今週の特徴:先手必勝に出たECB
今週は、22日のECB定例政策理事会でドラギ総裁が次回12月会合での追加緩和の可能性を強く示唆したことを受けて、レンジが続いていたユーロ/ドルが1.13ドル台から一気に1.11ドル割れへ下落し1.1072ドルの安値をつけ、8月末以降のレンジ下限を割り込み下落基調回帰の兆しが見られたのが特徴的だった。また、同じく120円を中心としたレンジが続いていたドル/円も、ECB理事会を受けてドル高と日銀追加緩和期待の高まりもあって一時120.99円へ上昇、8月末以降のレンジ上限である121-122円を試しつつある。他方、豪ドルは原油価格の軟調もあって、10月12日に戻り高値(0.7382ドル)をつけた後の反落基調が続いている。
来週の見通し:フリーライダー・ブラック日銀
来週は、28日の米FOMCと30日の日銀決定会合が焦点となる。ECB追加緩和示唆で世界株価の反発基調が強まる中で、米FOMC声明文が12月利上げ開始の可能性を高めるような内容となればドルが続伸するとみられ、ユーロ/ドルは1.10ドル丁度を試す展開も考えられる。そして30日の日銀決定会合に向けては、展望レポートでの成長率・インフレ率見通しの下方修正と共に追加緩和を決定するとの期待が高まり易く、ドル/円は121円台半ばへ続伸する可能性が高い。但し、日銀はエネルギーを除いた基調インフレに焦点をシフトしており、政府も景気対策としては補正予算を考慮していると見られる中、今回は見送られる可能性が高く、日銀結果発表後はドル/円が反落するリスクが高そうだ。
1.ドル/円
来週のドル/円は、28日の米FOMCと30日の日銀決定会合が焦点となる。ECB追加緩和示唆で世界株価の反発基調が強まる中で、米FOMC声明文が12月利上げ開始の可能性を高めるような内容となればドルが上昇し121円台となりそうだ。そして30日の日銀決定会合に向けては、展望レポートでの成長率・インフレ率見通しの下方修正と共に追加緩和を決定するとの期待が高まり易く、ドル/円は121円台半ばへ続伸する可能性が高い。但し、日銀はエネルギーを除いた基調インフレに焦点をシフトしており、政府も景気対策としては補正予算を考慮していると見られる中、今回は追加緩和が見送られる可能性が高く、日銀結果発表後のドル/円の反落リスクに注意したい(日銀追加緩和に関しては投資戦略テーマ「ドル/円:追加緩和はまぼろし?」を参照)。タカ派的なFOMCを受けたドル高円安や、ECB追加緩和示唆を受けた世界株高が、日銀の追加緩和の必要性を低下させている面もある。
なお、29日発表の米3QGDPも前期の前期比年率+3.9%から+1.7%へ大幅鈍化の見込みとなっており、下振れの場合はドルの重石となるかもしれない。また、米国では翌週11月3日にも連邦債務上限問題で連邦政府の資金が枯渇する見込みとなっており、それに向けて議会で議論が収束を見せないようだと、ドルの追加的な重石となる(米連邦政府予算関連については、投資戦略テーマ「ドル:政府シャットダウンで鷹派シャットアップ」を参照)。
2.ユーロ
ユーロ/ドルも28日の米FOMC結果を睨む展開となりそうだが、ECB追加緩和期待と12月利上げ開始に向けてFOMC声明文がタカ派的な内容となれば、1.10ドル丁度方向を試す展開となりそうだ。但し、29日にドイツ分、30日にユーロ圏分のHICP(総合インフレ率)が発表予定で、いずれも前月から小幅反発する見込みとなっていることから、その場合ユーロが週末にかけて一旦買い戻される可能性が高まる。
3.豪ドル
豪ドル/米ドルは、ECB追加緩和期待の高まりの好影響を殆ど受けておらず、引き続きコモディティ価格や中国景気動向を睨んだ展開となりそうで、来週は26-29日に今後5年間の経済計画を議論する五中全会の開催や27日に中国9月工業利益の発表が注目される(前月は前年比-8.8%)。五中全会で長期的な経済政策の方向性と合わせ、短期的な景気刺激策発表への期待感がコモディティ価格や豪ドルの一定の下支えとなるが、上昇トレンド再開には力不足となりそうだ。むしろ、具体的な政策の欠如や、前月発表時におそらく初めて市場で注目されだした工業利益の更なる悪化が豪ドルの下押しリスクとなりそうだ。豪ドル/米ドルは10月12日に戻り高値である0.7382ドルをつけた後、緩やかな反落基調にある。なお、豪州では28日に3QCPIが発表予定で前期から上昇が予想されているが、足許豪州ではインフレは主要な問題ではないため、市場の反応は限定的となりそうだ。
(今週のレンジ実績は月曜から金曜昼頃まで、数値はBloombergより)
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