INTERVIEW
初来日で Oh my god
金融の世界に入り、日本経済を発信する現在の立場に至るまで、どんな転機があったのでしょうか?
初めて日本の地に足を下ろしたのは、1980年代のことでした。もともとは数学を勉強していたのですが、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学に在籍していたとき、ある奨学金制度の縁で、3か月間だけ日本の三井物産でインターンシップをする機会がありました。それまでの私にとって、日本という国は「小津さん、黒澤さんの映画は大好きだけど」という存在でした。
しかし初めて体験する日本のビジネスの現場は、まさに「Oh my god」の連続でした。とにかく日本の社会や会社全体が驚くほど明るくて、毎日が楽しくて仕方がなかったのです。大手総合商社で初めての「外国人インターン」を受け入れるなんて、当時としては本当にアンビリーバブルなことだったと思います。周囲の人たちが温かく迎えてくれた3か月間で、私は完全に日本に魅了されてしまいました。
アメリカに戻った私は、博士論文のテーマに日本を組み込むことにしました。当時の日本は金融政策の自由化の真っただ中。アメリカとも母国ドイツとも違う、日本の金融政策に強い興味を持ったのです。指導教授の勧めで再び来日し、京都大学で研究員として過ごした後、東京大学へ移りました。
ここから私のキャリアは少し不思議な、「変な道」へと入り込んでいきます。京都大学で私を指導してくれたのが、中曽根康弘首相(当時)のブレーンだった高坂正堯さんでした。
当時の日本は国際化が叫ばれていた時代です。スポーツ界では阪神タイガースのランディ・バースさんや、大相撲の小錦さんが大活躍していました。世間が「Oh my god!外国人が日本の国技でこんなに頑張っている!」と沸き立っていた時代です。
そんな中、高坂先生のご縁もあり、私は中曽根派の政治家のもとで秘書のような仕事を経験することになりました。そして政治の世界や金融関連の勉強会に関わる中で、イギリスの外資系証券会社SGウォーバーグ証券から「エコノミストをやらないか」と声をかけられ、金融界へと足を踏み入れました。ちなみに、奨学金ではなく日本で初めてもらった「お給料」の支払元は自民党。税金もちゃんと払ったよ!
松本大との出会い ── 100%本音の理想と好奇心
松本大さんとは、どんな問題意識や価値観で共鳴されたのでしょうか?
日本の多くの金融関係者やビジネスパーソンは、建前では綺麗なことを言っていても、本音のところでは「安く買いたい」「高く売りたい」といった目先のお金の話ばかりになりがちです。でも、Oki(松本大)の「金融市場と社会をどうつなげるか」「金融の力を使って、どうやって社会をもっと良くしていけるか」という大きな理想は、建前ではなく本心そのものです。彼と話を重ねる中で、「どうすればもっと民主的な社会、自由な社会、そして若い人たちにチャンスのある社会を作れるか」というテーマでいつも熱くなりました。もちろん、それは私自身の夢でもあります。
私たちは自然と仲良くなりました。目指しているものが同じだったからです。そして、Okiが持つもう一つの素晴らしい素養が「好奇心」です。これは今の日本の経営者にはあまり見られない。でも、本当は最も大切な要素だと私は感じています。多くの日本の経営者に足りていないこの純粋な好奇心が、彼には溢れていたのです。今でも、Okiは私にとって仕事のこともプライベートのことも本音で語り合える大切な友人です。たまに一緒にお酒を飲みに行く機会があるのですが、これには参っちゃう(笑)。私はお酒が弱いですからね。いつも負けちゃうんです。お酒の強さに関しては、確実にOkiの方がだいぶ上ですね!
JAPAN OPTIMIST という仕事
日本人以上に日本を前向きに語られている印象があります。その視点はどこから来るのでしょうか?
私は長年、エコノミストとして「JAPAN OPTIMIST(日本経済に対する楽観主義者)」の旗を振り続けてきました。デフレや停滞に苦しむ時代から、海外メディアの悲観論に反論し、「日本は大丈夫だ」と言い続けてきたのです。
なぜそこまでポジティブになれるのか。それは、日本人が持つ「明日、よりいいものをつくろうとする精神性」を誰よりも信じているからです。
今の世の中はAIの話題で持ちきりですが、私は「そもそも何のためにAIを使うのか?」という問いを投げかけたい。テクノロジーは、人間や家族がより豊かに、人間らしく生きるために使われるべきです。
例えば海外で人気の日本のたまごサンド。AIで効率的な大量生産はできても、日本の価値はそこではありません。食べる人の笑顔を想像しながら細部までこだわる。その人間中心の温かい利他精神こそ、日本に息づくクラフトマンシップだと思います。このクラフトマンシップと、「明日もっと良いものをつくろう」という精神性が社会の根底にある限り、日本の強みは揺らぎません。AIがどんなに進化しても、日本人が持つ温かさや感性は代替できないのです。これからも私はJAPAN OPTIMISTとして、皆さんと一緒に日本の未来を応援し、発信し続けていきます。Thank you!
PERSONALITY
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大切なものは?
もちろん家族だ!
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好きな食べ物
ドイツのパンと
ソーセージに
勝るものはない。 -
ペットを飼っていますか?
犬を2匹飼っている。
名前はそれぞれ「ワサビ」と「ヌテラ」。
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1年休めるなら?
ヨットで
世界一周の
航海に出る。 -
好きな音楽
かつてジャズドラマーだったこともあり、
ウェザー・リポートのようなジャズ・ロック・
フュージョンが大好きだ。
イェスパー・コール
マネックスグループ グローバル・アンバサダー
1986年に来日後、リサーチ・投資業に関わってきた。2015年7月1日ウィズダムツリー・ジャパンの最高経営責任者(CEO)に就任し、現在はシニアアドバイザーを務める。これまで20年にわたり、米大手投資銀行のJ.P.モルガンやメリルリンチなどにおいてチーフストラジスト、リサーチヘッドを歴任し、常に日本におけるトップクラスのストラテジスト、エコノミストとして認識されてきた。日本政府の各種諮問委員会のメンバーを務めた実績を持ち、経済同友会の数少ない外国人メンバーである。
著書
『日本経済これから黄金期へ』(ダイヤモンド社)/『平成デフレの終焉』(ダイヤモンド社)/『本当は世界がうらやむ最強の日本経済』(プレジデント社)