チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
今日の株式市場の反応について(マーケット・スナップショット)
先週の「マーケット・スナップショット」で、紹介した小幡績・慶應義塾大学准教授の「仮説」。市場というのは、なぜ事実をあえて曲げて解釈するのか?
仮説1 都合が良いから。
市場が乱高下したほうが取引チャンスが増えて都合が良い
仮説2 あほだから。
今週も仮説2を信じたくなるような展開がずっと続いてきたが、極めつけは今日の動きだ。日銀は今日、残存期間5年超10年以下の国債を対象に、固定利回りで無制限に国債を買い入れる指し値オペを実施した。日銀は通常の国債買い入れオペでも5年超10年以下の予定額を増額した。明らかに金利上昇を抑制する姿勢を示した。これまで黒田総裁はいくら早期緩和縮小観測を打ち消しても、市場の勝手な思惑で円高が進行してきた。「口で言ってもわからないなら力で示した」というところであろう。
さすがに為替市場も白旗を上げた。米国金利の上昇もあって、本日の正午現在、ドル円相場は109円台後半まで円安ドル高に動いている。
一方、株式市場は大幅反落。日経平均の前場終値は300円を超える大幅安だ。これはいったいどういうことなのだろう(先週も同じフレーズを述べた)。日経平均が2万4000円を超えたところで一旦ピークをつけて、6日続落となったのは、ダボスでの一連の要人発言などもあって円高が嫌気されたからではなかったのか。その円高も日銀の明確なデモンストレーションと米国長期金利上昇という「強烈な組み合わせ」で修正の動きが見られる。なぜこれに日本株が反応しないのか。
米国の金利上昇を警戒 ‐ という声があるが、よその国の金利上昇をなぜそこまで気にするのか。当の米国市場は金利上昇のなかダウ平均は依然として2万6000ドル台を維持。決算を好感してアップルやアマゾンの株価は時間外取引で大幅高になっている。
あえて今日の株安に理由を見つけるとすれば、1)昨日の大幅高の反動安、2)今晩の雇用統計への警戒、であろう。
昨日の大幅高は20カ月連続の月初高というアノマリーだから、その特殊要因が剥落して下げたという解釈がひとつ。もうひとつの雇用統計への警戒は悪い数字が出るというより、その逆だ。強い数字が出て米国の長期金利が一段と跳ね上がることへの警戒だ。一気に10bps程度上がって2.9%台にでもなればさすがに米国株も大幅調整は免れないだろうという懸念だ。
嫌な気がする。こちらのレポート(雇用統計プレビュー)もご参照ください。
日経平均は300円安だが、TOPIXは16ポイント(0.86%)安で比較的マイルドな下げにとどまっている。まだ早期に25日線奪回の可能性も残されており、トレンドが崩れたとは言えない。個別にも神戸鋼、花王、リコーなど好業績株への買いは入っており、今晩のNY次第というところであろう。
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