日本株銘柄フォーカス

マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー 益嶋 裕が様々な角度から焦点をあてて日本企業を紹介していきます。

益嶋 裕 プロフィール

会社四季報活用術その3 「ネットキャッシュ」を計算し、もしもの場合の安全度をチェック

ネットキャッシュとは?

前回の銘柄フォーカスでは、会社四季報を使って業績のトレンドをチェックする方法、そして「有価証券報告書」を使ってより長期の数値を取得する方法をご紹介しました。

本日のレポートでは、リーマン・ショックのような経済危機が起きたり、不祥事が起きて会社の業績が一時的に悪化したりするなど「もしもの事態」が起きた際にも、手元資金が豊富で会社の資金繰りが行き詰まる可能性が低い銘柄を会社四季報を使って見極める方法をご紹介します。

その方法とは、企業の「ネットキャッシュ」を確認することです。ネットキャッシュとは「現金同等物」から「有利子負債」を差し引いたものを示します。簡単に言うと、「企業の持っている現金またはそれに類するものから、借金を差し引いたもの」がネットキャッシュで、このネットキャッシュがプラスだということは「実質無借金企業」であると言い換えることができます。

私たちの身近な例で考えると、同じ30万円の給料をもらっているAさんとBさんでも、Aさんは100万円の貯金・Bさんは100万円の借金があったとすると、急に景気が悪くなり失業して給料がもらえなくなった際にはAさんの方が安心度が高い、そんな風に考えるとわかりやすいと思います。会社四季報を活用すればいとも簡単に企業のネットキャッシュを確認することができます。

会社四季報を活用してネットキャッシュを確認する方法

それではいよいよ具体的に会社四季報を使って企業のネットキャッシュを確認する方法をみていきましょう。上述したとおり、ネットキャッシュとは「現金同等物」から「有利子負債」を差し引いたものを差します。まずは「現金同等物」の確認方法をみていきましょう。

マネックス証券に掲載されている会社四季報では、「基礎/財務情報」「業績/株主構成」「資本異動/役員等」という3つのサブメニューに分かれています。現金同等物は「業績/株主構成」の中に記載されています。下記の図はサンリオ(8136)の「業績/株主構成」のページです。

図を見ていただくと、キャッシュフローという欄に「現金等」という項目があります。まさにこれが現金同等物を示しています。サンリオの場合は376億円(カッコ内の416億円は前期の数字)ということになります。

では続いて「有利子負債」を確認しましょう。今度は「基礎/財務情報」というサブメニューに移ります。一番下までスクロールさせると、以下の項目が表示されます。

今度は財務という欄に「有利子負債」という項目があります。これがサンリオの有利子負債を示しており、その金額は約190億円です。(サンリオの場合「現金等」の欄は単位が億円、「有利子負債」の欄は単位が百万円と異なっているのでご注意ください。)

これで「現金同等物」と「有利子負債」を取得することができました。サンリオの場合は、現金同等物が376億円、有利子負債が190億円ですので、差し引きすると約186億円現金同等物の方が多いことになります。サンリオは仮にすぐさま有利子負債を全て返済したとしても現金同等物が186億円残るということです。このように、会社四季報を活用すれば簡単にネットキャッシュを算出することができます。ぜひ投資をご検討されている銘柄のネットキャッシュをチェックしてみてください。

次回のレポートでは、ネットキャッシュがプラスである銘柄を抽出し、条件を加えてご紹介したいと思います。また、本レポートで記載した内容はこちらのセミナーでもお伝えしておりますので、ぜひそちらもご参照ください。

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