チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
2016年以降の経済・市場展望 PART2 日本株式市場
「2016年以降の経済・市場展望 PART1」を書いたのが1か月前。ずいぶんと間が空いてしまった。PART1の最後で、PART2では為替の見通しと米国経済のより根本的なイシューについて述べるとして、こんな予告を出していた。
<今後の利上げはインフレが鍵と書いたが、そのインフレは弱いままだろう。(中略)インフレが高まらないのは賃金が伸びないからで、それはここ数年のことではない。もっと長期かつ本質的な問題がそこにある。「21世紀の資本論」もしくは「21世紀の産業革命」と言うべき問題である。>
これを書いたときは、そのテーマについて語る気まんまんだったのだが、例によっていつもの悪い癖 - サボり病 - が出たうえに、忘年会シーズンに突入し、連日二日酔いの頭ではこれらのタフなテーマにはとても取り組めるような状態ではなかった。せいぜい、頭がまわるのは有馬記念の予想くらいだった。
そうこうするうちにクリスマスも過ぎ有馬記念も終わって、今年も残すところ3営業日となった。ここにきて、日本株の来年の見通しを述べていないことに気が付いた。週刊ダイヤモンドや東洋経済やそのほかオンライン系のメディア等にさんざん寄稿していたので書いた気になっていたが、実は自分の本丸である「ストラテジーレポート」ではまだだったのだ。
と、いうことで、「2016年以降の経済・市場展望 PART2」は、当初の予定を変更して、日本株式市場の見通しについて述べます。
1.結論:株価は年前半で高値をつけて、そこでピークアウト。年後半は下落する。2016年末の日経平均は1万8000円を予想。年間のリターンは5年ぶりにマイナスとなるだろう。
2.高値の時期・株価:5月~6月。メインシナリオで2万3000円。リスクシナリオとして、2万1000円と予想。
3.理由:アベノミクスの賞味期限切れ。円高等による企業業績の伸び鈍化。消費増税による17年度景気低迷に対する警戒感。
4.株価の予想レンジ:
株価を決める要因は様々あるが、最終的には企業の業績がどうなるかということに尽きる。より正確に言えば、「企業の業績がどうなるか」という投資家の期待(予想)によって株価は動く。投資家の期待に影響を与える要因は、世界の政治経済情勢から地政学リスク、原油等の商品市況、各産業の動向に至るまで無数にある。それら個々の要因を考慮したうえで、最終的に市場参加者の多くが株式市場で形成される株価についてどのような期待を抱くかということを予想するのは非常に難しい。と、いうより、ほぼ不可能である。だから株価を予想したところで、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」ということになる。
日次や週次、あるいは月次といった短期間の株価の動きを時系列で予想することはできないとしても、例えば1年間という区切りのなかで、株価がどういったレンジに収まりそうかということは、ある程度なら見当をつけることができる。前述の通り、株価は最終的には企業業績を反映して決まるので、それをもとに株価が取り得るレンジを考える。
日経平均がひとつの会社だと考えると、そのEPS(1株当たり利益)は今期で約1310円と見込まれている。これは、日経平均を構成する225銘柄について個別銘柄を調査するアナリストの予想を積み上げてその平均をとったものだ(クイックコンセンサスの集計による)。来期は8%増益の1420円の予想だ。
この予想EPSに対して何倍まで株価が買われるかを評価する尺度をPER(株価収益率;Price Earnings Ratio)といい、過去の平均などから考えると15倍を標準値とおいて問題ないと考える。
我々にとっての幸運は、近年の日本株式市場にもようやくこの「バリュエーション(株価評価尺度)」という概念が定着してきたことである。例えば今年、日経平均が高値をつけた6月下旬、PERは16倍程度であり、反対に安値(*)をつけた9月末は14倍割れだった。標準値である15倍を挟んで前後+-1倍の範囲内だ。ずいぶん荒い値動きを示したように感じられた1年だったが、利益見合いの株価という意味では高値も安値も説明がつく水準に収まっていた。(*注:年間の最安値は1月中旬だが、16年/3月期業績を反映した株価の動きとしては、9月末安値のPERを参照するほうが適切と考えた。)
