マネックス証券では、「マネックス・アクティビスト・フォーラム」と題して、個人投資家が積極的に投資先企業へ意見を発信していくことを応援する取り組みを行っています。今回は、パナソニックや東京電力ホールディングスの社外取締役を務める冨山和彦氏と、マネックス証券代表取締役会長松本大が対談いたしました。PART2のテーマは、「個人の意見を統合し、発信する」です。
マネックス証券では、「マネックス・アクティビスト・フォーラム」と題して、個人投資家が積極的に投資先企業へ意見を発信していくことを応援する取り組みを行っています。今回は、パナソニックや東京電力ホールディングスの社外取締役を務める冨山和彦氏と、マネックス証券代表取締役会長松本大が対談いたしました。PART2のテーマは、「個人の意見を統合し、発信する」です。
株式会社経営共創基盤(IGPI)
代表取締役CEO
冨山 和彦 氏
東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、2003年に(株)産業再生機構設立時に参画しCOOに就任。解散後、IGPIを設立、数多くの企業の経営改革や成長支援に携わり、現在に至る。パナソニック(株)社外取締役、東京電力ホールディングス(株)社外取締役。経済同友会政策審議会委員長。財務省財政制度等審議会委員、財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、内閣府総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会委員、文部科学省中教審実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会委員、金融庁スチュワードシップ・コードおよびコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員他。
マネックス証券株式会社
代表取締役会長
松本 大
1963年埼玉県生まれ。1987年東京大学法学部卒業後、ソロモン・ブラザーズを経て、ゴールドマン・サックスに勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資でマネックス証券株式会社を設立。2004年にはマネックスグループ株式会社を設立し、以来CEOを務める。マネックスグループは、個人向けを中心とするオンライン証券子会社であるマネックス証券(日本)、TradeStation証券(米国)・マネックスBOOM証券(香港)などを有するグローバルなオンライン金融グループである。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカード、株式会社ユーザベースの社外取締役も務める。
- 冨山氏×松本対談 PART1
- 冨山氏×松本対談 PART2
サマリー
- 日本は、議決権に占める個人株主の比率が高いが、一人ひとりの意見を統合し、発信する仲介役が不足している
- 企業にとって、潜在的なレベルの高い、健全なアウトサイダーは必要である
- 日本の現場サイドが持つ組織能力は、世界で有数に高い
個人の様々な意思を編集する機能は、誰が持つのか?
松本:
日本は議決権に占める個人の比率、個人株主が、世界的に見てすごく高いと思います。
冨山:
高いでしょうね。
松本:
アメリカとかだと、結局インベストメントマネージャーがほとんど持っているので、直接個人は少ないです。投票されたものが少ないという意味ではなくて、そもそもの議決権が、個人が直接持っているものはすごく少ないですよね。しかも株式にもいくつか種類がある。
冨山:
種類株式が多いですからね。
松本:
日本はかなりの部分を個人が持っていますが、ほとんど行使されていないですね。
冨山:
それはされないでしょう。
松本:
実はオンライン証券のお客様は、随分行使しているのです。今年(2019年)の5月に、こういったエンゲージメントなどをテーマとして、当社のお客様を集めてマネックス・アクティビスト・フォーラムというイベントを行いました。そこで、議決権を行使したこと、あるいは株主総会に行ったことがある人がどの位いるかを聞いたら、4分の3位が手を挙げられました。これには、海外のアクティビストファンドのマネージャーも皆、腰を抜かすほど驚いたのですが、ただそれは特別な関心のある人たちだと思います。一般には、当然そこまでは行使されておらず、ほとんどはゴミ箱に行ってしまっていると思われますが。個人投資家が果たせる役割にはどういうものがあると思いますか。
