
「億り人(おくりびと)」という言葉をご存じですか?一般的に「億り人」とは投資によって1億円を超える資産を築いた人々を指しています。今回、株式投資で200万円から一時は10億円程度まで資産を増加させた「億り人」であるDAIBOUCHOUさんに株式投資に成功するためのヒントや投資手法などをマーケット・アナリストの益嶋裕がインタビューしました。インタビュー第3弾のテーマは「億り人の銘柄選び術」です。
インタビュー第2弾「リーマン・ショックからの復活も果たした投資哲学とは?」を見る
本コンテンツは情報提供が目的であり、投資その他の行動を勧誘する、あるいは、コンテンツ中の個別銘柄を勧誘、推奨するものではございません。また、過去の実績は将来の投資成果を保証するものではありません。銘柄の選択などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断にてお願いいたします。

個人投資家
DAIBOUCHOU 氏
1973年生まれ。東京都在住。会社員時代から、各企業の財務諸表分析を中心とした、割安成長株への投資を得意とする。現在は不動産投資、割安株や優待株の分散投資など幅広く資産運用を行なっている。
ツイッターアカウント:https://twitter.com/daiboucho

マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
益嶋 裕
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
相場の予想はしない!?
-相場全体の予想はされないのですか?これから上げ基調だろうな、とか。
私の場合、それは失敗のもとになるのでやりません。実はトランプさんが米大統領選に勝利した時、これから絶対下げるだろうなと思って保有株をけっこう売ったのです。ご存じのようにその後株価は大きく上がりました。相場予想をすると裏目に出ることが多いので、あえてやらないように心がけています。トランプさんが大統領になった時は世界経済終わると思ってました(笑)。
-トランプ・ショックのときはどのように過ごしていたのですか?
香港に旅行に行っておりまして、最初は「クリントン氏有利」みたいに報じられていたので安心していました。ところがふとニュースを見ると「トランプ氏有利」に変わっていまして、食事をしながらあわてて売り注文したんですけど、極端に下がってるから売りにくくて。さらに僕みたいにたくさんの銘柄に分散投資していると売り注文出すのが面倒で(笑)。あの時の感情の起伏はすごかったですね。まさかその後相場が良くなって大きく儲かるとは思ってもいませんでした。
-投資対象にする銘柄はどう選ぶのですか?なんとなくバリュー株(割安株)を好まれるのかなと思うのですが。
株主優待目当てで保有している大型株もありますが、基本的には中小型株が多いですね。けっこうグロース株(成長株)にも多く投資しています。バリュー株とグロース株ってそれぞれ良いところがあって、バリュー株って1度選んだらある程度放っておけるので、楽ですね。でもそれほど大きな上昇は狙いにくい。グロース株は大きな上昇を狙いやすいのが魅力です。ただ、やはり割高になっている事が多いので分析にかなり手間がかかりますね。

億り人の銘柄選び術
-銘柄の分析はどのように行われますか?
まず、ツイッターやブログなどで誰かが教えてくれている銘柄で良さそうなものをチェックします。銘柄を知るきっかけは多いほうが良いので、なるべく広く情報収集を行うよう心がけています。知った銘柄については、会社四季報などを活用してどういうビジネスをやっている会社なのかを調べます。「これから株価が上がる要素は何があるかな」、「リスクはどんなことなのかな」などとイメージを膨らませます。もちろんこれまでどの程度上がっているかなど株価の推移もチェックして総合的に買うか買わないかの判断をします。
-情報収集にはツイッターを活用されていることが多いのですか?
そうですね、ツイッターは面白いので特に好きですね。自分でも手軽に発信できますし、ブログを書いている方はその内容の一部をツイッターで書いてくれることもありますし。
-1日の過ごし方を教えていただけますか?
だいたい日本株の取引が始まる9時くらいまでに起きて、緩い感じで過ごします(笑)。前場の動向を簡単に見て、11時半くらいからお昼を食べます。実際の売買をするのは後場の方が多いですね。前場に相場の方向性をチェックして、午後に売買というパターンが多い。寝起きに弱いのもあるのかな(笑)。それで16時くらいからジムに行って、19時頃に夕食を食べますね。調べものは夕食の後にすることが多いですね。
-最近分析した銘柄の例があれば教えてください。
エコモット(3987)への投資はかなりうまくいきました。流動性が多い銘柄ではないためあまり多く買えなかったことが残念ですが。2017年6月に札幌証券取引所のアンビシャス市場に上場した銘柄で、北海道の会社です。
-(データはインタビュー当時)予想PERが56倍、PBRが14倍とは、ものすごいグロース株ですね。
そうなんです。だから最初はすごい怖かったのですが、しっかりと分析して成長するだろうなと確信が持てました。北海道って寒さで駐車場が凍ることがあるんですね。それをお湯とか燃料を使って溶かすのですが、それをIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の技術を使って効率的に溶かすビジネスをやっています。どのタイミングでお湯を流せば一番効率がいいか、というのをわざわざ人が見に行かなくても遠隔で状況がわかるシステムを手がけています。他にもトラックのドライバーが安全に運転しているかどうかをブレーキのセンサーが感知して統計を取る、なんていうサービスもやっています。この会社の社長は元々「初音ミク」を作った会社で働いていた方です。その後、エコモットを創業したんですね。
-......投資されている銘柄、すべてそのレベルで情報を調べていらっしゃるのですか?
だいたいそうですね。

