
あの巨大ネットショッピングサイトのアマゾンが、米国で高級スーパーを展開するホール・フーズ・マーケットを買収すると発表しました。発表当日(2017年6月16日)のアマゾンの株価は2%超、ホールフーズ・マーケットは約30%上昇するなか、ウォルマートやターゲットといった小売企業の株価は急落しました。今後のアマゾンの戦略は?小売企業への影響は?米国株オンラインセミナーやウィークリーレポートでおなじみの広瀬隆雄氏が解説します。
このレポートのまとめ
- アマゾン(AMZN)がホールフーズ(WFM)買収を発表した
- ホールフーズは自然志向派のヒッピーを相手にした商売としてスタートした
- オーガニック農家は、ホールフーズが存在したからこそ経営が成り立った
- ホールフーズの顧客は、次第に裕福層へと移って行った
- ホールフーズの顧客層はアマゾンにとって魅力的
- 従って、うかつに顧客離反をまねくようなことはしない
アマゾンがホールフーズ買収を発表した
6月16日にアマゾンがホールフーズを一株当たり42ドル、総額137億ドルで買収すると発表しました。
ホールフーズのルーツ
ホールフーズは1972年にジョン・マッケイとレニー・ハーディー・ローソンというカップルによってテキサス州オースチンで創業されました。
当時ジョン・マッケイはテキサス大学オースチン校で哲学を専攻する学生でした。オースチンは大学の町なので、リベラルな雰囲気があり、ヒッピーのコミュニティーが形成されていました。
そのような一握りの自然志向派の顧客に対してオーガニックに栽培された野菜を販売したのが同社の始まりです。
最初の店舗は普通の一軒屋で、その一階をオーガニック食品の売り場、二階を自然食レストランにし、創業者の二人は三階に寝泊まりしました。
当初の社名は「セイファー・ウェー(SaferWay)」で、これは大手スーパー「セーフウェー(Safeway)」のパロディーでした。そう命名したひとつの動機は「もしセーフウェーから訴訟されたら、それがニュースになり、宣伝になるのではないか?」という魂胆があったそうです。
このエピソードからもわかるとおり、当初は向こう見ずで、カウンター・カルチャーの心意気を持った、極めて零細な商店だったのです。またオーガニックな野菜などだけを扱っていたので、食肉やワインなどの品目は扱っていませんでした。
ライバルとの合併
その頃、オースチンにはクラークスヴィル・ナチュラル・グローサリーというライバル商店があり、この2社は友好的な競争関係を築いていました。
そこで店舗拡張の際、「この際、合併して、一緒にビジネスを大きくしてはどうか?」という提案がなされ、合併後の新会社は「ホールフーズ」という名前が採用されたのです。また、パートナーとして引き入れたクラークスヴィル・ナチュラル・グローサリー側の経営者の進言を受け容れ、食肉やワインなど、普通のスーパーマーケットが扱っている一通りの商品を全部商うことにしました。
第1号店が水没
1981年にオープンしたホールフーズ第1号店は開店直後から来店客が殺到し、初年度から黒字を出すかに見られたのですが、その年、オースチンは100年に一度の集中豪雨に見舞われ、ホールフーズ第1号店はオープンして半年後に完全に水没してしまいます。
そのとき、従業員や出資者だけでなくホールフーズの復活を望む地元の顧客がボランティアでホールフーズを復旧させ、洪水から28日後に店を再開することが出来ました。
このように当初のホールフーズは裕福層を相手にした高級スーパーマーケットと言うより、コミュニティーに根差し、来店客も参加意識を持つ自然食品の商店だったのです。
農家との関係
当時、オーガニック野菜はあまり栽培されておらず、またオーガニックな農業を行ってもそれを売る場所が無かったので、農家はそういう手法に余り興味を示しませんでした。
しかしホールフーズは根気よく農家を説得し、添加物や農薬などを使わない、安心できる野菜の供給者を増やして行きました。つまりオーガニックな農業を行う農家の数はホールフーズの店舗とともに増加して行ったと言えるのです。
ヒッピーから裕福層へターゲット顧客が変化
その後、ホールフーズは株式を上場し、業容を拡大してゆくわけですが、オーガニックに栽培された野菜は、手間がかかる分、値段も高いです。このことから「ホールフーズは裕福層じゃないと行けない」という評判が定着するようになりました。こうしてヒッピーたちのライフスタイルを代弁するブランドから、グルメの裕福層のブランドへとホールフーズはイメージの脱皮を図ったのです。
こうした企業風土の変化は、創業当初のコアな顧客から反感を買いました。
また自然食愛好家たちが集まって始めた商店ということで、当初は労働組合を組織することすら考えなかったわけですが、業容が拡大するにつれ、「ホールフーズはアンチ労働組合だ」という評判が立つようになりました。
このような経緯により、ホールフーズには熱烈なファンが居る一方で、ホールフーズ・ヘイターと呼ばれる、同社を嫌っている消費者も多いです。
以上がホールフーズのあらましですが、次にアマゾンとの組み合わせについて考えてみたいと思います。
アマゾンはホールフーズをどう活かす?
まずホールフーズは上に述べたような経緯から大変強固なブランド・アイデンティティーがあります。そして裕福層の消費者のハートをしっかり掴んでいます。ホールフーズの顧客層はスーパーマーケットの顧客層の中で最も魅力あるセグメントであり、とても利幅の大きいビジネスです。
従ってアマゾンは、ただボリュームを増やすという目的で、この魅力あるビジネス・モデルを壊してしまうとは思えません。
逆に言えば、アマゾン・フレッシュに代表される、これまでのアマゾンのグローサリーに対する取り組みは、オーガニック農家をホールフーズが牛耳っていたため、そもそも成功する見込みはなかったとすら言えるのです。
アマゾンはホールフーズを買収することにより、その農家とのリレーションシップを手に入れました。
また消費者サイドでは、都市部に住む、高学歴で、裕福な消費者を手に入れました。
これらはいずれも貴重な財産なので、アマゾンはホールフーズの取り込みに際しては、慎重に動くと思います。
ウォルマートその他への影響
アマゾンがホールフーズを買収すると発表したとき、ウォルマート(WMT)、クローガー(KR)、コストコ(COST)などのライバル企業の株が急落しました。
しかしスーパーマーケットのビジネスは薄利多売で、その全てが宅配に適しているわけではありません。
最も魅力的な企業であるホールフーズを買収した以上、アマゾンがやらなければいけないことはホールフーズのブランド・イメージを壊さずに業容を拡張することであり、むやみにウォルマートと全面対決するというような作戦は愚策でしょう。
その意味では、これらのライバル企業は当分の間、アマゾン=ホールフーズからの攻勢を心配しなくて良いと思います。先週のこれらの銘柄の急落は、過剰反応だと思います。
ただ長期的にはアマゾンはホールフーズという優良な実店舗を踏み台にして、いろいろな利便性を消費者に訴求してくることが予想されますので、それは脅威になるでしょう。
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