CLOSE

ダルトン・インベストメンツ

1999年創業のダルトン・インベストメンツは、2008年に世界金融危機が起きる以前から日本株に積極的に投資してきた老舗アクティビストです。共同創業者のジェイミー・ローゼンワルド氏は50年近い投資経験を持ち、かつて日系証券会社で働いていたこともありました。

ただ、2000年代に日本でアクティビストの活動がメディアで大きく取り上げられた際には、ダルトン・インベストメンツも米投資ファンドのスティール・パートナーズなどと共に積極的に株主提案をしてきたことから、当時は強引で非常な利益第一主義の「ハゲタカファンド」のイメージが印象づけられました。

その後、スティール・パートナーズは日本株から撤退しましたが、ダルトン・インベストメンツは日本株への積極的な投資を続けています。

現在のアクティビストはエンゲージメント(対話)を重視

2000年代のアクティビストは、対象企業の株式を買い集め、株主提案を行い、自らの要求を圧力によって経営陣に飲ませる傾向が見られました。しかし、現在のアクティビストは大量の株式を保有していなくても株主提案を提出しています。

それでもアクティビストが影響力を行使できるようになったのは、「スチュワードシップ・コード」が制定されたからです。スチュワードシップ・コードとは、金融機関を中心とした機関投資家の行動規範を示した指針です。

スチュワードシップ・コードが導入されたことによって、信託銀行や生命保険会社、資産運用会社などの機関投資家にも、投資先企業に対する監視責任が生じました。

その結果、アクティビストの提案においても、企業価値の向上を促す内容には賛成票を投じなくてはならなくなったのです。

これにより、アクティビストはこの指針に沿った提案をすれば、保有株式数が少なくても機関投資家の賛同を得ることによって、経営陣を動かせるようになりました。

そして、最近のアクティビストは投資先の経営陣とエンゲージメント(対話)しながら改革を求めるという洗練されたイメージに変わりつつあります。そして、ダルトン・インベストメンツもバリュー系エンゲージメント・ファンドに変わってきています。

新生銀行に報酬1円で社外取締役の選任を要求

それでは、ダルトン・インベストメンツは日本企業にどのような要求を行ってきたのでしょうか。新生銀行の例を解説します。

ダルトン・インベストメンツは、2019年に新生銀行に対して共同創業者のジェイミー・ローゼンワルド氏を、社外取締役に選任するよう求めました。自社株買いの強化などで株価を大幅に上げることができるとし、報酬は1円で良いとしたのです。

ローゼンワルド氏は米国だけでなく海外の金融機関の取締役としての経験があり、これまでの経験と知識が新生銀行に大きな付加価値をもたらすと考えていました。

さらにダルトン・インベストメンツは、大規模で継続的な自社株買いを行うことや、役員と幹部社員に対して株式を活用した報酬制度を強化することを新生銀行に提案しました。

実はダルトン・インベストメンツは、2017年から新生銀行への提案活動を開始していました。株価が本来の価値を大きく下回っていると考えていたからです。そして、2018年の株式総会では新たな役員報酬制度を提案し、25%の賛同を得ました。

しかし、2019年の社外取締役の株主提案では、賛成率が16.6%に留まり否決されました。この株主提案に投票した機関投資家33社のうち、賛成したのは2社にすぎませんでした。ローゼンワルド氏の経営者としての能力を認めなかった機関投資家が多かったためとされています。

しかし、新生銀行は翌2020年5月に205億円を上限とした自社株買いを発表しています。ローゼンワルド氏の取締役就任には至りませんでしたが、自社株買いの要求は果たせました。

ダルトン・インベストメンツはコロナ禍においても積極的に日本株に投資

2020年の株主総会では、アクティビストからの株主提案数が過去最高を記録しました。2020年1月に24,000円を超えた日経平均株価は、3月に16,000円台まで急落していました。しかし、アクティビストは積極的に買い増しを進めていたのです。

コロナ禍で企業経営の環境は厳しいものの、株価下落は自社株買いを促す好機だとアクティビストの多くが考えたようです。

そして、ダルトン・インベストメンツも同様に考え、2020年3月には30社以上に自社株買いを要請しました。そのうちの3分の1以上が要請に応じたと、ローゼンワルド氏は述べています。

さらに、ローゼンワルド氏は、2020年1月に英国で「ニッポン・アクティブ・バリュー」という新しいファンドも立ち上げています。2億ポンド(約290億円)規模で運用を開始し、日本の中堅企業20社程度に投資しています。それらの企業に対し、配当や自社株買いを促す方針です。

ダルトン・インベストメンツは日本市場をどう見ているのか

ダルトン・インベストメンツは、コロナ禍においても積極的に日本株に投資してきました。2020年9月にローゼンワルド氏はテレビ東京の番組内のインタビューで、「日本株は先進国の中でも最も割安だ」と述べています。

さらに、日本企業の事業見直しや株主還元が進めば、日経平均株価は今後3~5年以上上昇を続け、史上最高値38,915円も更新する可能性があると見ているようです。このようにダルトン・インベストメンツは日本市場に強気の見通しを持っているため、今後も日本株への投資を増やしていくことが予想されます。

ダルトン・インベストメンツがどのような企業へ投資するのか、今後もマーケットの関心を集めるでしょう。

引用元:マネックス証券のオウンドメディア「マネクリ」の「アクティビストタイムズ(2021年3月9日)

執筆者:山下 耕太郎氏

一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・デリバティブディーラーを経て個人投資家に転身。現在は、日経225先物を中心に、現物株 、FX、CFDなど幅広い商品に投資しています。投資歴20年以上の豊富な経験で、初心者にもわかりやすい記事の執筆を心がけています。 保有資格:証券外務員1種

山下 耕太郎氏

お申込みはこちら

証券総合取引口座お持ちの方

ファンド詳細・お申込み

証券総合取引口座お持ちでない方

証券総合取引口座を開設する

口座開設に関するご留意事項

当社の口座開設・維持費は無料です。口座開設にあたっては、「契約締結前交付書面」で内容をよくご確認ください。
当社は、本書の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。本書の内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。