売り時の判断はどのように?
-買った銘柄を売るタイミングはどのように決めますか?
買ったときからこれくらいの価格で売ろうというのはほとんど決めないですね。あまり考えても意味がないかなと。株価が上がって利益確定するときも、「◯%上がったから」っていう理由で売ることはあまりなくて、バリューならバリュー、グロースならグロースで買った理由がなくなったら売りますね。
-どうしても失敗することもあると思うのですが、損切りの判断はどのようにされますか?
描いたシナリオと違うな、と判断したら売りますね。例えば安江工務店(1439)という銘柄を買ったことがあるんですが、第1四半期の決算があまり良い数字ではなく会社計画に対する進捗が芳しくありませんでした。会社の説明では、受注は取れているが施工が遅れているという説明でした。その時はその説明を聞いて第2四半期で数字が良くなるのでは、と判断したんですね。でも結果的に第2四半期の業績もあまり良くなかった。それでも業績に対する会社の説明は第1四半期とあまり変わらなかったので、保有を続けていました。ただ結局第3四半期の決算もやっぱり悪くて、今度は会社の説明が「価格競争が激しくて利益が出ない」というものにガラッと変わったんですね。あっこれは単なる施工遅れではないな、と判断して翌朝に成行注文で売りました。
-業績の進捗のお話がありましたが、DAIBOUCHOUさんは企業の業績予想はどのくらい精緻に行うんですか?
けっこうざっくりやりますね。例えば第2四半期が終わった時点で会社予想に対する進捗が7割程度あって、残りの2四半期は前年同期の業績を当てはめてみたり企業の業績の季節性を加味したりしながら、これは上方修正の可能性が高そうだな、とか。

お役立ち情報を教えてください!
-最後に個人投資家の皆さんへのアドバイスをお願いします!まず、おすすめの書籍はありますか?
読んだのはかなり昔ですが、「投資家列伝」のような本は自分のメンタルの安定のためにすごく役に立っている感じがします。あとは「賢明なる投資家」なんかも読みましたが、あれだけを読んでいたらグロース株に投資しようっていう風にはならないですね。色々と読むのが大切だと思います。
-銘柄スカウターも使っていただけているそうですね!どんなところが良い点ですか?
はい、使っています。まず、無料っていうところが良いですね(笑)。他の情報サイトなどで有料でしか見られない情報が無料というのは魅力的だと思います。あとは、普通企業の業績って長くても5年分くらいしか載っていないじゃないですか。それが10年分見られるのはとても良いです。リーマン・ショック後の業績をチェックできるのはすごく良いですね。景気循環株なのか、景気に頼らず自身で成長していける銘柄なのかの判断に役立ちます。
-ありがとうございます!他にも気に入っているポイントはありませんか?(益嶋、しつこい。)
業績が3ヶ月ごとに分かれていて、季節性がチェックできるのも良いと思います。予想の精度を高くすることができますね。
-ありがとうございます!銘柄スカウターは今後も進化させますのでご期待ください!本日は貴重なお話の数々を本当にありがとうございました。
こちらこそありがとうございました!


