マネックス・アクティビスト・ファンド(愛称:日本の未来)は、企業と一緒になって取り巻く環境を改善し、株式市場からの評価を高めていくことを目指した「企業の価値を創り出すファンド」です。
このアクティビストファンドや日本の株式投資について、マネックス証券取締役会長の松本大と個人投資家のみなさまとの座談会を行いました。松本大がマネックス・アクティビスト・ファンドにかける想いや日本の株式市場の未来について語ります。
(本記事は2020年8月に掲載したモーニングスターとのタイアップ企画を一部加工、編集して掲載しています)
個人投資家(5名)
投資歴12年 フリーランス エス氏
投資歴15年 フリーランス ケイ氏
投資歴29年 投信ブロガー エル氏
投資歴6年 投資ブロガー パーサモウニアス氏
投資歴7年 投資ブロガー ザリガニ氏
「アクティビスト」が企業を変えた具体的な事例
エル氏:
「アクティビスト」というと昔話題になった村上ファンドのように、あまり良くないイメージがあります。ファンドの説明書には、企業と対話して企業を良くすると書いてありますが、どのくらい良くなっていくのかが気になっています。私は株式投資をかれこれ30年くらいやっていますが、確かに昔に比べると企業の状況は良くなっているように思えるのですが、市場の評価は低いままだと感じます。株主からの提案だけで、実際に企業がどれほど変わっていくのでしょうか? 具体的なアクティビストの活動の結果として、市場の評価が変わった事例はありますか?
松本:
たとえば、オリンパスは、バリューアクトというファンドが2年前に株主になって、その後1年半くらいの間に、株価は2倍に上がりました。このバリューアクトというファンドが有名なのは、アメリカでアドビに対して、もともとはソフトウエアのパッケージで売っていたものをサブスクリプションモデルにした方がよいのではないかと提案したら、アドビがその意見を入れて売り方を変えたのです。それから、アドビは世界を代表する企業になりました。典型的な、社外の株主の意見で戦略を変えたら大成功した例です。
オリンパスは、最近もデジタルカメラ部門を売るという方針が出てきていますが、バリューアクトが株主になってから様々な動きが出てきています。また、ソフトバンクについても、エリオット・マネジメントという世界を代表するアクティビスト・ファンドが株主になって、アリババの株式を売りに出したり、アメリカの携帯会社やアームの株式を売りに出すのではないかといわれています。ソフトバンクは、いろいろな株式を持っているからすごいと孫さんは言っているのですが、株式の時価総額は下がっていました。それが、エリオットが入って刺激したことで、実際に株式を売ることを始めたら、ぐっと株価も上がってきています。このような例はいくらでもあります。
世界の投資家としてアメリカのウォーレン・バフェットさんは有名ですが、実際にはバフェットさんよりも、カール・アイカーンさんらアクティビストの生涯成績の方がはるかに良い成績になっています。
ファンドの運用を担うスペシャリストは?
ケイ氏:
そもそも会社に意見を聞いてもらうには、それなりの株式を持たないと聞く耳を持ってもらえないと思うのです。どのくらいのお金が集まるとお考えですか?
松本:
夢は「1兆円ファンド」です。いずれ、数の論理でも存在感のあるファンドにいずれなっていきたいと思うのですが、その前の段階でも、経営者に聞く耳を持ってもらえると思っています。2つの理由があります。海外のファンドが出張ベースで日本にやってきて、「お金が余っているのだから配当金を増やせ」とかいうのではなく、日本にいる我々が、企業の研究をした上で、企業の置かれている行政の枠組みなども理解した上で経営者と話をしていくのです。ちゃんとした会話・対話をして提案していけば、耳をふさぐのではなく、ちゃんと話を聞いてくれると思います。
もうひとつは、個人投資家の方の声を吸い上げる仕組みをファンドが持っているので、実際の日本の企業のサービスを利用している皆様、企業と近くにいる皆さんが意見を企業に伝えるという要素が加わると、日本の企業経営者には響くと思います。今までのアクティビスト・ファンドは、隠れているファンドが多いのですが、我々はメッセージや考えを世の中に発信していきます。数の論理だけでなくともしっかり話を聞いてくれると思います。
ケイ氏:
アクティビストが会話することで、変えていけるような企業は、日本にどのくらいの数があるのでしょう?
松本:
たとえば、日本に親子上場がよくあるのですが、グローバルには親子上場はないのです。親子で上場している子会社の数が300社弱、時価総額で50兆円弱あります。日本の上場企業のうち8%くらいは、親子上場なのです。すべての親子上場が悪いとは言いませんが、子会社の利益が子会社の一般株主に配分されるのではなく親会社に吸い上げられているケースとか、子会社の価値が高くて、親会社の時価総額から子会社の株式持ち分の時価総額を引くと、親会社の時価総額がマイナスになってしまうケースとか、いろいろなひずみがあります。これだけがエンゲージメントのテーマではないのですが、親子上場を一つとっても、これほどあるように、さまざまな視点で見ていくと、日本の市場は宝の山に見えてきます。
ザリガニ氏:
声を上げるという点では、松本さんたちが意見していくということですが、実際に経験のない業界に対して、どれだけ妥当な提案をし、それが経営者や株主にとってウィンウィンの提案になるといえるのでしょうか?
松本:
主な運用にかかわるチームは6名います。社長の平野太郎は、住友銀行の出身で、その後、マッキンゼーで経営コンサルの仕事をした後で、アライアンス・バーンスタインという運用会社で日本株の運用を16年くらいやった実績のある人間です。すごいデープなボトムアップ分析で、実際に工場や海外の拠点まで見てくるとか、もともとマッキンゼーでコンサルをやっていますので、コンサル的な感じで分析しています。
その下にアナリストとして野村證券やスパークスでアクティビスト・ファンドのアナリストをしてきた人間と、旧村上ファンドでアクティビストとして分析をしてきた人間がいます。また、ヘッジファンドに20年以上いて、マーケットの流動性などを知り尽くしている人間がいて、割安度の判断や流動性を配慮したポートフォリオの構築、リスク管理や効率的なトレーディング方法などで運用をサポートします。また、小野塚惠美は、ゴールドマンサックスから来た人間で、日本のESGやスチュワードシップコード、コーポレートガバナンスを引っ張ってきた第一人者です。このようなチームが企業を分析し、対話をしていきます。常にその会社の事業について、その会社より、我々の方が分かっているということはないと思います。だからこそ、我々にできる話があります。世の中がサッカーからラグビーに変わっていこうとする中で、ずっと、サッカーをやっている人に、今からはラグビーですよという話をしていくことが我々の役割だと思っています。(続く)
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