2017年初頭のオートレールのサービス開始と共に発刊が始まった「オートレール・ラボ」ですが、今回は初登場!かつてバンク・オブ・アメリカでディーラーとして活躍され、現在もプロ・トレーダーを続ける阪谷直人氏に、FX取引の極意から、オートレールを利用したトレード術まで、大いに語っていただきました。今回の「上巻」ではまず、FX取引を途中でやめざるを得なくなるような失敗をしないためには、何が必要なのか、この道30年のご経験から、その極意をご紹介いただきました。
力作であり少々長めですが、10分程で読了できます。阪谷氏のこの道30年による珠玉の金言です。ぜひご一読いただき、ご自身のトレードの参考としてみてはいかがでしょうか。
はじめに
目先のトレードにとらわれがちなFXで、「とにかく生き残る」ためのコツは何でしょうか?
FXの世界へ入ってくる一般投資家の方は、過去の統計によれば、FXを始めて1年にもなると多くの方がFX取引をお止めになっていると聞きます(筆者調べ)。つまり退場なさっている訳です。数年前に金融機関を離れてこちらの世界に来た時に、この事実を知り、驚きました。
しかし調べていくと、「なるほど」とその理由がよくわかりました。
FXの世界へ入ってくる一般投資家の多くの方の動機が、「手っ取り早くお金儲けをしたいが、FXなら儲かるだろう」という安易な考えとなっている場合が多いのです。でも、このFXのマーケットはそんなに簡単な世界ではないという事を、まず最初にご認識ください。
では、どうすればいいの?
相場を長く続けるには、まずは「心構え」と「訓練」が必要です。
そして「勉強」をしたり、「知識」も積まなければなりません。
私の場合は、大学を卒業後、新入行員として入行したアメリカ銀行(バンク・オブ・アメリカ)が幸いにも、お金と時間をかけて、一人前の職業トレーダーになるべく訓練をしてくれました。
しかし、学生やサラリーマンや主婦の方は見よう見まねでFX取引を始めておられるケースが多い様にお見受けします。つまり副業としてFX取引をされている方々です。そんな方々の副業でのFX取引を批判する事は容易いのですが、私の様に専門的な職業トレーダー育成訓練を受けていないのです、これは知らなくて当然の事ではないでしょうか。
ですので今回、自分の30年の時間、経験、知識からなる極意を、一挙に一般投資家の方々にお伝えしようと本稿をまとめてみました。
私は30年間携わっているこのマーケットという世界が大好きです。
何かのご縁でFX取引を始めた多くの方々が、長くても1年たつと退場、そしてFXの悪口を言うようになってしまう。そんな現実を悲しく思っています。自分の大好きなFX、マーケットの世界ではみんなに幸せでいて欲しいのです。
またFXは決して、一部の方が仰るような「ゼロサムゲーム」ではありません。
守るべきルールを守っていれば、一般投資家の方々がみんなで一緒に目的を達成できる世界なのです。基本の3つの守るべきルールさえ守れば、しっかり生き残る事ができて、利益や儲けは後からついてくるのです。
この後、この3つの守るべきルールを1つ1つ、「一獲千金を狙う」為の話としてではなく、「とにかく生き残る」為のお話として進めて行きたいと思います。
ルールのお話、その前に
この3つの守るべきルールのお話をする前に、お話をしたい事、わかっておいていただきたい事を何点か申し上げます。
その1は、メディアの煽りに騙されないこと。
よく聞きますよね、「FXで簡単に1億円稼げる!」といった類いの話ですが、そんな話って多すぎるし、美味しすぎますよね。でも、現実にはその様な美味しい話はほぼ無いと認識してください。
FXやマーケットは、そんな簡単な世界では決してありません。もしあったとしても、たまたま宝くじに当選したような話なのです。あくまでも地道な取引の積上げが前提なのだと私は思います。ホームランはその地道な取引を行う毎日の中で年に何回か見えてくる、遭遇する受動的なチャンスなのです。過剰に期待し、常にホームランを打つつもりでFX取引に取り組むのはお勧めしません。
その2は、長期的な相場観を持とう。
長期的な相場観を持つ事で、トレンドが把握できます。
トレンドが把握でき、そのトレンドに乗ったFX取引をすると、儲けを少しでも継続的に出してゆけます。その分、生き残る事ができるようになります。
例えば今、米ドル/円であればどうするか?
