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◆先週金曜は、米中長期債利回りの低下継続にも拘らずドルが対主要通貨で反発し、前日の米FOMC後のドル安がほぼ帳消しとなった。原油の大幅下落もコモディティ通貨安・米ドル高に繋がった。但しドル/円は例外で、欧州時間にかけてドル安が続き一時119.06円の安値を付けた後、反発したものの120円丁度近辺までに留まった。
◆21日は、米利回りの反発の中で、ドルが対主要通貨で小幅続伸した。ドル/円も120円丁度前後から120円台半ばへ強含みとなったが、引き続きFOMC前の121円丁度近辺には届かなかった。
◆22日は一転して、欧米株価や原油価格が下落する中でリスク回避的な動きとなり、米利回りの反落と共にドル/円が下落、ユーロや豪ドルなども下落したことから、円が全面高となった。
◆昨日23日は、アジア時間に中国財新製造業PMIの予想比下振れや原油安を受けて豪ドルが下落したのが特徴的だった。他方、ユーロはドラギECB総裁をはじめECB高官が追加緩和に慎重姿勢を示したことから反発した。この間、ドル/円は120円丁度を挟んだ方向感のないレンジが続いた。
◆本日は、ドイツ9月Ifo景況感指数(17:00)、ECBによるTLTRO資金供給額公表(18:15)、米新規失業保険申請件数(21:30)、米8月耐久財受注(21:30)、米8月新築住宅販売件数(23:00)、イエレンFRB議長発言(翌朝6:00)などが予定されている。
◆ドル/円は米利上げや日銀追加緩和に関する決定的な材料が目先は出ないと見られる中で、120円丁度を中心としたレンジが続きそうだ。他方、豪ドルは中国景気懸念や資源安で下落基調が続き、年初来安値を再度試す展開となりそうだ。
昨日までの世界:豪ドルの下落基調が再開、ドル/円はレンジ
ドル/円は、先週金曜、欧州時間にかけては前日17日の米FOMC後のドル安が続き一時119.06円の安値を付けた。その後、対主要通貨でドル買戻しの動きが強まると反発したが120円丁度近辺までに留まった。
週明け21日は、米利回りが反発に向かったことからドルが対主要通貨で小幅続伸、ドル/円も120円丁度前後から120円台半ばへ強含みとなった。但し引き続き、FOMC前の121円丁度近辺には届かなかった。週末から21日にかけてはFed高官発言が多かったがまちまちでドルへの影響は限定的だった。ロックハート・アトランタ連銀総裁(投票権あり)は10月会合での利上げ開始は時間的にきついとした一方、ブラード・セントルイス連銀総裁(投票権なし)は9月会合で自ら利上げを主張、10月会合で利上げの可能性があるとした。また米8月中古住宅販売は531万件と市場予想を大きく下回ったがドルの反応は限定的だった。
22日は、欧米株価や原油価格が下落する中でリスク回避的な動きとなり、米利回りの反落と共にドル/円が下落、120円台半ばから一時120円割れとなった。アジア開銀が中国の今年、来年の成長率予想を7.2%、7.0%から各々6.8%、6.7%へ下方修正したことも世界的な市場センチメント悪化に繋がった面がある。
昨日23日は、中国9月財新製造業PMI速報が47.0と前月から予想外に悪化したことから一時120円を割り込む局面もあったが、その後欧州時間にかけては米利回りの反発と共に120円台を回復した。NY時間入り後は、米9月マークイット製造業PMIが53.0と前月から横ばいながら市場予想を若干上回ったことから小幅続伸し120.55円の高値をつけたが、上値は重く、120円台前半へ反落して引けた。
ユーロ/ドルは、先週金曜、欧州時間入りにかけては小幅続伸し一時1.1460ドルの高値を付けた。但しその後は米ドル反発基調に下押しされ急反落し、一時1.1270ドルと米FOMC発表前の水準(1.13ドル丁度近辺)をも下回った。
