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◆昨日は、ECBが次回12月理事会での追加緩和の可能性を強く示唆したことからユーロが対ドルで2%下落するなど大幅下落したのが特徴的だった。
◆ECB理事会を受けたドル高と日銀追加緩和期待の高まりを受けて、ドル/円は119円台後半から120.77円へ大きく上昇した。このため、円は対ユーロと対フランを除き全面高となった。
◆ECB追加緩和期待はコモディティ価格や豪ドルなどコモディティ通貨押上げ効果は限定的だったものの、ブラジルレアル、トルコリラ、南アランドなど高金利新興国通貨を押し上げたかたちとなった。
◆本日は、ユーロ圏10月PMI速報(17:00)、カナダ9月コアCPI(21:30)しか予定されておらず、ECB追加緩和期待を受けてアジア時間の株高期待がドル/円やコモディティ価格・通貨の下支えとなるかが注目となる。
◆ドル/円は8月末以降のレンジ上限である121-122円に近づきつつあり、来週にかけて日銀追加緩和期待から121円台乗せへ続伸する可能性が高まっている。但しECBを受けた円安・株高は日銀の追加緩和の必要性を低下させる面もある点は注意が必要だ。
◆ユーロ/ドルは、9月入り後のレンジ下限である1.11ドル丁度近辺を下回りつつあり、更に下落する可能性が高まっている。
昨日までの世界:マルタの鳩
ドル/円はマルタの首都バレッタで開催されるECB定例政策理事会まで119円台後半でやや頭重く推移していたが、ECBが追加緩和は決定しなかったものの、現在マイナス0.2%となっている中銀預金金利の更なる引下げを含むあらゆる追加緩和手段を検討する、新しい成長率・インフレ見通しも作成・公表される次回12月理事会で発表する可能性を強く示唆したことから、対ユーロでドルが大きく上昇しつれ高となったほか、日銀も追加緩和に踏み切るとの期待も高まったとみられ、ドル/円は120.77円へ大きく上昇した。このため、円は対ユーロと対フランを除き全面高となった。
ユーロ/ドルは、ECB定例政策理事会でドラギ総裁が次回会合での追加緩和決定の可能性を強く示唆したことから、1.13ドル台前半からすぐに1.12ドル割れへ急落、本日早朝にかけて続落し1.1078ドルの安値をつけた。
ユーロ/円も、135円台半ばから134.50円程度へまず急落し、その後本日早朝にかけて一時133.77円へ続落した。
豪ドル/米ドルは、東京時間昼過ぎに0.72ドル割れへ下落、その後もどちらかというと軟調に推移した。豪大手銀CBAが住宅ローン金利を引き上げたことで、RBAが追加緩和を行う必要性が高まる/追加緩和しやすくなるという思惑が働いた可能性がある。その後、ECB理事会でドラギ総裁が追加緩和を示唆したことを受けて、再び0.72ドル台半ばへ上昇する局面も見られたが限定的で長続きせず、結局概ね0.72ドル台前半で方向感のないもみ合いに終始した。この間、コモディティ価格も銅価格は上昇したが原油は横ばいで、豪ドルなどコモディティ通貨の援軍とはならなかったようだ。
豪ドル/円は、東京時間昼過ぎに85.99円へ軟化する局面があったが、その後ECB政策理事会を受けたドル/円の上昇につれ、87円台を回復した。
きょうの高慢な偏見: ECB緩和で日銀見送りのパラドックス
ドル/円は、ECB理事会の追加緩和の可能性の高まりを受けて8月末以降のレンジ上限である121-122円に近づきつつあり、来週にかけて日銀追加緩和期待から121円台乗せへ続伸する可能性が高まっている。
確かに、ECB追加緩和期待を受けたユーロ安で、対ユーロでは円高化しており、追加緩和の必要性を高める面はあるが、ドル/円は上昇、日本株も昨日の米国株のように上昇するよう可能性が高い。その場合、むしろ日銀は追加緩和をしなくても良くなる面もある。ドル/円と連動性が高い米2年債利回りも低下している。ドル/円の続伸余地はあまり大きくないと見ておいた方がよさそうだ。
ユーロ/ドルは、9月入り後のレンジ下限である1.11ドル丁度近辺を下回りつつあり、更に下落する可能性が高まっている。
豪ドル/米ドルは、コモディティ価格と共にECB追加緩和期待を受けたリスクオン的な状況から恩恵を受けておらず、むしろ10月半ば以降の反落基調が続いている。但し、来週の中国の五中全会での経済政策への期待感が下支えとなっている面もあり、横ばいからじり安のうごきとなりそうだ。
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