これを2016年の相場にも当てはめよう。但し、ここで少々厄介な問題がある。企業の業績見通しだが、大きくわけて2通りの予想がある。企業自身が発表する会社計画としての業績見通しと、市場のアナリストが予想する数字との2種類だ。そして大抵、企業側発表の業績見通しというのは、期初は特に慎重なものとなりやすい。来期のケースについて言えば、来期の業績の伸びゼロ、すなわち今期見込み対比横ばいで出してくることも考えられる。EPSで言えば、2016年も1310円から増えないというものだ。なので、弱気のケースは保守的な企業側見通しを、強気のケースでは8%増益の1420円が維持されると仮定したアナリスト予想(クイックコンセンサス)を使うものとしよう。
2016年の日経平均は、
安値 1310円×14倍=1万8340円
高値 1420円×16倍=2万2720円
のレンジとなるだろう。
5. 2016年が天井~下落となる背景:
ここまでは単なる四則演算であり、株価予想でもなんでもない。問題は、いつ、どのような状況でこれらの高値・安値をつけるのか、その展開を予想することである。株価を予想するのは不可能と前述した。訂正しよう。株価を正確に予想する(つまり当てる)ことは不可能だが、予想するだけならだれでもできる。ストラテジストとして飯が食えるかどうかは、そのだれでもできる予想が売り物になるかというところであり、それは「ストーリー」次第といえるだろう。
日本株は2012年から上昇に転じ、このままいけば今年も年間リターンはプラスで終わりそうだ。これで4年連続の上昇となる。振り返れば、2012年末の安倍政権誕生を機に、この上昇相場がスタートした。実際には、2012年11月、当時首相だった民主党の野田氏が衆院を解散すると宣言した瞬間から株価上昇が始まったのだが、その時点ですでに安倍政権誕生が確実視されていたわけだから、「2012年末の安倍政権誕生を機に」と言っても間違いではないだろう。その意味で、この相場はまさに「アベノミクス相場」であり、したがって相場の帰趨はアベノミクス次第であるというのが僕の考えだ。
その安倍政権は12月26日で誕生から3年が経ち、4年目に突入した。株式相場の格言で、「小回り3か月、大回り3年」という。相場のサイクルは小さな周期で3か月、大きな周期は3年で一区切りとするものだ。日本株相場もそろそろ転機を迎えると考える。それは、前述したようにこの相場はアベノミクス次第であり、その肝心のアベノミクスが息切れしてきているからである。来年の参院選まではなんとか景気のいい話題をばらまいて市場の歓心を買おうとするだろうが、夏場を過ぎたら要注意だ。17年4月に消費税を再び上げるなら景気が減速するのは自明のことだから、相場はそれを先取りして手仕舞い売りに押されるだろう。戦後、東証が再開してから日経平均が5年連続で上昇したことは、80年代バブルの異常期を除いてなく(*)、4年連続が最長である。過去のパターンにならえば来年はマイナスのリターンとなると思われる。これは先ほどの「大回り3年」という格言にも一致しよう。4年連続高となる過程で3年一区切りという相場のサイクルが含まれる。今回のケースは、安倍政権誕生3年というサイクルを含んだ4年連続高となっている。
(*注:78~89年まで12年連続の上昇を記録した)
こうした相場の周期性などの経験則は、たまたまそうだったから、というだけでなく、それなりに理由があってのものが多い。ここで挙げた「大回り3年」や「4年連続高が限界」というのも、どんな材料も3~4年で賞味期限が切れるということを表している。アベノミクスもそろそろ出尽くし感が濃厚となってきた。アベノミクスとひとことで括られるが、実際にはどのような施策が打たれ、株式市場にどのような影響を与えたのかを振り駆ってみよう。
