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上場企業による情報開示に関する個人投資家へのアンケートの結果について

2017年7月
賛同企業一同

私たちは、個人投資家の目線で証券市場の活性化や制度の改革を提言していくことを目的に、証券市場に関する様々な課題について検討しています。
今般、上場会社による情報の開示について検討するなかで、多くの上場会社が、取引時間終了後の15時に合わせて情報の公表を行っている状況に疑問を持ちました。そこで、個人投資家の皆様が、本件に関してどのように感じているか、何が個人投資家の皆様にとってベストなのか、声を聴かせていただきたく、アンケートを実施しました。
ご回答くださった皆様には、ご協力いただき誠にありがとうございました。

アンケート実施概要

調査期間:2017年3月30日~4月24日

調査対象:賛同企業の顧客

調査方法:インターネットアンケート、紙媒体、電話・対面によるヒアリング

調査地域:全国

回答数:13,339

賛同企業(実施主体)
今村証券株式会社、永和証券株式会社、株式会社SBI証券、香川証券株式会社、カブドットコム証券株式会社、立花証券株式会社、長野證券株式会社、光証券株式会社、廣田証券株式会社、マネックス証券株式会社、明和證券株式会社、山和証券株式会社、豊証券株式会社、楽天証券株式会社(五十音順)

調査結果の概要

上場会社が15時以降に情報の公表を行っている状況に対して、個人投資家の57.7%が「現状に特に問題を感じていない」と回答。42.3%が「情報の発生から公表までの時間をルールで定めたほうがよい」と回答。

「上場会社に関する重要な情報について、金融商品取引所の規則で「直ちに」その内容を開示することを求めているものの、現状、日本の上場会社の70%超が15時以降に情報の公表しており、上場会社の慣例により、投資家への速やかな情報提供がなされていないのではないかと考えられます。このような状況に対し、より近い考えはどちらですか?」という質問に対し、全回答者の57.7%が「特に問題を感じていないため、情報の公表のタイミングは現状どおり、発行体に委ねればよい。」と回答しています。
その一方で、全回答者の42.3%が「例えば取締役会の決議から2時間以内など、情報の発生から公表までの時間をルールとして定めたほうがよい。」と回答しています。

インターネット取引を主に利用する個人投資家の約半数が、「情報の発生から公表までの時間をルールで定めたほうがよい」と回答。

前述の質問について、インターネットを通じて取引している個人投資家の48.8%と、約半数が「例えば取締役会の決議から2時間以内など、情報の発生から公表までの時間をルールとして定めたほうがよい。」と回答しています。

取引の頻度が違う投資家のいずれにおいても、「情報の発生から公表までの時間をルールで定めたほうがよい」という回答は40%以上。

前述の質問について、取引の頻度が違う投資家のいずれにおいても、「例えば取締役会の決議から2時間以内など、情報の発生から公表までの時間をルールとして定めたほうがよい。」との回答は41%~46%と、取引の頻度によって考えに大きな違いはありませんでした。

望ましい公表のタイミングについて、57.6%が「引け後」と回答。「取引開始前」・「取引時間内」と回答した個人投資家も約35%。

「上場会社から情報が公開されるタイミングについて質問します。上場会社が情報を公表するタイミングとして、新たな情報に基づいた価格を国内の市場において発見するという観点から取引時間内に情報を公表したほうがよいという意見、大勢の投資家が情報を知るためには引け後に情報を公表したほうがよいという意見があります。どのタイミングでの公表が望ましいと考えますか?」という質問において、最も多かった回答は「引け後」で、全回答者の57.6%が回答しています。一方、「取引開始前」・「取引時間内」・「昼休み」についても、全回答者の約32%~36%が望ましいタイミングと回答しています。

望ましい公表のタイミングについて、「引け後」のみを回答した人は全回答者の35.5%。

前述の質問について、「引け後」のみを望ましい公表タイミングと回答している人は全回答者の35.5%でした。したがって、6割強の個人投資家は、「引け後」以外のタイミングでの公表も望ましいと回答しています。

調査の結果を受けて

証券市場には、個人のお客様から機関投資家まで様々なプレイヤーがいますが、私たちは、個人のお客様を主な対象とする証券会社として、個人投資家の目線で、証券市場に関する様々な課題について検討しています。