私なら買います。何故かと言えば、トレンドが上だと思っているからです。(2017年8月4日現在)このトレンドの認識が正しければ、エントリーした足元の勢いで売りが強くても、やがて元に戻ってきて、しかも更に上昇して行くはずです。ところがトレンドに逆らってしまうと、相場は戻って来てはくれません。
この「トレンドを知る」という事が一番大切ですが、一方で身に着けるのが一番難しいのです。ただし、ひとたびその見極め方をマスターする事が出来れば、ひとかどの為替トレーダーへの仲間入りです。
その為には、ファンダメンタルズ分析が欠かせません。ファンダメンタルズへの見識を幅広く深めてゆく必要があります。そして、そのシナリオなり、ストーリーをチャートに落とし込んだ時、今度はテクニカルの出番です。
その3は、自分のストーリーやシナリオを立てること。
私は、自分なりの相場観に基づいて、自分なりのストーリーやシナリオを立てて、そのシナリオの具現化する確率が80%以上の物にならない限り、またそう確信できるまで、ポジションを取りません。と申しますか、そこまで見えない内は怖くてトレードが出来ません。
その為には、「ファンダメンタルズ」と「テクニカル」の両方が必要で、この2つはクルマの両輪なのです。
その4は、自分が絶対に正しいと思い込まないこと。
そこまでして確信を得てからとったポジションでも、常にマーケットに耳を傾け、自分の相場観が間違っているか否かの自問自答を行います。そして相場観がずれているとなった際には、一旦すべてのポジションを決済して、ゼロから考え直します。何故、相場観がずれたのか、その原因が判明するまではペナルティボックスに入り相場を見つめ直します。
大切なのは、ファンダメンタルズとテクニカルを常に意識して相場を考える事、そしてファンダメンタルズとテクニカルは日々刻々と変化をするので、常にマーケットの変化、声に耳を傾け、当初の自分の判断に拘らない事です。
自分が絶対に正しいとは思いこまない事、常に自分が間違っているのではないかと物事を疑う姿勢が必要です。人間のメンタルとは非常に弱いものなので、自分が売りだと思ったら、自分の判断にそのバイアスが色濃くかかってしまい、「下がるはずだ」「下がるに違いない」という自分にとって都合の良い考え方をしてしまいます。
しかし「はずだ」などという判断基準は合理的ではない訳で、下がると思うに至ったからには、その理由があってしかるべきなのです。「ただそう思ったから」とか、「ヤマ勘」で、というのは忌避すべきなのです。
そしてその判断があっているのかを常にチェックする、とても臆病な、謙虚な姿勢でいていただきたいと思います。
自分を守る鉄板ルール1 資金管理
その1は「5%ルール」という資金管理の考え方です。
これは1回の取引における損失許容額を、証拠金の5%までに設定しましょう、という資金管理の考え方です。
この様に、あらかじめ負けても良いという金額、資金の割合を制限する事で、思わぬ大損害を回避し、生き残って行けるのです。
「5%」というのは全体100%の内の、20分の1ですよね。
つまり、20回連続して負けない限り、証拠金はゼロにはならないという意味です。退場というのが、証拠金がゼロになる事であるならば、証拠金がゼロにならなければ、退場は起きない訳です。
ポイントは、市場のボラティリティの変化に応じて、ストップロスの幅と、取引金額の大きさを調整してゆく事です。このあたりの事は、また次回の機会に詳しくお話ししましょう。
基本式は
「証拠金の5% = ストップロスの幅 × 取引金額」
です。
例えば市場のボラティリティが高いときは、ストップロスの幅を大きめに取りたいので、取引金額を、通常より少ない金額で取引する、というように運用してゆきます。私の場合には、例えば1週間ごとにその週に行った取引を振り返り、ボラティリティに合わせてポジションの大きさや、ストップロスの幅を調節するようにしています。
自分を守る鉄板ルール2 ストップロス

それは「ストップロスの勧め」です。
これは、エントリーしたら必ずストップロス(損切り)を設定しましょう、という行動パターンの徹底です。これをする事で、上記の「5%ルール」の順守が担保される訳です。
理想的には、エントリーの際に、ストップロスと、テイクプロフィット(利益確定)の設定を、素早く行えると良いのですが、手順も多く中々そうも行かないのが現実で、私の場合には、テイクプロフィットの設定を後回しにして、まずは何よりも先にストップロスの設定だけは行います。
自分を守る鉄板ルール3 トレーリングストップ

最後は利大損少を目指す、「トレーリングストップの勧め」です。
エントリーをしたら、利益確定は、トレーリングストップで行います。
上記の項目で、エントリーをしたら必ずストップロスを設定しましょう、と申し上げました。
そうです、そのとおりで、このトレーリングストップというのは、目の前の相場が自分のポジションにとって、有利に動いたときのみ、その動きに合わせて、その動きの方向に、その動きの幅だけ動かして、再設定をして行く方法です。
トレンドに沿って含み益のプラスの方向へストップロスのポイントを移動させてゆくので、「利益の最大化」が図れます。最終的には、設定したストップロスが引っかかったところで「自動的に」決済されます。
