今日(現地時間11月5日火曜日)は、米大統領選挙の速報から目が離せませんでした。執筆時点の午後2時では共和党トランプ氏が230票を得票し、ハリス氏の205票を大きくリードしています。必要な得票数は270票。7つの激戦区の中では、未開票のネバダ州を除く6つの州で、トランプ氏の勝利か、優勢が伝えられています。まだ結果が確定するには時間がかかりそうですが、直前に伝えられていた激戦区でのハリス氏の勢いは何だったのか…やはり選挙は水ものです。
しかも、今のところ、上院は共和党が過半数に達していて、下院も共和党が優勢となっています。
そのような中で、2時時点でTOPIXは2%近く上昇しており、特に銀行は全業種中最大の4.6%の上昇となっています。また、ドル円は朝9時から154円まで、3円も円安が進みました。
初動としては、これは定石どおりの反応でしょう。トランプ氏の提案している政策の中でも、有権者に特に人気があったのは、社会保障給付金や時間外労働所得の課税撤廃など。上下院も制すれば、これらの税金撤廃の案も通過する可能性が高まるでしょう。財政拡張で景気浮揚、株高につながるとの思惑です。
しかし、中期的にはこの政策の弱点が露呈する可能性が高いと考えます。年明け1月には米国の債務上限が復活する予定です。現在、米国を「AAA」としている格付会社ムーディーズも、新しい政権の方針や債務上限の管理をみて格下げを検討すると思われます。これはドルに対しては逆風となりえます。
また、関税引き上げは、懸念されている通り、国内物価の上昇を招く可能性が高いでしょう。それでなくても、株や不動産といった資産価格の上昇で、米国の、特に富裕層の消費は衰えていません。来年もしインフレが再燃すれば、FRBは利下げ継続を正当化するのは難しくなるでしょう。そうなれば、日銀は利上げしやすくなるでしょうから、やはり円安には歯止めがかかると同時に、銀行株にはプラスとなります。
さらに、仮にトランプ氏勝利で上下院も共和党が制すれば、米国では、銀行規制が緩和される可能性が高まるでしょう。トランプ氏は、米国の証券取引委員会(SEC)と、3つの金融規制当局のうちの2つ(OCCとFDIC)について、経営層を刷新すると噂されています。残る規制当局であるFRBについては、その独立性から経営陣の変更は難しいですが、いずれにしてもパウエルFRB議長の任期はあと1年半に迫っています。トランプ氏は、前回の任期中にも米銀規制ドッド・フランク法を改正し、中小銀行に対する規制を緩和しました。
規制緩和は米国の銀行に限った話ではありますが、邦銀を含む世界的な銀行規制の流れに変化をもたらすかもしれません。銀行の規制緩和は長期的にみればリスクですが、現在のように企業の貸倒が低く銀行の資本も充実している環境では、当面、副作用は少ないでしょう。
円安ドル高には限界があると思いますが、邦銀株については、トランプラリー後の上値もありうるのでは…と思います。
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