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山本 雅文「FX戦略デイリー」

シニア・ストラテジスト 山本 雅文が国内外のファンダメンタルズ分析を基に、主に米ドル、ユーロ、豪ドル相場の先行き見通しを分かりやすく、かつ深く鋭く分析し予想するレポートです。
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シニア・ストラテジスト 山本 雅文のレポートは2015年10月30日をもって更新は終了しました。これまでご愛読いただきありがとうございました。
(10月26日収録)
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2015年10月26日

北京緩和は通じ続けるか?

<ポイント>

◆先週金曜は、東京時間午後8時過ぎに中国人民銀がサプライズの金融緩和を発表したことから、米中長期債利回りの上昇と共にドルが対主要通貨で全面高となった。ECBと人民銀の緩和姿勢により世界金融市場が安定化に向かい、米FOMCが利上げをし易くなるとの見方が台頭したようだ。
◆ドル/円は121円丁度手前まで続伸していたが、東京時間夕方に麻生財務相、本田内閣官房参与から目先の日銀追加緩和に否定的な発言が相次ぐと一時120.23円へ反落した。もっとも、東京時間午後8時過ぎに中国人民銀が金融緩和を発表すると米利回り上昇と共に反発、NY時間に121.48円へ大幅に上昇した。
◆ユーロ/ドルはユーロ圏PMIの予想比上振れを受けて一時1.11ドル台半ばへ小反発する局面もあったが、その後は中国金融緩和決定を受けたドル高で再び下落に向かい、1.0997ドルの安値をつけた。
◆金融緩和から恩恵を受けていないのがコモディティおよびコモディティ通貨で、豪ドルは欧州時間にかけては中国金融緩和決定もあって反発基調となり0.72ドル丁度近辺から0.7297ドルへ上昇したが、その後NY時間入り後には原油価格の下落に引きずられて0.72ドル丁度近辺へ反落・逆戻りした。
◆本日は、中国五中全会開会(29日まで)、ドイツ10月Ifo景況感(18:00)、メルシュECB理事発言(19:45)、米9月新築住宅販売件数(23:00)などが予定されている。引き続き、欧中の金融緩和姿勢の余韻がどの程度続くかが注目で、ドル/円は122円方向へ続伸するか、ユーロ/ドルは1.10ドルを明確に割り込むかが注目となる。但し、中国は五中全会を前に金融緩和を発表し追加策が出てくるかは不透明となり、ECB追加緩和も相当程度織り込まれたとみられ、ドルロング、ユーロショートの利食いにも注意が必要となりそうだ。

昨日までの世界:中国サプライズ緩和で米利上げ期待が高まる

ドル/円は、前日の流れを引き継ぎ東京時間朝方には121円丁度手前まで続伸していたが、東京時間夕方に麻生財務相、本田内閣府参与から目先の日銀追加緩和に関して否定的な発言が相次ぐと一時120.23円へ反落した。麻生財務相は「今すぐ金融緩和だけで本来の目標に行きにくい」と述べ、最近の追加緩和に関する否定的な発言を繰り返したほか、異次元緩和推進役の一人だった本田内閣官房参与も「今すぐ追加緩和をする必要ない、低所得者支援が必要」と述べ、現在の安倍政権下で物価目標早期達成や金融政策が最重要課題ではないことを浮き彫りにしたかたちとなった。
もっとも、東京時間午後8時過ぎに中国人民銀が金融緩和(25bpsの利下げ、預金準備率の引下げ)を発表したことから、米中長期債利回りの上昇と共に反発し、NY時間にかけて121.48円へ大幅に上昇した。ECBと人民銀の緩和姿勢により世界金融市場が安定化に向かい、米FOMCが利上げをし易くなるとの見方が台頭したようだ。

ユーロ/ドルは早朝に1.11ドルを割り込んで続落していたが、東京時間午後4時以降発表されたフランス、ドイツそしてユーロ圏PMIが全体として予想比上振れが多かったことを受けて、一時1.11ドル台半ばへ小反発する局面もあった。もっとも、その後は中国金融緩和決定を受けたドル高で再び下落に向かい、1.0997ドルの安値をつけた。ユーロ圏10月総合PMIは54.0と、悪化予想に反して改善した。
ユーロ/円も続落となり、134円丁度近辺から一時133.38円へ下落した。

豪ドル/米ドルは、欧州時間にかけては中国金融緩和決定もあって反発基調となり0.72ドル丁度近辺から0.7297ドルへ上昇した。もっとも、その後NY時間入り後に原油価格が下落すると、引きずられるかたちで0.72ドル丁度近辺へ反落・逆戻りした。引き続き、コモディティおよびコモディティ通貨はECBや中国の金融緩和姿勢から恩恵を受けていない。
豪ドル/円は、米ドル/円の下落が大きかったことから、87円丁度近辺から一時88.10円へ続伸した。その後原油安の影響を受けて87円台前半へ反落する局面もあったが、NY時間引けにかけては87円台後半へ反発している。

きょうの高慢な偏見:北京緩和は通じ続けるか?

ドル/円は、引き続き、欧中の金融緩和姿勢の余韻がどの程度続くかが注目で、ドル/円は8月28日につけた戻り高値である121.75円を抜けて122円方向へ続伸し、8月末以降のレンジ上抜けとなるかが焦点となる。確かに、市場安定化は米利上げ開始の条件の一つだが、同時に日銀が追加緩和を見送る根拠にもなる。先週の本田参与や麻生財務相の発言に加え、30日の日銀展望レポートに関しては再三、成長率とコアインフレ見通しの下方修正だけでなく2%物価目標達成時期の延期(これまでの16年度前半から16年度中などへ)の可能性が報道されている。日銀追加緩和期待は30日まで維持される可能性は高いが、日銀決定会合前に更なる報道で期待が後退するリスクは残っているため、ドル/円は反落リスクを意識しておく必要がある。なお、引き続き筆者は年内に日銀の追加緩和は行われないとの見方を維持している(投資戦略テーマ「ドル/円:追加緩和はまぼろし?」を参照)。

ユーロ/ドルもECB追加緩和期待がどの程度続くかが焦点となる。ECBの政策金利引下げ期待と連動する傾向があるドイツ2年債利回りの動きをみると、22日のECB理事会前は-0.26%程度で推移していたのが発表後に-0.30%程度へ急低下、23日には一時-0.35%へ続落するなど、概ね0.1%ポイントの利下げ(短期金利の下限を規定する中銀預金金利は現在-0.20%)を織り込んでいるようだ。直近2回(昨年6月、9月)の利下げ時は0.1%ポイントの引下げだったことを考慮すると、今回も0.1%ポイントになるとみられ、既に金利の面からは12月3日の次回会合での利下げはほぼ織り込んだ可能性が高い。金利との関係では概ね下落が一服する可能性がある一方、どの程度トレンド追随のユーロ売りがユーロ/ドルを押し下げるかが焦点となる。

豪ドル/米ドルは、原油などコモディティ価格と同様に、ECBの追加緩和示唆や中国の利下げでも殆ど恩恵を受けていない状態が続いている。中国は欧中金融緩和でも資源消費主導の成長には回帰しないため、コモディティ価格への恩恵は薄いと見られていることが背景にあるようだ。このため、豪ドルは五中全会に絡む追加対策には注意を払いつつも、基本的には.戻り売りスタンスがよさそうだ。

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