冨山:
現実的にガバナンスのプロセスで、ある意味すごく分散した一般的な個人投資家の空気なり醸し出している雰囲気というのは、1つ経営的な参考になることも事実だと思います。それは、平均的な人たちがその会社に対してどう思っているかをリフレクトするような感じです。株は持っているわけですから、普通の消費者よりはシリアスに見ていますから。
松本:
数倍シリアスでしょうね。
冨山:
例えばBtoCのビジネスであれば、商品やサービスに関して、ある種プロではないからこそのドキッとする反応が、株主総会における質問だったり、手紙だったりという形で来たりします。そういう意味では、僕は1つのConstituency(利害関係者)としては大事だと思っています。ただ、一方で限界もあって、1対Nですから、その人たちと深い会話ができるかというと、深い対話はできないわけです。そうすると、そういうものをより集約化した形で、プロフェッショナルな人との対話も必要で、多分、役割的に違った意味で大事なのですが、要するに個人投資家に過度に依存しているという状況は実はエンゲージメントの限界を作ってしまう。
松本:
それについて、私が思っているのは、このインターネットの時代、例えばニュースとかでも、昔と違って、個人がTwitterとかで発信して、それが世界に流れる場合もあるし、あと、いろいろなアイデアというものがクラウドソース的に集められるということが行われるようになってきている時代です。そんな中、機関投資家の議決権とは何だろうと考えていくと、ファンド、生命保険会社や銀行などの機関投資家は、それぞれ株主・受益者等がいるので、ずっと掘っていくと、最終的な株式の実質保有者というのは、自然人か財団ですよね。国というのもありますが、基本は自然人か財団になります。そうすると、本来、個人なわけですね。
冨山:
そうですね。財団も最終受益者は一般市民ですから、最後は必ず個人に行きつきます。
松本:
そうですよね。ただ間にいるインターミディアリーというのが、つい最近までは、今でもそうかもしれませんが、必ずしも本来の受益者のために頑張っているとは限らないわけです。
冨山:
プリンシパル・エージェント問題がありますからね。
松本:
はい。ところが、現代ではインターネットなどが発達してくる中で、もっと本来の背後の人の意見を吸い取れる。
冨山:
吸い取りやすくはなっています。
松本:
そういう形でのエンゲージメントには、可能性があるのではないかと思っています。マネックス・アクティビスト・フォーラムを行っているのは、何かしらの形で、個人にもっと意識を持っていただいて、意見を出してもらって、まだしっかり具体化できてはいませんが、そういうものをまとめた上で、もっと経営的な問題を企業に伝えていくのは、面白いのではないかと思っているのです。
冨山:
今の松本さんの話は、2つ問題提起があると思います。国の政治の議論で言ってしまうと、インターネットが出てきたことで、一時期、一般意思2.0ではないですが、それによって代議制が持っている欠陥を補完できるのではないかと、皆期待したわけです。ところが実際何が起きてきたかというと、やや100年前と同じような、民主主義の危機に陥っているわけです。ワイマール憲法の末期に近いようなことが起きかかっています。それも、代議制民主主義なり民主的政治プロセスを最も組織形成に使ってきたといわれている国、アメリカとイギリスで起きたわけですよね。ある意味では2.0だから直接いろいろなものが入ってくるのですが、あがってくるものというのは、それぞれの個人が持っている限られた情報と限られた見識によってあがってくるわけです。ですから、本当に一般意思に統合できれば、1つの有効な一般意思になるのですが、1人1人の個人が見えている世界には限界があるので、それをどう統合するかという問題が1つあるのです。多分今それを統合する機能がインターネット世界にはないから、フェイクニュースが勝ってしまうわけです。これが1つの問題提起です。これを誰がどうやるのかという、新たなるインターミディアリーというか、それを編集統合する機能を誰が持つのかという論点です。
