「億り人(おくりびと)」という言葉をご存じですか?一般的に「億り人」とは投資によって1億円を超える資産を築いた人々を指しています。今回、株式投資で20万円からスタートして「億り人」になった株主優待銘柄や昇格銘柄投資の達人v-com2さんに株式投資に成功するためのヒントや投資手法などをマーケット・アナリストの益嶋裕がインタビューしました。インタビュー第2弾のテーマは「株主優待銘柄をすすめる多くの理由」です。
インタビュー第3弾「あの120倍銘柄を買い、持ち続けた理由」
インタビュー第4弾「億り人投資家に聞く。個人投資家が、勝つためには。」
本コンテンツは情報提供が目的であり、投資その他の行動を勧誘する、あるいは、コンテンツ中の個別銘柄を勧誘、推奨するものではございません。また、過去の実績は将来の投資成果を保証するものではありません。銘柄の選択などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断にてお願いいたします。
個人投資家
v-com2 氏
30代の会社員投資家。株主優待を知ったことをきっかけに2003年より投資を開始。
ライブドアショック前日に初めて資産1000万円を突破するが、その後の新興市場崩壊で停滞。リーマン・ショック前後の暴落時に全資産を株式に投入したことでその後大きな恩恵を受ける。その後2015年に初めて資産1億円を突破。優待株+東証1部昇格の投資法を追求するうちに成績が向上。
著書
v-com2さんの投資スタイル
-続いてv-com2さんの投資スタイルを教えてください。投資対象となる銘柄はどのように決めていますか?
ほとんど中小型株がメインです。具体的には投資する際の時価総額が30-300億円くらいのことが多いですね。株主優待を出す企業であることを極めて重要視しており、優待を出さない銘柄は数えるほどしかありません。先ほどお話したように(インタビュー第1弾参照)、「株主優待バリュー」「収益バリュー」「資産バリュー」の3つの観点から総合的に考えるようにしています。加えて例えば東証2部から東証1部、といったような「昇格期待」があることも重要視しています。また、少数の銘柄に集中投資するのではなく、1銘柄につき当初の投資額は総資産の10%までにするというルールを設けて分散投資するようにしています。また、信用取引は自分に合わないと感じたため現物取引のみで取引しています。
-分散投資をされているということですが、どれくらいの銘柄数を保有されているのですか?
資産額が増えるにつれて銘柄数も自然と増えていきました。最近は100前後の時が多かったのですが、優待株で大きく上昇したものを売っていったら現状は80以下に減っています。銘柄数自体に特にこだわりはありません。優待にしか魅力を感じないような銘柄については株価も月1回しか見てませんが、特に不都合は感じないですね。
-テクニカル分析はされないのですか?
テクニカル面は完全無視でやっています。チャートを見れば色々なことがわかるという人もいるのでしょうが私にはわからなかったです。チャートのパターンというのもあるのでしょうけど、例外もたくさんあると思いますので、テクニカルに頼ることは一切やめようと、捨ててしまいました。自分には合っていなかっただけのことだと思います。基本はバリュー寄りのファンダメンタルズ派です。ファンダメンタルズに株主優待の要素を含めるのが私の特徴だと思います。
-銘柄選びに関連した情報収集はどのように行われていますか?
定期的な情報収集は基本的には適時開示情報と四季報です。詳しく調べる際には企業のウェブサイトを色々見たり、銘柄名で検索をかけたり、ヤフーファイナンスの掲示板ものぞいてみたり、アナリストレポートがないか探したりと色々なことをして企業の理解に努めます。ブログは、最初の頃はみきまるさんという方のブログをメインで見ていましたが、徐々に私が昇格投資をメインにしていく過程で離れていきました。今は色々なブログを見ることはあっても、これを中心に見るというのはないですね。ツイッターも見ることはありますが、そこから銘柄発掘につながったことは数えるくらいしかありません。むしろ時間を取られるうえに他人の意見に左右されてしまうので、自分と向き合う時間を奪われると感じ、私にとってはかえって有害なのかもしれません。
株主優待銘柄をすすめる多くの理由
-株主優待を重視されているのはなぜですか?