証券市場での株式の取引にあたり、市場の公正性は大前提です。プレイヤーが、公正な条件の元で取引するという前提がなければ、安心して資産を市場に託すことができません。市場の公正性を確保するにあたっての重要な条件の一つが、上場企業からの適切な情報発信です。
現在、投資家に投資判断材料を提供する制度には、金融商品取引法に基づく法定開示制度と、金融商品取引所における適時開示制度があります。
取引所における適時開示制度では、上場企業は、金融商品取引所の規則により、経営に関する重要な情報について「直ちに」その内容を開示することを求められています。
金融商品取引所の規則で「直ちに」その内容を開示することを求められているものの、私共の調査によると、上場企業の約7割が15時以降に情報の公表を行っているという結果が出ています。その理由としては、情報が新聞の朝刊の記事に取り上げられやすいという慣習や、株価が大きく変動することを避けるため、取引時間内での開示を避けていることが考えられます。
このような状況では、上場企業で重要な事項が決定されてから、情報として公表される15時以降までに、かなりの時間差が生じている可能性があります。公表まで時間が経過するほど、情報が漏えいするリスクは高まり、市場の公正性が損なわれる可能性が高まります。
したがって、このような状況は、個人投資家にとって望ましい市場とは言えないのではないか、という問題意識を持ちました。

その一方で、個人投資家の皆様が、上場企業による情報発信についてどのように感じているのか、知りたいという思いから、今回、アンケートを実施しました。
今回のアンケート結果では、取引頻度や主に取引しているチャネルにかかわらず、4割強の個人投資家が「情報の発生から公表までの時間をルールとして定めたほうがよい。」と回答しています。特に、インターネットで主に取引している個人投資家では、約半数が、現状に対して何らかの不満を持っていることが分かりました。企業から発信される情報を投資判断の材料としている方は、現状の制度に何らかの不満をもっているということではないでしょうか。
また、企業が情報を公表するタイミングとしては、「引け後」が望ましいという回答が最も多かったものの、「引け後」のみを望ましいと回答している方は、全回答者のうち35.5%でした。したがって、「引け後」以外に公表があっても問題ないと考えている方が多数であると考えられます。

今回のアンケートの結果を踏まえて、私どもは、上場企業による情報の公表について、引き続き検討するとともに、今後とも個人投資家の目線で、あるべき証券市場を目指して検討を行っていきたいと思います。

賛同企業一同

調査結果

1.全回答について

(1)主に利用する取引チャネルについて

インターネット 6,364
電話または対面 6,975

主に利用する取引チャネルについて

(2)株式の取引を行う頻度について

一日のうちに複数回取引 809
週に一度程度取引 2,810
その他 9,720

株式の取引を行う頻度について

(3)上場会社が15時以降に情報の公表を行っている状況に対する考えについて

特に問題を感じていないため、情報の公表のタイミングは現状どおり、発行体に委ねればよい。 7,695
例えば取締役会の決議から2時間以内など、情報の発生から公表までの時間をルールとして定めたほうがよい。 5,644

上場会社が15時以降に情報の公表を行っている状況に対する考えについて

(4)望ましい上場会社による情報の公表のタイミングについて

取引開始前 4,749 35.6%
取引時間内 4,643 34.8%
昼休み 4,231 31.7%
引け後 7,677 57.6%

望ましい上場会社による情報の公表のタイミングについて

2.取引頻度・取引チャネルによる回答

(1)上場会社が15時以降に情報の公表を行っている状況に対する考えについて

①取引チャネルによる回答状況
インターネット 電話または対面
例えば取締役会の決議から2時間以内など、情報の発生から公表までの時間をルールとして定めたほうがよい。 48.8% 36.4%
特に問題を感じていないため、情報の公表のタイミングは現状どおり、発行体に委ねればよい。 51.2% 63.6%

取引チャネルによる回答状況

②取引頻度による回答状況
一日のうちに複数回取引 週に一度程度取引 その他
例えば取締役会の決議から2時間以内など、情報の発生から公表までの時間をルールとして定めたほうがよい。 45.6% 43.1% 41.8%
特に問題を感じていないため、情報の公表のタイミングは現状どおり、発行体に委ねればよい。 54.4% 56.9% 58.2%

取引頻度による回答状況

(2)望ましい上場会社による情報の公表のタイミングについて

①取引チャネルによる回答状況
インターネット 電話または対面
取引開始前 40.6% 31.1%
取引時間内 32.4% 37.0%
昼休み 29.5% 33.7%
引け後 55.2% 59.7%

取引チャネルによる回答状況

②取引頻度による回答状況
一日のうちに複数回取引 週に一度程度取引 その他
取引開始前 46.4% 35.7% 34.7%
取引時間内 32.1% 35.6% 34.8%
昼休み 26.6% 31.5% 32.2%
引け後 42.9% 51.1% 60.6%

取引頻度による回答状況

③複数回答の状況
当該回答のみ 複数回答 全選択肢を回答
取引開始前 1,600 1,485 1,664
取引時間内 1,852 1,127 1,664
昼休み 1,005 1,562 1,664
引け後 4,730 1,283 1,664
当該選択肢のみ回答した人の全回答者に占める割合
取引開始前 12.0%
取引時間内 13.9%
昼休み 7.5%
引け後 35.5%

複数回答の状況