週明け21日は、20日のギリシャ総選挙結果(チプラス首相率いる与党シリザが第一党)への反応はなかった一方で、米利回り反発、独フォルクスヴァーゲン株の急落や週末19日のプレートECB理事発言(必要があれば行動する用意)などが材料視され、一時1.1181ドルへ続落した。
22日もユーロは続落し、1.1114ドルと1.11ドル割れ寸前となった。
23日は、ノボトニー・オーストリア中銀総裁やドラギECB総裁が追加緩和について慎重な姿勢を示したことから、追加緩和期待がやや後退し、1.11ドル台前半から一時1.1214ドルへ反発した。
ユーロ/円はユーロ/ドルとほぼ同様の動きとなり、先週金曜に137円丁度前後から135.10円へ下落、21日に134.77円へ、22日に133.32円、更に23日には中国製造業PMIの予想外の悪化の影響を受け一時133.16円へ続落した。但しその後はECB高官の追加緩和慎重姿勢を受けて134円台半ばへ反発した。
豪ドル/米ドルは、先週金曜、欧州時間にかけては米FOMC後の対豪ドルでの米ドル安の出遅れのキャッチアップか、上昇し一時0.7280ドルと前日の米FOMC後の高値を若干上回った。もっとも、その後は原油価格の大幅下落や対ユーロなどその他主要通貨対比での米ドル反発により下押しされ、0.72ドル割れへ反落した。
21日は原油価格の反発にも拘らず米ドル高などから一時0.7122ドルへ続落、ほぼ米FOMC発表前の水準を割り込んだ。
22日も欧米株安の中で続落し、一時0.7057ドルの安値を付けた。
23日も、中国製造業PMIの予想外の悪化を受けて0.70ドル台前半へ下落、そしてNY時間に原油価格が下落するとつれ安となり、0.70ドルを割り込み一時0.6989ドルの安値をつけた。
豪ドル/円は、週明け18日には豪ドル/米ドルの反発と共に86円台後半へ強含む局面もあったが、21日にかけては豪ドル/米ドルが反落する中で86円丁度近辺へ小反落したが小幅な動きに留まっていた。但し22日以降は下落が鮮明となり、欧米株安の中でドル/円と豪ドル/米ドルが共に下落したことから一時84.63円へ下落、23日には中国製造業PMIの予想外の悪化を受けて84円丁度手前へ続落、欧米時間には米ドル/円と共に85円丁度近辺へ反発する局面もあったが、その後の原油安を受けて再び84円丁度へ下落した。
きょうの高慢な偏見:れんじつのレンジ
ドル/円は、米FOMCの利上げ開始と日銀の追加緩和の可能性を明確に高めるイベントが起きない限り、120円丁度を挟んだ方向感のないレンジが続きそうだ。米国の10月利上げ開始には、中国景気減速一服の明確な兆候あるいは中国当局の大規模な財政・金融政策の発動、あるいは米国の複数のインフレ指標の明確な加速が必要だ。他方、日銀の10月末の会合での追加緩和決定には、7-9月期GDPの低成長を示唆する弱い国内経済指標や、エネルギーを除くインフレ率の伸び率鈍化などだけでなく、政府サイドからの追加緩和の必要性に関する発言に注意する必要がある。ただ現段階の情報では、いずれも米10月利上げ、日銀10月末追加緩和には不十分とみられる。
ユーロ/ドルは、昨日はECB高官の追加緩和慎重姿勢を受けて反発したが、中国経済指標の急悪化や中国株価の急落がなければ避難通貨としての需要は高まらず、どちらかというとECB追加緩和期待とドイツ10年債利回りの低下傾向を背景とした軟調が続きそうだ。本日はドイツIfo景況感指数の発表が予定されており、昨日発表のユーロ圏PMIの小幅悪化に続いて、予想以上に悪化すれば、再び追加緩和期待が高まりユーロ下押し材料となりそうだ。
豪ドル/米ドルも、先週までの買戻し局面が一服し、銅や鉄鉱石価格などの下落と共に再び下落基調に戻りつつある中、下落基調が続く見込みで、9月7日につけた年初来安値(0.6896ドル)を試す展開となりそうだ。
9月18日分
9月21日分
9月22日分
9月23日分
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