それから、当然のことながら、全体のレベルは平均的な有権者のクオリティーで決まってくるので、この民度をどう上げられるかという問題です。これはもうずっと民主主義が抱えている問題で、ギリシャ時代から抱えている問題ですが、この努力を、これは教育かもしれないし、そういう話だと思うのですが、その2つの課題をどう超えるかということが、逆に問われているのでしょうね。
松本:
はい。それについて、当社は、まずフォーラムなどを通じて、もっと投資家の意識を高めていって、しっかりとした考え方で企業を見て意見を持つようにしてもらうように、啓蒙活動というと偉そうですが、そうした上で、出てきた意見を、どのように形にしていくは走りながら考えているところですが、統合というか止揚というか、まさにおっしゃったことを進めていこうと思っています。21年前に会社を作ってから今まで、証券会社の役割はいろいろありますが、個人との関係でいうと、マーケットにお客様をつなぐことが仕事だと思っていました。株を売買するということにつなぐのが仕事であると思っていました。ただ最近思うのは、そうではなくて、発行企業との間を、今おっしゃったような形でつないでいくのが、すごく大切な証券会社の役割なのではないかというふうに考えを変えてきていまして、それを行っていきたいと思っている次第です。
冨山:
多分、現代的には結構クリティカルですよね。ガバナンス・プロセスを現代的に機能させようとすることは。
松本:
そうですね。
冨山:
これは国のレベルでもしたほうがいいと思いますが、でもとりあえず今の企業経営でいってしまうと、ある意味では、日本の企業経営モデルはサラリーマンという官僚主権のようなものだったわけです。それがやっと、本来の資本民主制の、議院内閣制で運用していこうという流れが生まれているわけだから、今、松本さんが言われたような機能がきちんとないと、多分まだ日本企業は20世紀初め頃の民主主義のような試行錯誤状態ですから、変に制度破綻が起きてしまうことが危険なわけです。ですから、私は、それを誰かがするというのは、極めて大事なことだと思います。
松本:
進めていきたいと思います。
デジタルイノベーションが進む中で、当社の役割とは?
冨山:
こう言うとまた怒られてしまうのですが、現状いわゆるプロとされている機関投資家の人たちの、有権者をある程度くくった形でエンゲージメントするケイパビリティーも弱いです。これは2つ理由があると思いますが、1つは、どちらを見て仕事をしているのか分からない感じの人たちが多い。完全にプリンシパル・エージェント問題が起きてしまっています。要は、有権者自身に既にプリンシパル・エージェント問題があるので、さっき言われたように、それがインターミディアリーとしてきちんと機能しているのかどうかという問題が、残念ながら日本の場合多いです。今、スチュワードシップ・コードできちんとしろと言っているわけですが、現状はまだそこに至っていない、遠いという問題が1つ。それからもう1つは、彼ら自身の能力の問題。プロフェッショナルとしてのクオリティーが、残念ながら欧米のトップレイヤーの人たちと比べて低いので、多分彼らにすべてを委ねるというのは今の日本では危険だと思います。
ですから、エンゲージメントなり経営的に示唆のある話なりを機関投資家に聞きたい真面目な経営者は、皆すぐロンドンとかニューヨークに行ってしまうのです。ロンドンとかニューヨークには、本当に一流の人たちがいて、カバーしてくれているので、聞くと、すごく参考になることを言ってくれているのです。ですから、NOT東京、BUTロンドン・ニューヨークになってしまうのです。ただ、そういうクオリティーのプロがカバーしてくれているのは、本当に一部の恵まれた会社です。
松本:
そうでしょうね。議院内閣制とおっしゃいましたが、現実の社会とか政治とか見ても、新聞などのメディアが本来は、啓蒙というか、しっかりと国民に情報提供をしながら、しっかりと考えてもらって、それでしっかりとした意見が作られて、それを国にフィードバックするという仕組みが必要だと思うのですが、そこに案外偏った考えがあったり、案外浅い考えでいろいろ書かれたりしています。