アベノミクス相場の実質的な1年目に当たる2013年春に日銀が異次元緩和を行った。いわゆる黒田バズーカである。これは相当効いた。この年の日経平均の上昇率は5割を超え、1972年以来41年ぶりの大きさとなった。72年当時と言えば田中角栄氏が首相に就任し「列島改造ブーム」に沸いた時期だった。それだけ記録的な上げ相場を演じたわけだから、その反動で翌年は年初から4カ月連続安となった。日経平均の月別上昇確率第1位は1月、第2位は4月。年の初め、年度の初めは新規資金の流入等もあって相場が上昇しやすいはずだが、2014年は1月がワースト・パフォーマンス、4月が最下位から2番目の低さだった。相場が持ち直したのは5月になってから。6月に発表された成長戦略第二弾「日本再興戦略改訂2014」の内容が市場に伝わり始めたころと時期を同じくする。それだけこの「日本再興戦略改訂2014」は市場に好感された。特に外国人投資家や機関投資家の評価が高かった。グローバル水準のROEを目指す、そのためにはコーポレートガバナンスやスチュワードシップコードを強化し経営者のマインドを変革すると高らかに謳ったからである。ようやく日本企業が変わるという期待が株価を押し上げた。
加えて10月末には日銀の追加緩和、いわゆる黒田バズーカ2(あるいはハロウィーン緩和)が実施され日経平均は3年連続上昇となった。
そして今年は「コーポレートガバナンス元年」と言われたように、日本企業の変革期待で年初から上昇が続き、日経平均は5月に2万円の大台を回復した。しかし、その後、中国ショックや原油安、米国利上げを巡る不透明感などから夏場に急落し、10~11月と戻りを試したものの2万円の大台回復はならず今年も終わりそうだ。
こう振り返ってみると、結局アベノミクスで効果があったのは日銀の金融緩和とコーポレートガバナンス強化等による企業改革を促す政策だけである。アベノミクスと言えば「3本の矢」であり、矢はこれまで新旧合わせて6本出されているが、もう限界だろう。そもそも「新3本の矢」は発表直後から「矢」でなく「的」ではないかと疑問符がつけられる始末。もうこれ以上、有効な「矢」が打ち出されるとは思えない。
そもそも効果のあった日銀の追加緩和も手詰まり感が強い。黒田バズーカ1は確かに歴史的な株価上昇を演出したが、黒田バズーカ2が放たれた2014年は、「日本再興戦略改訂2014」との併せ技で日経平均は7%の上昇にとどまった。そして今年は追加緩和は結局なく、師走の日銀金融政策決定会合でQQEの「補完措置」という、なんとも中途半端な策が出されただけ。「戦力の逐次投入はしない」「やれることはいくらでもある」という日銀総裁の発言と真逆のアクションだけに、市場は失望で反応。日経平均は決定会合からクリスマスの日まで5日続落となった。
コーポレートガバナンスや日本の企業改革についても期待先行の感が強い。そもそも、コーポレートガバナンス・コードの副題で「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために」と記されているように、実際に日本の上場企業が成長と企業価値向上に本格的に取り組んでいくのは緒についたばかり。コーポレートガバナンス・コードの導入は最低限の体制整備に過ぎない。社外取締役を増やせば企業価値が即座に向上するわけではないのだ。
効果があったように思われる日銀の追加緩和にせよ、コーポレートガバナンス革命にせよ、「期待」を先食いして相場が上昇したに過ぎない。事実、賃金が上がって2%のインフレが達成されたわけでも、日本企業のコーポレートガバナンスの意識が格段に改善して企業価値が大幅に向上したわけでもないのだから。そして安倍政権から期待を先食いさせるような政策はもう出てこないだろう。2016年は期待先行で買った夢から覚めて現実を直視する年となるだろう。
6.年間の株価推移:
まず年前半、日本株相場は堅調な推移を辿るだろう。ひとつには季節性がある。過去60年超の期間で、日経平均の月別上昇確率第1位は1月、第2は4月。年の初め、年度の初めは新規資金の流入等もあって相場が上昇しやすい。昨今ではすっかり人口に膾炙した感のある「Sell in May (5月に売れ)」という相場格言も、春まで相場が強含む傾向を言い表したものである。