先ほども申し上げましたが、人間というものはメンタル的に非常に弱い生き物です。なので、折角ストップロスを設定していても、相場が自分に不利に動き出すと、ついストップロスの設定をストップロスがかかりにくい方向へ再設定してしまう、こんな哀しき人間の行動を相場の世界ではよく聞きます。
これでは、何のためのストップロスなのか分かりません、自分にとって良い事をしているつもりが、損の金額を膨らましてしまい、結局は「5%ルール」も破ってゆく事になり、自分をどんどん退場へ追い詰めているのです。
この人間の弱さを担保するためには、ストップロスの瞬間に人間の恣意・判断の介入できない仕組みが必要なのです。その意味で、利益確定の際にもストップがかかる形で、「自動的に」ポジションが決済されるという方法が尚よしであると思います。
そして「トレール(追跡)」がいいのです。
トレールというのは「追跡」という意味で、相場の動きを追跡して、決済注文を変動させるものです。
それも、利益が増加する場合にのみ適用され、損失が拡大する場合には適用されません。
トレンドを追って、相場が伸びるだけ決済注文を先延ばしにできるので、「利益の最大化」が図れるのです。
トレーリングストップとは、トレンドが伸びる方向に、決済注文もスライドさせて行くので、強いトレンドが出れば大きく利益を伸ばす事ができるのです。
売り新規注文時のトレーリングストップ(トレールストップ)模式図
そして...「オートレール」の勧め
ここまでで、私なりの「とにかく生き残る」ための、3つの鉄板ルールを紹介いたしました。
ルール1.自分を守る、「5%ルール」(資金管理)
ルール2.自分を守る、「ストップロスの勧め」
ルール3.利大損小、「トレーリングストップの勧め」
そして今回ご紹介したいのがマネックス証券の提供している「オートレール」です。
今までは自分でトレーリングストップの再設定を操作していたのですが、それをこの「オートレール」は自動でトレールする機能が備わっているので、最初の設定のみ操作が必要ですが、後はトレール注文が執行されるまで手を下さずに待つという取り組みになります。
今までの私の経験で、3つの鉄板ルールの施行に際して、一番苦労してきたのが
ルール3.利大損小、「トレーリングストップの勧め」
でした。しかし、これをクリアしなければ「利大損小」を手にする事ができないのです。それを市場の動きに応じて、速やかに行う事の難しさからの解放は、とても大きな武器になります。
このツールを用いれば、一般投資家の方は、3つの鉄板ルールの1.と2.に集中する事ができるので、精神的にも体力的にも大きく余裕を得る事が出来ます。自分の経験からすると、このルール3.が一番負担であったので、一般投資家の方には、また自分にとっても非常に大きな味方である事に間違いはありません。
「では、どうすればいいの?」の項で申し上げた通り、トレードにはまず「心構え」と「訓練」が必要です。そして「勉強」をし、「知識」も積まなければなりません。という点に関して、多くの一般投資家の方々には、その余裕なり時間がありません。
また、「ルールのお話、その前に」の項で申し上げた、「ファンダメンタルズ」と「テクニカル」の両方が必要という点に関しても、多くの一般投資家の方々にとって、一朝一夕でマスターできるものではありません。
一方で、元々「損をしたい」と思ってFX取引を行う投資家はどこにもいません。難しい「ファンダメンタルズ」と「テクニカル」をマスターせずとも、「FX取引から退場しない」で続けるためには、この「オートレール」が最適・最善の手法と思います。
まずは、この「オートレール」で、コツコツと利益を積んでゆくパターンを習得していただき、損をしないで、「退場しないFX取引」を目指します。
そして、そこで生まれる時間的な余裕を利用して、ご自身の個々の事情・状況に合わせる格好で「ファンダメンタルズ」と「テクニカル」への造詣を深めていただく。
通常であれば、「ファンダメンタルズ」と「テクニカル」の習得がありきで、FX取引はその後であるべきなのですが、「オートレール」を活用する事で、FX取引を先行させられるという素晴らしい利点があります。
次回は、自分の用いているインジケータとの併用で、オートレールの起動から、エグジットまでのデータを分析してみたいと思います。
筆者ご紹介
阪谷 直人(さかたに なおと)氏
1983年アメリカ銀行入行、ディーラーとして資金、スポット、フォワード、先物取引、通貨オプションの各商品を担当後、1990年デリバティブデスクの立ち上げに参画。1999年よりバンクオブアメリカ証券会社、2008年よりバンクオブアメリカメリルリンチ、ソシエテジェネラルにてデリバティブと為替の営業を担当。
2011年退職後、個人としてトレーディングを開始。現在メルマガにて相場分析、市場関連情報を発信中。
※2018年2月現在、阪谷氏は個人によるFXトレーディング、メルマガ等の情報発信を休止しております。
初心者にも、忙しい方にもおすすめ!オートレール(複合注文)とは!?
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