冨山:
むしろそれを拡散させてしまうのです。
松本:
それは本来のオーナーである国民の意見の総和でもないし、国民の意見をより良くするための情報提供もしていないし、きちんとしたインターミディアリー、メディアとしてワークしていないと感じるのですが、それが残念ながら金融の世界でも日本の機関投資家とかだと同じことが起きています。
冨山:
それは、私も間に挟まる仕事をずっとしているので、経済に関する報道でも、こうなるかと思うようなものが残念ながら多くて、それは意外と政治と大差ないです。表層的に、情緒的に、スキャンダルだけ騒ぎ立てるかというメディアが結構多いので。背景に構造的問題があるのに、なぜそこに掘り下げないのかと思うことがあります。確かに、日本のジャーナリストはサラリーマン記者で専門家ではないから仕方がないかと思うところもありますが、ずっと仕事としていてこの程度かと思ってしまうことが多いです。ある意味、機関投資家以上に表層的で近視眼的なことを書き立てることが多い。残念ながら、これは経営者に対して変な影響を与えてしまいます。経営は本来、もっと深くて広い時間と空間の中で行っていく仕事なので、しっかりとした深さと広さを持った時空でフィードバックがかからないと、状況反応型の経営行動を促してしまうので、その危なさは政治の世界も経済の世界も同じです。
松本:
そうですね。
冨山:
だから、そこは是正すべきです。せっかく有権者が思っていることが、ある時間のピース、ある空間のピースとしては表出するわけですが、その表出してきたものを、どう再統合、再編集するかというそれを行う側の能力が、多分、政治の世界も企業経営の世界も、まだついていっていないのだと思います。
松本:
そうですね。特に政治の世界は、そもそもそれを本気でしようとしているのかと思うことさえあります。
冨山:
本来、企業経営の世界は、本来それをすることによって企業価値を高められるわけですから、ステークホルダーには動機付けは十分あるはずなのですが、私が見ている感じだと、結局、これだけのスピードで進むインターネットを中心としたデジタルイノベーションに、やや人間がくっついていっていないのだと思います。その間に介在する人たちも、ついていっていないのです。
松本:
そこで当社グループができることはいっぱいあると思っているのです。
冨山:
そうです。そこにチャンスはあると思います。空白が生まれているわけなので。
松本:
さきほど、個人の平均値を上げなければいけないということをおっしゃっていたのですが、一方で私の立ち位置から見ていると、メディアがどれだけ優秀なのか、あるいは機関投資家がどれだけ優秀なのかと思うことがあります。例えば、東芝の利益の件などは、あり得ないことを毎年のようにしていたわけですよね。あれを全部、機関投資家も含めて誰もが見ていたのに、スルーしていたわけですよ。あるいは少し前のオリンパスの問題とかも、機関投資家はずっと見ていたのにスルーしていて、でもあるときある雑誌に出始めた。
冨山:
大体そういう出方ですよね。
松本:
そうですよね。それで個人が見て、何だこれはと言い始めた。この観点だけで言えば、少なくとも日本において、プロと個人と変わりがあるように思えません。逆に個人のほうが、人数が多く、中にはしっかり見られる人もいる。
冨山:
あと、しがらみがないです。
松本:
はい。ですので、そこの可能性はすごく高いと思うのです。
冨山:
そうですね。本来、潜在的なレベルの極めて高い、村社会的にいってしまったらある意味アウトサイダーの人は、やはり大事なのです。私が感じるのは、例えば、自分が産業再生機構で半ば金融の世界に踏み込んでいたときに思ったのですが、当時、担保資産の評価にはニッポンの銀行の世界の常識というものがありました。私たちはある意味では村社会の常識に対しては素人なわけです。ですが、こちらも当然きちんとした教育を受けているし、きちんと理屈は分かっているので、おかしいと言うわけですよね。元々やっていた人たちは、もうその長年やってきたことにキャプチャーされ、その人自身がとりこになってしまっているので、そのおかしさはスルーするのです。そこにそういうふうにキャプチャーされていない人が、長期的真実を語るということは、すごく大事ですよね。
