マネックス証券 チーフ・マーケット・アナリスト 吉野 貴晶

16年連続1位を誇る
クオンツアナリストの結論。
学んで歩む豊かな人生。

Takaaki Yoshino

吉野 貴晶

マネックス証券 チーフ・マーケット・アナリスト
兼 マネックス・ユニバーシティ 投資工学研究学長

INTERVIEW

法学からクオンツへ、働きながらの博士号取得

吉野さんは長年クオンツアナリストとして第一線で活躍されていますが、大学時代は法学だったとお聞きしました。

 実は、子供の頃から数学が特別好きだったわけではないんです。大学でも、法律を専攻しました。転機となったのは、1989年に岡三証券に入社し、リサーチ部署に配属されたことです。当時はロータスや一太郎を使う時代で、高度なクオンツ分析はありませんでしたが、業務の中で「リサーチには数学的・統計的なアプローチが必要だ」という強い問題意識を持つようになりました。

セミナーでマイクを持って話す吉野 貴晶

そこから働きながら大学院へ通われ、修士号や博士号を取得されたのですね。

 投資手法において先行しているアメリカの科学的な手法を、日本の株式市場にも取り入れる重要性を感じたからです。大和総研に在籍していた2004年に経営工学の修士課程を修了し、その後、大和証券へ籍を移して働きながら7年かけ、2011年に数理統計の研究室で博士号を取得しました。

 博士課程だけで7年かかり、論文執筆は想像以上に大変でした。この時期にはすでにアナリストランキングで1位をいただけるようになっていましたが、プロの機関投資家を相手に実証研究を紹介していく上で、きちんと最先端の理論を理解し、バックボーンを示す必要があると考えたのです。現在はそのご縁もあり、データサイエンスや統計学を専門に研究している、国の研究所の統計数理研究所の客員教授も務めています。

16年連続1位を支えた「徹底的な問題意識」

吉野さんのキャリアにおいて、山一証券の自主廃業(1997年)も経験されています。

 山一証券には転職で入社したため在籍は短かったのですが、あの廃業は本当に驚きました。前日まで「潰れることはない」と言われていましたし、近代的なオフィスに引っ越したばかりだったんです。ただ、短い在籍期間の中で、後に日本の金融界に多大な影響を与えた山崎元さんに出会い、面接をしていただきました。山崎さんにはその後も大変お世話になり、さまざまなご指導をいただく中で築くことができたご縁は、私の大きな財産になりました。

その後、「日経ヴェリタス」の人気アナリストランキングで、16年連続1位という偉業を達成されました。長く支持され続けた秘訣は何でしょうか。

 このランキングは、投資家が「誰が一番良い情報を提供してくれたか」を評価するものです。相場が良いときはやりやすさもあったのですが、それにしても毎年、継続性を保って飽きられずというのは難しかったですね。

 私がこの世界に入った1989年から1990年代半ばにかけて日本株市場は、まだ直感や目先の需給で売買されることが多く、コンプライアンスの基準も今とは異なる黎明期でした。そこから市場の国際化が進み、数理統計を用いたモデル運用へとシフトし、現在はAIやデータサイエンスを活用する世界へとさらに変わっています。時代に合わせて自分自身も勉強を続け、「その投資理論が、本当にマーケットで意味があるのか」を徹底的に突き詰め続けたことが、長期的な信頼につながったのだと思います。

身近な「行動ファイナンス」と、個人投資家が勉強することの意味

近年、新NISAを機に個人投資家が急増しています。吉野さんの「サザエさんと株価の関係」といったユニークな研究(行動ファイナンス)は、初心者にも馴染みやすいですね。

 伝統的な経済学は「人間は常に合理的に行動する」という前提ですが、実際の人間は感情や心理に左右されます。その非合理な心理を捉えるのが行動ファイナンスです。

 私は過去に「サザエさんの視聴率が上がると株価が下がる(世相が内向的になると景気後退を示唆する)」という相関関係を分析し、本も出版しました。他にも「クールビズと株式パフォーマンス」の検証や、「ボーナス月の6月は意外と相場が良い」といった時事ネタも発信しています。投資に興味を持つ入り口にしてほしいですね。

2025年9月にマネックス証券にジョインされましたが、個人の投資家と接してみていかがですか。

 マネックス証券にはお客様にアクセスできるたくさんのチャンネルがあり、非常にやりがいを感じています。対面セミナーでお会いする個人の皆さんは、本当に熱心に私の話を聞いてくださいますし、オンラインセミナーのアンケートでも、企業財務やファイナンスの知識を身につけて、それを活かしながら、自分自身で考え、納得しながら投資判断を行う姿勢を身につけたいという声を多くいただきます。

 今の時代は情報が溢れているので、頑張れば個人でもいくらでも勉強できます。だからこそ、ただ「値上がりしそうだから」と飛びつくのではなく、クオンツ分析や財務の基礎を少しでも「好きになって勉強してほしい」と思っています。今すぐには役に立たない知識であっても、いつか投資判断を下す瞬間に、必ず血肉となって活きてくるはずです。

“豊かな”人生のために

最後に、これからの投資ライフに向けたアドバイスやメッセージをお願いします。

 資産形成とあわせて、ぜひ皆さんと一緒に「健康」のことも大切にしていきたいですね。せっかく投資で資産が増えても、美味しいものを楽しんだり、元気に旅行に出かけたりできる体がなければもったいないですから。私自身、今でも散歩やジム、SUP(サップ)などの運動を続けていますが、心身が健康であってこそ投資も前向きに楽しめるものだと思っています。

 皆さんが充実した投資ライフを送っていただけるよう、これからも情報発信を頑張っていきます。

暗いステージで登壇して話す吉野 貴晶

PERSONALITY

  • 休日の過ごし方

    海でSUP

    といってもなかなか遠いので、近場のお台場でSUPをしたり、ジムでダンス系のレッスンに参加したりしています。なるべく体を動かす機会を増やし、健康的に生活したいです。

    海でSUPのボードに立ちパドルを漕ぐ吉野 貴晶
  • 思わず凝ってしまうこと

    なんでも予想すること。

    相場もそうなのですが、スポーツの試合の結果も。予想のトレーニングの積み重ねが大切。

  • 好きな音楽

    ダンス系ミュージック

    普段あまり音楽は聴きませんが、ジムでヒップホップなどのレッスンに参加するためです。

    ダンスのレッスンで跳び上がる吉野 貴晶
  • 好きな言葉

    複利は人類最大の
    発明である。

    数学にも秀でた、理論物理学者の言葉。投資に限らず、日々の積み重ねが将来の大きな差になる点に共感しています。

  • 好きな食べ物

    ケーキやまんじゅう、
    アイスなどの甘いもの。

    食べると「運動しよう」という気持ちになるため、その点もよいと思っています。

    ホットケーキとコーヒー

吉野 貴晶

吉野 貴晶

マネックス証券 チーフ・マーケット・アナリスト
兼 マネックス・ユニバーシティ 投資工学研究学長

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、国内系運用会社で投資工学開発センター長を経て、現職。社会人として歩みを始めて以来、一貫してクオンツ計量分析、データサイエンス、AI(人工知能)を活用した証券市場の分析に携わる。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)にて客員教授、学術フロンティア・センター特別研究員。経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。博士(システムズ・マネジメント)。日本ファイナンス学会理事、日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE)理事。2025年9月より現職。

著書

『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社)/『No.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方』(日経BP社)/『株のジンクス』(日本経済新聞出版)/『株式投資のための定量分析入門』(日本経済新聞出版)/『サザエさんと株価の関係』(新潮社)