マネックス証券が社会文化活動の一環として毎年度実施している「ART IN THE OFFICE」プログラムは今年で10回目を迎えました。このたび、今年度の選出作品、橋本晶子氏の「There is something I want to talk about.」が完成しましたのでお知らせします。
橋本晶子氏の作品案は、鉛筆による描写力の高さや意外性に加え、プレスルーム(会議室)というオフィス空間を利用することにより、そこで働く人々とアートとの関係性について考慮している点が評価され、88点の応募作品案の中から選出されました。
作品
There is something I want to talk about.
橋本氏が約3週間かけてマネックス証券のプレスルームで制作した作品は、プレスルームを利用する人と相まって一つの空間を創るように構成されています。すなわち、実際の写真や動画などを基に描写された鳥や植物などとプレスルームを訪れる人とが組み合わさって、風景の一部となるよう1つ1つ配置されています。また、展示されている作品にはプレスルームの円形の形状を活かした作品も含まれており、作品と人との関係性にとどまらず、作品と新しいマネックス証券のオフィス空間との関係性についても意識されています。
「ART IN THE OFFICE 2017」作品:
橋本晶子/「There is something I want to talk about.」/2017年/墨、アクリル、鉛筆、紙/サイズ可変
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橋本晶子氏コメント:
ビルの高層階に位置するこのオフィスには、エレベーターを軸足にして宙空に浮いている感覚が常にありました。新設された壁面やガラス、床、人の動きを形作る廊下、セキュリティーのゲート、街の流れ、ここにある日常の景色を眺めることは、それ自体なにか大きなイメージの中にいるような体験でもありました。
ワークショップでは社員の方々に、この見慣れた風景(駅からオフィス入り口までの道のり)の画像を印刷した紙を渡し、自由に切ってバラバラにしたのち再構成して別の紙にコラージュしてもらいました。風景の中で意識の中心にあってよく見えている部分も、印象の外でよく見えていなかった部分も、等価にバラバラの画像になった時、生きていて目に映るものの全てがイメージとしてあり得るのだとあらためて感じました。
今回の作品では、座る椅子の場所、円卓を挟んだ立ち位置、動きによってそれぞれに異なる眺めがあります。実際の会議の時だけでなく、この場を通り過ぎる時にも、目の端に映る風景であってほしいです。密閉されたオフィス空間で、そこになにかささやかな引っかかりが生まれていることを期待しています。

1988年生まれ。2015年武蔵野美術大学大学院修士課程修了。
在学中から主に紙と鉛筆での絵画、インスタレーションを表現手段とする。これまでの個展に「call if you notice.‐気づいたら電話して‐」gallery blanka/愛知(2016)、グループ展に「a.a.t.m.アートアワードトーキョー丸の内2015」丸ビル/東京(2015)、「東京サンパウロ‐表現の両極‐」アフロブラジル美術館/ブラジル(2014)、受賞歴に「シェル美術賞2014」木ノ下智恵子審査員賞、などがある。