9月20日から21日(米国時間)にかけて米国の金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。本コンテンツでは、9月のFOMCで利上げが実施される可能性や、利上げが行われた際に予想されるマーケットの反応などについてご紹介します。
疑問その1 利上げって、何?
米国の利上げとは、米国の主要政策金利であるフェデラル・ファンド金利(以下FF金利)の目標をFOMC(連邦公開市場委員会)が引き上げることを意味します。FOMCは米国の景気が冷え込んでいる時には金利を引き下げて需要を喚起し、逆に景気が過熱気味になってくると金利を引き上げて景気が過熱することを防ごうとします。
2007年に発生したサブプライムショック、2008年のリーマンショックなど米国で金融危機が発生したことを受け、FOMCは2008年の12月以降ずっとFF金利の目標を下限である0.25%として実質的なゼロ金利政策を維持してきました。
しかし、米国の労働市場が回復するとともに米国の景況感も好転してきたことから、FOMCは2015年12月に0.25%の利上げを実施しました。そして現在はさらなる金利の引き上げが議論されています。
米国のFF金利(1990年-)
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
疑問その2 9月の追加利上げは実施される?
実施される可能性
理由1 FRB高官の追加利上げ実施への強い意欲
「米労働市場の堅調な改善と我々の経済およびインフレ見通しに照らせば、追加利上げの論拠はこの数ヶ月で強まった。」
(出所)2016年8月26日の講演時の発言の一部をマネックス証券が和訳 写真はFRBウェブサイトから引用
「(9月に利上げが実施され、年内に複数回の利上げがあると予想するべきかとの質問に対して)イエレン議長の発言はその可能性があることを示唆している。」
(出所)2016年8月26日のインタビュー時の発言の一部をマネックス証券が和訳 写真はFRBウェブサイトから引用
「完全雇用を確実にするには、段階的な利上げが適切である。」
(出所)2016年9月9日の講演時の発言の一部をマネックス証券が和訳 写真はFRBウェブサイトから引用
今年のFOMCで投票権を持つメンバーの中には、上記で紹介したように早期利上げに意欲を示すメンバーが散見されます。特にイエレンFRB議長、フィッシャーFRB副議長はFOMCでの影響力も高いとみられることから、この2人が早期利上げを示唆する発言を行ったことは非常に重要なポイントと言えるでしょう。
理由2 7-9月期の高い予想GDP成長率
アトランタ連銀発表の7-9月期予想GDP成長率(前期比年率換算)
3.3%
(出所)9月9日時点のアトランタ連銀ウェブサイト
アトランタ連銀が経済指標を元に発表している予想経済成長率「GDPNow」では、7-9月期の経済成長率は前期比年率換算3.3%と高い成長が予想されています。
このように米経済は堅調な成長を遂げているとみられることから、9月のFOMCで利上げが実施されると考えることもできます。
理由3 海外懸念材料の後退
中国経済のハードランディング
BREXIT(英国のEU離脱)の悪影響
原油価格の大幅下落 など

懸念が後退
2015年以降、上記のような主に海外発の悪材料にFOMCは懸念を表明してきました。 もちろんこの先改めて大きな問題となる可能性もありますが、ある程度懸念が後退した今なら利上げに踏み切る可能性もありそうです。
実施されない可能性
理由1 8月分の雇用統計がやや軟調
指標名 | 8月 | 7月 | 8月市場予想 | 総評 |
---|---|---|---|---|
非農業部門雇用者数(前月差) | +15.1万人 | +27.5万人 | +18.0万人 | 市場予想を下回って前月から伸びが鈍化 |
失業率 | 4.9% | 4.9% | 4.8% | 市場予想に達せず前月から横ばい |
平均時給(前年比) | +2.4% | +2.7% | +2.5% | 市場予想を下回って前月から伸びが鈍化 |
U-6失業率 | 9.7% | 9.7% | - | 前月から横ばい |
労働参加率 | 62.8% | 62.8% | - | 前月から横ばい |
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
9月2日に発表された8月分の雇用統計は全体的に前月から若干悪化、または横ばいといったところでやや冴えない内容でした。雇用統計の発表前にフィッシャーFRB副議長は雇用統計が重要な判断材料になるとの認識を示したこともあり、利上げ見送りに傾く可能性もありそうです。
理由2 米経済に先行き不安?
ISM製造業指数と非製造業指数の推移
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
企業に景況感を調査するISM景況感指数は、米経済の先行きを示す非常に重要な経済指標として知られています。製造業と非製造業がそれぞれ分けて発表されますが、8月分はどちらも前月から大幅に悪化し、特に製造業指数は景気判断の分かれ目となる50を下回りました。
米経済の先行き悪化を示唆している可能性もあり、FOMCの慎重な判断につながる可能性があります。
理由3 物価上昇率は加速の兆しを見せず
PCEコアデフレーターの前年同月比上昇率
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
FRBが物価上昇率の指標として重視している「PCEコアデフレーター」は直近で前年同月比1.6%の上昇とFRBの目標としている2%を下回っています。トレンドを見ても上昇率が加速しているような状況にはないことから、焦って利上げをする必要はないと主張するFRB高官もいます。
疑問その3 利上げされた場合に予想されるマーケットの反応は?
利上げが実施された場合
米国株
利上げ