そのように、もともと年前半は相場が上昇しやすいが、今年はさらに材料がある。7月の参院選だ。安倍政権としては参院選の前に、景気や株式相場を冷やすような状況は是が非でも避けようとするだろう。否が応でも市場の歓心を買うような言動が多くなるはずだ。5月の伊勢志摩サミットから「上げ潮」に乗って参院選に臨みたいはずであろう。
ファンダメンタルズ面では4月下旬から5月にかけて15年度の決算発表を迎える。そこで上場企業の2期連続最高益更新を確認することになるだろう。好決算を受けて6月の株主総会シーズンを前に増配や自社株買いなど株主還元策もぞくぞくと発表されると思われ、これも相場の地合いを良くするだろう。但し、懸念は企業側が発表する慎重な来期業績見通しに引きずられることだ。そちらにバイアスがかかれば相場の天井は低くなる。
もうひとつ年前半、相場の押し上げ要因になると思われる材料は日銀の追加緩和だ。前述した日銀の「補完措置」は追加緩和の布石であり、追加緩和をおこないやすくするのが日銀の狙いであることは明白だ。追加緩和のタイミングは4月だろう。春闘で賃上げが思うように進まないことを確認し、それを理由に追加緩和に踏み切るとみる。
以上のように年前半は、1)相場が上がりやすい季節性、2)伊勢志摩サミット・参院選を控えて景気浮揚を狙った政策運営期待、3)2期連続最高益での着地~3期連続最高益期待、4)株主還元策の強化、5)日銀の追加緩和などを材料に株式市場は堅調に推移し、5月か6月に2万2000~3000円程度の高値をつけると予想する。
但し、その後はアベノミクスの息切れ感が明確になるとともに相場は消費増税による17年度の景気低迷を警戒して下げに転じるだろう。もうひとつの大きな日本株の売り要因は為替が円高になるというリスクだ。これまでのドル高・円安シナリオが反転する。これまでのドル高・円安シナリオとは
米国:景気が良い⇒FRBは利上げ
日本:デフレ脱却取り組み続く⇒日銀は異次元緩和継続
というものだったが、そのシナリオは完全にやり尽くした感がある。2016年は、
米国:FRBは利上げしたものの、そのペースは緩慢
日本:日銀のQQEもトーンダウンもしくは打ち止め感
という新たなシナリオを確認していくことになるだろう。当然、これまでと逆の動き、すなわちドル安円高となるだろう。
原油価格も相当下げた。予断は許さないが来年は横ばいから反発する可能性も十分ある。
日本企業の好業績は円安・原油安の恩恵に負っているところがかなりあり、それが剥落すれば来期の業績は相当見劣りがするものとなろう。
このように年後半は、1)消費増税による景気減速に対する警戒感、2)有益な政策が打ち出されないことでアベノミクスに対する失望感の高まり、3)円高リスク、4)原油相場の反発、5)3と4を受けた企業業績の悪化などのリスクが顕在化する可能性がある。
2016年の日本株式相場は高値での売り時を探ることが最大の焦点と思われ、それはおそらく年前半にやってくると想定している。
7.リスクシナリオ
相場の波乱材料とリスクシナリオをいくつか挙げておく。
まず、日銀の追加緩和が発動されても市場で評価されないリスク。黒田バズーカ3で打ち止め感が出て相場が上昇しても短命に終わる可能性がある。その場合、年前半の相場上昇の天井は低くなるだろう。保守的な企業側見通しのEPS1310円をベースにしてもPER16倍で2万1000円弱はいく。2015年高値に顔合わせか若干上回る程度か。
反対にポジティブ・シナリオは消費増税の再延期(もしくは9%にしか引き上げない)。先ごろまとまった来年度予算案を見ても、社会保障費の膨張によって一向に歯止めがかからない財政の悪化という観点からは、とても「ポジティブ・シナリオ」とは言えないが、ショートターミズム志向の強い市場関係者には、17年度の景気低迷が避けられるという点で、歓迎されるだろう。
その場合は、国民に信を問うという口実で衆院解散があり得る。参院選とのW選挙はないというのが政治評論家のコンセンサスだが、W選はなくとも年内にはやるかもしれない。時期は12月という見立てがあるが僕も同意する。安倍政権は12年12月の総選挙で誕生し、消費増税を見送ると言って14年も解散、12月に総選挙で再び勝った。長期政権を狙うなら、2度あることは3度あると16年師走の総選挙もあり得る。おそらく与党は勝つだろう。勝ち方にもよるが、やはり相場は政治の安定を好感して年末高というリアクションになるだろう。これが、メインシナリオの年後半下落予想に反する、アップサイド(上振れ)シナリオだ。
