米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

12月利上げ判断の最大材料となる雇用統計

ADP雇用統計(前月差) 10月 +18.2万人 市場予想 +18.0万人 前月 +19.0万人(下方修正)
(予想)非農業部門雇用者数 10月 市場予想 +18.5万人 マネックス証券予想 +19万人

今月の雇用統計の意味

前回のレポートで記したように10月に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文に「次回の会合で金利引き上げが適切かどうかを決定する」という文言が加えられた。9月の雇用統計が低調に終わった後もFRB高官は「12月FOMCでの利上げ判断」について繰り返し言及していたため、12月のFOMCで利上げが判断されること自体はサプライズではないが、声明文でそれが言及されたことがサプライズとして受け止められた。一時は年内利上げ見送りの思惑に傾いていた債券マーケットは、FOMC後に年内利上げ可能性を急速に織り込む動きを見せた。

イエレン議長やフィッシャー副議長、ダドリーNY連銀総裁などの発言からすると、FRBの主流派は12月のFOMCで利上げを実施したいと考えているようだ。ただ、あくまでその判断は経済指標であることも繰り返されており、雇用の最大化に法的責務を負うFRBは、雇用統計を最大の判断材料として利上げの判断を行うとみられる。12月15日・16日に開催される次回FOMCまでに発表される雇用統計は10月分・11月分の2回。当然6日に発表される雇用統計に大きな注目が集まっている。

なお、今月から米国が冬時間になったことに伴い、発表時間は前月までの日本時間21時半から22時半に1時間遅くなるので注意されたい。

雇用統計以外の労働市場関連指標は堅調

4日に発表された雇用統計の先行指標である10月のADP雇用統計は前月差18.2万人増とまずまず堅調で、市場予想を上回った(グラフ参照)。

ADP雇用統計は7月16.8万人増、8月18.1万人増、9月18.9万人増、10月18.1万人増と、ほぼ一貫して20万人を上回る増加ペースだった昨年からは増加ペースが鈍っている。ただ、労働市場が大きく回復して失業率は完全雇用の水準に近づきつつあるとされているなかで、それは無理からぬことだろう。

ADP雇用統計以外にも毎週発表されている新規失業保険申請件数は減少(望ましい)傾向を続けており(グラフ参照)、米国の労働市場は堅調に回復している可能性が高い。マネックス証券では10月の非農業部門雇用者数はADP雇用統計と整合的な19万人増程度になるとみている。

非農業部門雇用者数以外に注目度が高いのが、労働者の平均時給の前年比の伸びである。賃金の伸びは将来のインフレ圧力となるため、FRBが利上げを判断する材料の1つとなっているとみられる。

リーマン・ショック前は前年比3%を超える高い伸びを見せていたが、足下では2.2%前後の伸びとなっており、なかなか高まってこない。今月分の市場予想は2.3%増だが、これを上回る高い伸びとなれば、12月利上げが強く意識される可能性がある。

雇用統計の結果によって想定されるマーケットの反応

前述したように今月の雇用統計で特に注目されるのは、非農業部門雇用者数と平均時給の伸びである。両指標が市場予想を上回れば、12月利上げが意識されてドル買いが進み円安ドル高の反応が考えられる。

ただ、FOMCの声明が発表された10月末以降既に米2年債利回りが大きく上昇し、既に一定程度ドル高が進んでいることには注意が必要だ(グラフ参照)。

非農業部門雇用者数が20万人を上回り、平均時給が2.5%以上の高い伸びとなるようなケースは別にして、市場予想を上回っても小幅だったり、ほぼ一致したりすると、いったん手仕舞い売りが入ってドルが反落するリスクがありそうだ。相当に強い数値が出ないかぎり、122円のレンジを上抜けるのは難しいかもしれない。

用語解説

雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

ISM景況感指数
ISM(Institute for Supply Management 供給管理協会)が発表する景気転換の先行指標である。供給管理協会が企業の担当者にアンケート調査を実施して作成しており、主要経済指標の中ではいち早く発表されることから景気の先行指標として重要視されている。数値が50を上回れば企業の景況感が好転、50を下回れば悪化していることを示す。製造業、非製造業それぞれ別に指標が発表される。

新車販売台数
オートデータ社が毎月月初に前月分を発表する米国の新車販売台数。販売台数は個人消費動向の確認に加えて、関連部品などが多岐にわたり製造業全体に影響をあたえるため注目を集める。

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