米景気の鈍化要因

一般的に株価の下落要因
米ドル/円
利上げ

資金は保有魅力の高い米ドルに向かいやすい

一般的にドル高(円安)要因
日本株
米国株下落

センチメント悪化による下落要因

下落圧力に
円安ドル高

企業業績の改善要因

上昇圧力に
上記のように一般的に米国の利上げは米国株の下落要因、米ドル/円の上昇(ドル高)要因になると考えられます。そうなると日本株にとっては強弱材料がともにあることになり、どのように動くか非常に判断は難しそうです。それでは過去の追加利上げ局面では米国株や米ドル/円や日本株はどのような値動きとなったのでしょうか?
疑問その4 過去の追加利上げ局面の株価や為替の反応は?
追加利上げ事例1 1994年
1994年の追加利上げ局面での米国株・日本株(利上げ前日=100)
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
1994年の追加利上げ局面での米ドル/円
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
- 米国株と日本株ともに利上げ後に株価は下落もその後徐々に値を戻した。
- 追加利上げ後に米ドル/円はじわじわと円高が進行した。
追加利上げ事例2 1999年
1999年の追加利上げ局面での米国株・日本株(利上げ前日=100)
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
1999年の追加利上げ局面での米ドル/円
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
- 米国株と日本株ともに追加利上げ後に株価は下落もその後徐々に値を戻しまもなく利上げ前よりも株価は上昇した。
- 追加利上げ後に米ドル/円はじわじわと円高が進行したがその後利上げ前の水準まで値を戻した。
追加利上げ事例3 2004年
2004年の追加利上げ局面での米国株・日本株(利上げ前日=100)
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
2004年の追加利上げ局面での米ドル/円
(出所)トムソン・ロイターデータよりマネックス証券作成
- 米国株と日本株ともに追加利上げ後まもなくから株価が上昇しその後も概ね堅調に推移した。
- 追加利上げ後に米ドル/円はじわじわと円高が進行した。
過去3度の追加利上げ局面のマーケット動向をチェックすると、米国株・日本株とも利上げ後の値動きはまちまちでした。一方で、米ドル/円はいずれの際も一時大きく円高に振れています。一般的に利上げはドル高要因になると考えられますが、既にマーケットは利上げによるドル上昇を織り込んでいたのかもしれません。
FOMCっていったいなに?
連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee)
米国の金融政策を決定する最高意思決定機関。年に8回、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会・Federal Reserve Board)理事と12の連邦準備銀行(地区連銀)の総裁が出席し、米国の金融政策について議論、意思決定を行う。
米国の金融政策決定の仕組み
12の地区連銀とは・・・
(1)ニューヨーク(2)セントルイス(3)カンザスシティ(4)クリーブランド(5)ボストン(6)シカゴ(7)フィラデルフィア(8)ダラス(9)ミネアポリス(10)リッチモンド(11)アトランタ(12)サンフランシスコの地区ごとに設けられた連邦準備銀行。ニューヨーク連銀を除き、毎年FOMCでの投票権を持つ銀行は交代する。2016年にFOMCで投票権を持つのは、(1)~(5)の地区連銀総裁。
米国株取引までの3ステップ
STEP1
外国株取引口座を開設
外国株取引口座をお持ちでないお客様は、まず、外国株取引口座をお申込みください。開設手続きは証券総合取引口座開設後、すべてウェブサイト上で完了いたします。開設後は、外国株取引口座情報へのアクセスや米国株取引画面へのログインができます。
ログイン後、該当ページに遷移します。
※既にマネックス証券に外国株取引口座をお持ちのお客様は別途お手続きの必要はございません。
STEP2
日本円を米ドルに交換
証券総合取引口座に日本円をご入金いただいた後、以下の手順で米国株取引用の米ドル資金を用意します。
(1) 日本円のまま、証券総合取引口座から外国株取引口座へ振替します。
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(2) 外国株取引口座内にて、日本円 → 米ドルの為替振替(外国為替取引)を行います。