選挙絡みの不確定要因として、もうひとつ、参院選で憲法改正が争点とされるリスクについて挙げておく。そうなれば株式市場にとっては無論、ネガティブ材料である。おおさか維新の会代表を辞任した橋下徹氏は「来夏の参院選が勝負。自民、公明、おおさか維新で3分の2を獲得し、憲法を改正したい」と語っている。これに安倍首相がどう反応するだろうか。安倍首相は、都内のホテルの日本料理店で橋下氏と会談した。菅義偉官房長官とおおさか維新の会代表の松井一郎大阪府知事も同席した。首相と橋下氏は双方が目指す憲法改正や、来年夏の参院選の連携などについて意見交換したとみられる。
憲法改正は言うまでもなく安倍首相の悲願。橋下氏に焚き付けられて変な気を起こさないでくれたら良いが。参院選で憲法改正が争点とされるだけでも株式市場にとってリスクだが、選挙の結果次第でまたいくつものシナリオが考えられる。ここではそこまで考慮するのは時期尚早なので深く踏み込まないが、頭の体操として各自考えるのは意味があるだろう。次の参院選からは18歳投票が始まるのも不確実性を高める一因である。ひとつ言えるのは、長期の上昇相場には政治の安定が欠かせないということである。
海外にも波乱材料は多い。2016年最大の注目材料は、米国大統領選の行方である。ヒラリー・クリントン氏の本命は揺るがないが、万が一にもトランプ氏となれば世界の市場は動揺するだろう。
もうひとつ、重大な懸念材料は地政学リスクの高まり。なかでも筆頭は中東情勢である。非常に混沌としており、専門家でもまったく予測不能という事態に陥っている。まさにカオス的な状況だ。ISだけでなく過激派組織が無数に生まれ、宗教と民族の対立が情勢を複雑にしている。何がどう転ぶかまったくわからない。ひとつ言えるのは、一昔前の国際関係に基づく常識は通用しないということだ。
中東から離れれば、南シナ海の緊張が日本にはいちばん影響が大きいだろう。しかし、短期的に、例えば2016年中になにか大きく事態が変わるかと言えばそれはないだろう。世界1、2の大国である米国と中国は「大人の関係」を維持するだろう。特に2016年は米国大統領選の年であり、オバマ政権は事実上幕引きを飾ることだけに専念している。難しい政治判断については既にレームダック化して久しい。米国側から過激なアクションはないし、習近平政権も長期でじっくり事を構える様子がうかがえる。
こうした状況でいちばん怖いのが「偶発的な事故」である。以下は朝日新聞の報道だ。
<米軍の戦略爆撃機B52が今月中旬、南シナ海で中国が埋め立て、領有権を主張する人工島から12カイリ(約22キロ)内を誤って飛行したことが、わかった。米国防総省当局者が明らかにした。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、人工島から2カイリまで接近した。中国外務省は、米政府に「厳重な申し入れ」をしたと発表した。米側は調査中と応じたという。>
軍事的な挑発行為ではなく、あくまで悪天候が原因の飛行ミスとのことだが、これに対してもしも中国が攻撃を加え、米軍機を撃墜でもしていたら...と考えると空恐ろしい。しかし、そのリスクは現実に起こり得る。そしてその偶発的リスクが示現する時は、トルコがロシア軍の戦闘機を撃墜した際の騒ぎとは比べものにならないインパクトを世界に与えるだろう。その場合、いちばん、過激に反応するのは日本株相場であることは言うまでもないだろう。
投資戦略、業種、銘柄等についてはまた次回以降に。新年会が一巡して酒が抜けたら着手するので、しばしお待ちいただきたい。
不確実性の時代である。リスクを挙げればきりがない。われわれはそうした時代に生き、自分の頭で考え意思決定をしていくしかない。それが投資であっても、自分自身の人生であっても。No Investment、No Life. どうぞ良いお年をお迎えください。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
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