優待株に注目した投資は日本独特のものだろうと考えています。優待株投資というと単にお得で楽しい優待を手に入れることだけと思われる方も多いかもしれませんが、私は株価に大きな影響を与える重要なファンダメンタルズの1つの要素として見ています。例えば、優待利回りが非常に高い銘柄は知名度の上昇に伴い株価が上がりやすいと考えます。また、優待の新設・拡充は株主数増加に直結しますので、東証1部に昇格する目的で優待を利用していると思われる企業がたくさんありました。優待株投資を追及して色々観察していたからこそ、派生して昇格投資の研究につながったわけです。
-株主優待はお得で楽しいほかにもメリットがあるわけですね。
はい。優待株投資をすると気付かないうちに実践している隠れた大きなメリットもあると思っています。それは、「株価にあまり左右されない中長期投資が当たり前に実践できて習慣化すること」「今まで興味がなかった企業に出会えること」です。色々な個人投資家を見ていると、多くの人が中長期投資を実践できず短期で売ってしまう傾向があるように思います。あるいは、優待株をなんとなく買ってる人でも、ちょっと上がったら権利落ち後に売ってしまうのはよく見かける話です。また、自分が知っている知名度の高い企業でないと投資しにくいという傾向も初心者の頃にはありがちです。
-個人投資家が陥ってしまいがちな傾向を優待株投資によって防止することができるのですね。
そう思います。株価に振り回されず中長期で保有できるというのは、うまく利用すれば意外な強みになります。上場企業というのは成長する使命をもっていますから、中長期で価値を上げていく傾向があります。その価値の上昇はどこかで株価に反映されますので、中長期保有していると株価の上昇の恩恵を受けることができるわけです。もちろん同時に市場全体の暴落リスクのようなものは受け入れなければなりませんが・・。私の場合、優待株として投資していたつもりがいつのまにか2倍、3倍、時には10倍以上になったことも実際何回もあります。優待株として出会ったRIZAPグループ(2928)も最高で120倍になりました。優待があればその企業に興味をもつため、(調べる気がある人なら)ここはどういう企業なんだろうと自ら調べるきっかけにもなりえます。結果的に、優待があったからこそ出会えた企業というのが出てくるわけです。こうした利点を知らず知らずのうちに得ていることから、ファンダメンタル中心に投資する人にとって優待株は非常に良い入り口になるのではないかと思います。
-RIZAPをどのように分析されたかについては、後ほど(次回掲載予定)詳しくお聞きしたいと思います!優待株投資についてお聞きするとたしかに多くのメリットがありますね。
よく、優待分株価が下落したら優待を取る意味がないじゃないかという声を聞きますが、その発想自体が短期トレーダーの発想ではないでしょうか。短期で1銘柄だけしか見なければ、株価が下がりそういう状態になることもあるでしょう。ですが中長期において何銘柄にも分散投資する場合は、ご紹介したような様々なメリットがある上に、権利日を通過するたびに優待がもらえて利回りを補完するので、長期ではかなり有利になることがあります。そういう魅力を知っていただき、実践して実感してもらえることがあれば嬉しいことです。
もう1つの昇格期待株についても、優待株と同様に、今まで無関心だった企業に興味をもつきっかけになると考えています。そして、無名の企業が徐々に人気が出ていく過程を応援できるのが隠れたメリットです。企業の活躍するステージがJASDAQや地方市場などから東証2部、1部と上がることや知名度の向上が株価の成長につながりますので、企業が育つのを見守っているような感覚になり私には非常に心地よいことなんです。
おすすめの投資書籍はありますか?
-少し話題が変わりますが、おすすめの投資書籍を教えてください。
私が書いた本をおすすめしたいです。
①「昇格期待の優待バリュー株で1億稼ぐ!」(初心者~中級者向け)
②「運、タイミング、テクニックに頼らない! 最強のファンダメンタル株式投資法」(中級者向け)
私が投資を始めた頃は、書店にはデイトレードの本と短期投資の本とチャートの本と、海外の難しそうな本ばかりに見えました。日本人が書いたファンダメンタル重視の投資本で、体系的に何かを説明し、株式投資の本質に迫り、人におすすめできるような書籍を見つけられなかったんです。だからいつか自分で書くしかないという思いをどこかにもっていました。私が思う良書とは初心者でも上級者でも何かしらの気付きが生まれる本です。そういう本を作りたいという想いで、実際にとんでもない労力をかけて自分で作った本ですのでオススメできます。ただ、もちろん人によって合う合わないはあると思いますが。
-私も拝読させていただきとてもわかりやすくためになる本でした。アマゾンでの評価も2冊ともすごく高いですよね。
ありがとうございます。1冊目では私が投資家として成長してきた過程をたどり、優待投資の考え方、バリュー投資の基本となるPERとPBRの考え方、そして昇格関連の知識を事例とともに紹介しています。1冊目の評判はかなりよかったですが、前述のとおり「昇格はおまけ」という発想を理解しないと、市場環境の変化に対応できないように思います。
2冊目は1冊目の深掘りです。先ほどから「優待面、資産面、収益面、昇格面から魅力を総合的に考える」と言っていますが、具体的にどういうことなのかをできるだけ体系立てて説明できるように作成しました。また、10年以上投資の経験を積んだ中で、誰も教えてくれなかったけど知っておくと重要じゃないかという知識をたくさん散りばめて紹介しています。その重要性は正直初心者には伝わらないかもしれません。色々な人の感想を探して読んでいますが、すでに色々勉強している中級者の方には結構伝わっている所があり「かゆい所に手が届く」ような本だという感想を頂いております。私自身がそこを狙って作成したものですので、ちゃんと伝わっている人もいるんだなぁと感じました。
-ご著書以外におすすめの投資書籍はありますか?
洋書の翻訳本には良いことを言っている本がたくさんありますが、必要ない話がたくさん含まれていて重いという傾向を感じます。みきまるさんという方のブログでたくさんの本の書評や大事な点のピックアップが行われているので、試しにみきまるさんのブログの書評から読んでみると入り口としては面白いと思います。私自身はさわかみファンドの澤上篤人さんの本は以前にほとんど読みました。理屈と現実とのギャップはありますが、長期投資に対する大きな考え方を育むうえでは大いに役に立ちました。
正直誰にとっても役に立つ本というのはなかなかないので、「基礎知識をしっかり身につける本」「理論と現実のギャップをどう埋めるかを色々考えるための本」を自分自身で探していただきたいですね。大事なのは、投資というのは答えが1つではないことをしっかり自覚することではないでしょうか。PERやPBRが何倍だったら絶対買いとか、そんな単純な方程式のようなものではないですから。
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