知る人ぞ知る米国のETF運用会社、ウィズダムツリー(ティッカーシンボル:WETF)。2015年7月には日本法人を設立し、日本でのETFの販売も強化しています。そのウィズダムツリーで調査部長を務めるジェレミー・シュワルツ氏にウィズダムツリーETFの方針や運用の裏側を伺いました。
ウィズダムツリーETFが注目される理由
「ウィズダムツリーは、ETFプロバイダーとして、なぜここまで注目されるのでしょうか。」
「ウィズダムツリーは、最初のETFを米国市場に上場させてから、今年で10年になりました。10年前に、時価総額ではなく、配当や収益を基準とした独自の指数を構築しETFとして商品展開したことから、米国内で一躍注目を集める会社となりました。最近では、DXJ(ウィズダムツリー 日本株米ドルヘッジ付ファンド)が、日本株に投資するETFとして最大規模となったことから、外国人投資家の日本株投資の手段としてメディアでも頻繁に取り上げられています。ウィズダムツリーという名前を聞いたことがある人も多いかもしれません。」
「DXJへの資金フローは、日本人投資家にも注目されていますね。」
「DXJは、為替ヘッジ付きであることから、米国人にとって円安ドル高のマイナス影響を受けずに日本株の上昇部分を確保できる手段として積極的に活用されています。」
「DXJは日本株の上昇と円安の両方の影響を同時に反映しているETFとしてマネックス証券でも取引が盛んです。ところで、日本では、米国株への注目があらためて増していますが、ウィズダムツリーでは、従来から米国株の配当ファンドに注力していると聞きます。」
「配当は我々にとって非常に重要な要素です。今、世界的に金利は低く、日本に至ってはマイナス金利となっている中でどのように、インフレ率に対応するだけの購買力を保つことができるかという点を機関投資家も個人投資家も悩んでいます。米国の株式は、およそ3~4%の配当利回りがあります。さらに、今後も年率で5-7%配当額が増加すると予測されています。人々は、配当の持つ力にあらためて気づきだしてきており、米国人投資家の間では、(時価総額ではなく)株式配当を基準に銘柄選定したETFが以前にも増して注目を浴びてきています。」
配当加重の重要性
「配当といえば、シーゲル教授の『株式投資の未来』でも説明されていましたね。」
「実は、私も、その本の執筆には携わっています。ウィズダムツリーのリサーチの多くの部分に関わっていますね。その本の最終章で触れているDIV (Dividend(配当)、 International(国際)、 Valuation(価値))指針については、ウィズダムツリーのETFにてこれを体現しています。我々の高配当ETFシリーズ(DHS(ウィズダムツリー 米国株 高配当ファンド)、DEM(ウィズダムツリー 新興国株 高配当ファンド)等)は、シーゲルの考え方である高い配当利回りの銘柄群が低い利回りの銘柄群より多くのリターンをもたらすという考え方を実践しているETFです。」
「ジェレミーさんは、どのように、これらのコンセプトにあった運用を実践しているのですか?」
「私が直接運用を行っているわけではありません。これらのETFの運用はすべてルールによって決められているのです。例えば、米国株の配当ETFでは、1年に1回ルールに基づいてリバランス(再配分)を行います。このプロセスが重要です。例えば、仮にアップル社の配当総額が120億ドルで、ファンドに含まれる銘柄の配当総額が4,000億ドルだとすると、アップル社の割合はファンド全体の3%となる。この状態で株価が2倍になっても、配当額は2倍にならないので、配当額での割合以上に加重している部分については売却する。逆に、株価が半分になって配当額が変わらなければ追加して購入する。割高になったら売る、割安になったら買う、という運用が自動的に可能になるのです。」
配当が良い銘柄をどう見つける?
