今週の特徴:中国減速とECBハト派を受けて円が全面高
今週は、1日に中国各種PMIが軒並み悪化したことを受けて中国景気減速懸念が高まり、豪ドル安や米ドルの対円、対ユーロでの下落に繋がったこと、および3日にECBが量的緩和プログラムの延長の可能性を示唆したことを受けたユーロ急落が特徴的で、結果として円が全面高となった。米早期利上げ期待が後退する中で、ドル/円は120円より上では上値の重さが意識され易く、ユーロ/円は5月、7月の安値である133円を割り込むと弱気トレンド入り手前となっているほか、豪ドル/円は8月24日の年初来安値である82.10円を窺う展開となっている(今週4日発表の米雇用統計に対する為替相場の反応見通しについては4日付けFX戦略デイリー「21時29分の豪ドル/円のショート」を参照)。
来週の見通し:静かな円ブーム
来週は、次週16-17日の米FOMCを控えて欧米で比較的材料が少ない中で、相対的に豪ドルに注目が集まりそうだ。豪ドル関連では8日に中国輸出入統計、9日にRBA高官発言、10日にRBNZ金融政策決定および豪雇用統計などが予定されている。中国株価の下落が再開したり、中国の輸出入統計が更に悪化したり、RBNZが予想されている25bpsの利下げに加えて今後の積極的な追加緩和を示唆する場合には豪ドルの年初来安値更新が継続しそうだ。他方、豪失業率が大きく低下したり、RBNZが追加緩和を示唆しない場合には豪ドルの反発リスクとなる。この間、ドル/円は重要材料が少ない中、中国株価を眺めつつ上値の重い展開が続きそうだ。
1.ドル/円
来週のドル/円は、次週16-17日の米FOMCを控えて比較的材料が少ない中、120円丁度を挟んだもみ合いながらも中国株価動向を眺めつつ上値の重い展開となりそうだ。本邦では8日の本邦2QGDP改定値発表がされるが、予想以上の大幅下方修正となる場合には追加緩和期待がやや高まり下支え要因となるかもしれない。米国では11日にコアPPIおよびミシガン大消費者信頼感速報が発表されるが、目先の米利上げ開始の有無には影響がないとみられることから、ドル/円の反応も限定的となりそうだ。
なお、人民元切下げ以降のアジア通貨の下落傾向に加えて、ECBの追加緩和期待を背景としたユーロ安も再開しつつある中で、実効ベース(貿易加重平均ベース)での円高が進行している。日経平均も調整地合いが続く中、本邦政府・日銀から追加緩和の必要性を示唆する発言が出てくる可能性が徐々に高まっている点も注目だ。
2.ユーロ
来週のユーロ/ドルは、ユーロ圏の材料がない中で、中国株価やドル関連材料に左右されやすい状況となりそうだ。とはいえ、ECBが今週3日の政策理事会で追加緩和の可能性を示唆したことから、年内にも追加緩和に踏み切るとの見方が強まっている中で、ドル高材料が出てきた際には下落し易くなっている。他方、中国株安や米経済指標の悪化といったユーロ買い材料が出ても、ユーロの上値は重くなりそうだ。ただし、ユーロ/ドルの本格的な下落トレンド再開には、ユーロ圏の景況感(特にPMI)およびHICPの悪化が続く必要があり、数ヶ月かかるかもしれない。
3.豪ドル
来週の豪ドル/米ドルは、8日の中国輸出入統計、9日のRBA高官発言、10日のRBNZ金融政策決定および豪雇用統計などが注目で、中国株価やコモディティ価格の下落が再開したり、中国の輸出入統計が更に悪化したり、RBNZが予想されている25bpsの利下げに加えて今後の積極的な追加緩和を示唆する場合には豪ドルの年初来安値更新が継続しそうだ。他方、豪失業率が大きく低下したり、RBNZが追加緩和を示唆しない場合には豪ドルの反発リスクとなる。下値目処は、対円では8月24日の直近安値である82.10円、対米ドルでは0.70ドルを割り込むと2009年の安値(0.6249ドル)まで見当たらない。
(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)
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