開始の確率は高まったが半々といえ、11月、12月の米雇用統計で雇用者数の伸びが再加速したり、弱かった小売や耐久財受注が回復したり、インフレ率が上昇すれば12月利上げの可能性は高まる一方、そうでない場合には見送りの可能性も十分残っているといえそうだ。
ユーロ/ドルは、欧州時間に1.10ドル台後半へ強含みとなっていたが、タカ派的と受け止められたFOMC声明文を受けて一時1.0897ドルへ急落した。28日付当レポートで想定した動きと比べ、ユーロ/ドルの下落が最も大きかった(下表を参照)。
ユーロ/円は、対ドルでの下落が円よりユーロの方が大きかったため、132円台から133.50円近辺へ上昇していたユーロ/円は発表後に一時131.98円へ下落した。
豪ドル/米ドルは、豪3QCPIで総合が前年比+1.5%、コア(刈り込み平均と加重中央値の平均)が+2.15%と、いずれも市場予想を下回り、特にコアCPIは2.15%とRBAのインフレ目標レンジ(2-3%)の下限に近づいたことから、次回11月理事会での利下げ期待が高まって0.72ドル近辺から0.71ドル台前半へ下落した。その後小反発していたが、タカ派的なFOMCを受けた米ドル高を受けて0.7081ドルへ再度下落した。
豪ドル/円は、豪CPIの予想比下振れを受けて86円台半ばから85円台半ばへ下落した。米FOMC後は下がったが、発表前に小反発していたことから、概ね86円丁度を挟んだ動きとなった。
きょうの高慢な偏見:GDPなえ
ドル/円は、12月利上げの可能性を残す米FOMC声明文を受けて今後再び米重要指標に注目が集まる中で、第一関門として米3QGDPが重要となる。特に今回は前期の前期比年率+3.9%の高成長から+1%前後への大幅減速が予想されている。市場コンセンサスは+1.6%となっているが、アトランタ連銀によるリアルタイム予測(GDPナウ)では直近+1.1%となっており、下振れリスクがありそうだ。更に市場予想を下回るようだと12月利上げ開始期待は再び後退し、120円台へ反落しそうだ。
ユーロ/ドルは、ユーロ圏分と連動性が高いドイツHICP(インフレ率)および米3QGDPの両方が重要となるが、ドイツHICPは前月の前年比-0.2%からゼロ%へマイナスが解消する予想となっているほか、米GDPも下振れリスクがあるなど、いずれもユーロ/ドル相場の押し上げ要因となりそうだ。
豪ドル/米ドルも、米GDPが下振れるようだと上昇圧力となる。なお、中国・5中全会の結果が発表される可能性があるが、今後5年間の経済計画との関連では、豪州の主要輸出品である鉄鉱石や石炭などの資源の需要が高まるような内容とはなりにくく、豪ドルは恩恵を受けにくいものとなりそうだ。
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