「個別銘柄で配当戦略銘柄を探すコツはありますか。」
「個別銘柄に直接投資することはより多くのリスクを抱えることとなります。また、個別企業のビジネスを詳しく調べないといけません。ですので、出来る限り、一社だけに投資するのではなく、より分散された投資をすることが望ましいと考えています。ただ、ご質問に答えるとすると、我々は、高配当だけでなく配当が継続して成長している企業に注目する目的で、クオリティ配当成長戦略のETF(DGRW)を立ち上げています。これは、個別企業の負債比率や将来の成長性を重視するウォーレンバフェットファクターと呼ばれているものにも近いのです。」
「注目される市場について教えていただけますか。」
「今年は、新興国ETFのパフォーマンスが良いです。原油価格も落ち着き、中国経済も安定する中で、DEMおよびDGRE(ウィズダムツリー 新興国株クオリティ配当成長ファンド)のパフォーマンスが再びよくなってきています。」
業界でも珍しいロング・ショートETF
「これからどのようなETFを増やしていきたいと考えていますか?」
「今後のことは実際にETFを設定するまでお話しすることはできませんが、昨年12月にヘッジファンド型ETFのDYLS(米国株ダイナミックロングショートファンド)を上場させたことは大変エキサイティングでした。実は、ファンド業界全体での『ロングショート』カテゴリーの今年のリターンは7月までマイナスであったのですが、DYLSは同時期に10%以上のリターンを生み出しているのです。」
「なぜ、そんなことが可能だったのですか?」
「DYLSのロングポートフォリオ(買いのポートフォリオ)は、セクターが偏らないようにしながら、クオリティとバリューを重視して選択しています。そして、シグナルによって、月次でヘッジ割合を変えています。まず、マーケットが大きく下落した1月や2月には、マーケットの影響をヘッジしていたことから下落を避けることができました。そして、ヘッジ割合を下げた3月以降に、マーケットが戻したことから高いパフォーマンスを上げることができたのです。」
「なるほど。DYLSは、アクティブETFと呼ばれているものですか?」
「アクティブETFとは異なります。なぜならDYLSには連動する指数があるからです。我々が指数を作り、日々計算を行い、定期的にリバランスを行います。インデックスの運用方法についてはルールブックに基づきメンテナンスを行っています。これらのルールブックや日々の保有銘柄はウィズダムツリーのウェブサイトでも開示されています。我々は、ELD(ウィズダムツリー 新興国現地通貨建債券ファンド)のような実際に指数を保有しないアクティブETFも保有していますが、特にアクティブETFを増やす予定はありません。DYLSのようにインデックスがあるETFが、投資家にとっても分かりやすいと考えています。」
日本市場をどう見る?
「日本市場をどのようにみていますか?」
「日本は好きなマーケットです。グローバルバリュエーションとして、ウィズダムツリーが70本以上の株式ETFを上場させている中で、DEMとDXJは最もPERが低いETFなのです。今後3年~5年で日本は先進国の中でもパフォーマンスの高い国となることが期待されます。新興国も今は安いと考えられるでしょう。」
「米国企業に比べて、日本企業は配当を出していないイメージがあります。」
「DXJは3%近い配当を出しています。日本は自社株買いも盛んです。S&P500より高い配当で、過去数年間、配当成長率は10%を上回っています。DXJのように配当を中心とした戦略で日本は強いのです。」
「よく分かりました。どうもありがとうございました!」
(2016年9月収録)
本コンテンツ内で紹介されたウィズダムツリーETF
ティッカー | 名称・ベンチマーク | 経費率 |
---|---|---|
DXJ | ウィズダムツリー 日本株米ドルヘッジ付ファンド | 0.48% |
ウィズダムツリー・ジャパン・ヘッジド・エクイティ・インデックス | ||
DGRW | ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド | 0.28% |
ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長インデックス | ||
DHS | ウィズダムツリー 米国株 高配当ファンド | 0.38% |
ウィズダムツリー・エクイティ・インカム・インデックス | ||
DEM | ウィズダムツリー 新興国株 高配当ファンド | 0.63% |
ウィズダムツリー・エマージング・マーケッツ・エクイティ・インカム・インデックス | ||
DGRE | ウィズダムツリー 新興国株クオリティ配当成長ファンド | 0.63% |
ウィズダムツリー 新興国株クオリティ配当成長インデックス | ||
DYLS | ウィズダムツリー米国株ダイナミックロングショートファンド | 0.48% |
ウィズダムツリー米国株ダイナミック・ロングショート・インデックス | ||
ELD | ウィズダムツリー 新興国現地通貨建債券ファンド | 0.55% |
なし |
(2016年12月31日時点)
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