松本:
健全なるアウトサイダーですね。
冨山:
すごく大事です。結局、世の中というのは、これまた面白くて、いつも思うのですが、競争とか経済の世界というのは、最後は経済的合理とか競争の合理でしか、ものは動かないのです。最後はごまかしきれないのです。日本の社会というのは、割と、とりあえず当座の予定調和なり、当座の村の中のいろいろな約束ごとで、何とか、なあなあで済まそうとする力が働きやすい社会です。それは経済においても政治においても同じです。ですが、多分この30年間の歴史というのは、結局それでごまかしきれなくなった歴史だと、私は思っています。最後は経済の原理が勝ってしまうのです。リンゴが上から下に落ちるのと同じです。浮いていてはくれないのです。皆で、浮いていることにしようと言っても、落っこちてしまう。ですから、それを明確にする機能を、少し言い方は悪いですが、限界的な雑誌などに依存するというのは、これはやはりあまり健全ではないですよ。
松本:
そうですよね。
冨山:
それは逆にいうと、松本さんがされようとしていることについて、大いに期待したいということです。
松本:
新しい切り口でやっていきます。
強い現場力・組織力を生かすも殺すもリーダー次第
冨山:
加えて、私は、さっきからいろいろ言っていますが、日本の企業体は、さはさりながら、現場サイドが持っている組織能力は、世界で有数に高いと思っています。
松本:
そうですね。
冨山:
少なくとも野球という種目の中では、一番監督が楽できるくらい現場力の高い組織なのです。それは、選手が真面目にいろいろしてくれるから。いろいろなことを自主的に改善、改良してくれるから。最近、神奈川県で、ハードディスクを盗んで持って帰ってしまった人がいましたね。あれは日本では事件ですが、例えば国によっては、皆平気であれをするわけです。だから工場長がまずしなければいけないことは、帰るときの身体検査です。日本以外の多くの工場では常識です。
松本:
日本はしなかったと。
冨山:
しないで済んだということは、それだけ、極めてまじめで、すごくディシプリンがある働き手が大半の国なのです。ある意味では、そういう、すごくクオリティーが高くて、真面目ですごく勤勉で、かつ、皆がチームワーカーな、恵まれた現場があるわけです。裏返して言ってしまうと、その強い現場力や強い組織能力を生かすも殺すもリーダー次第で、私はこの30年間の不振は、やはりリーダーの責任だと思います。それを生かしてこられなかったのですから。それは2通りあって、現場力だけに依存してしまって、自分は何もしなかった成り行き任せのリーダーたち、あるいは、野球のうまい現場に無理やりサッカーをさせたリーダーたち。
松本:
それは国も企業も一緒ですね。
冨山:
一緒です。ということは、そこにしっかり働きかけて、リーダーがしっかりと機能するようにエンゲージメントなりアクティビズムを作用させれば、改善による伸びしろは大きいので、この国のポテンシャルは、まだすごく大きいと思います。
松本:
そうですよね。
冨山:
とても大きいですよ。何年か頑張ったら株価が2倍、3倍になる会社が、ごまんとある。
松本:
いくらでもありますよね。
冨山:
自分は、社外取締役のゴールとして、10年近くは頑張って、自分の在任中に、株価を3倍ぐらいに上げようと思って、いつも仕事をしています。それも投機的な3倍ではなくて、きちんとベースの株価が3倍に上がるようにしたいと思ってしています。私は、それはいろいろな会社で可能だと思っています。そこまで真剣にやろうと思ったら、そんなに何社もできないので、自分自身で常に携われるのはせいぜい2、3社ですが。やはり社会的運動論として、株主から取締役会、さらに経営者から現場までのインベストメントチェーンでそういった運動が起きていって、結果的にそれが長期持続的な、本当の意味での成長というか、富の形成、国富の形成につながっているといったら、私は素晴らしいと思います。だから時価総額はまだ今の2倍か3倍にできると思います。
松本:
日本、安いですからね。
冨山:
安いです。そこはもう松本さんに大いに期待しています。
松本:
頑張ります。今日はありがとうございました。
(了)
- 冨山氏×松本対談 PART1
- 冨山氏×松本対談 PART2