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米中間選挙結果&改めてのシナリオ

米中間選挙結果&改めてのシナリオ

11月6日(火)、米中間選挙が実施されました。臨時レポートの執筆者である、江守氏、広瀬氏、志摩氏より、今回の米中間選挙の結果と、それを踏まえた今後のシナリオについて教えていただきました。

江守 哲(えもり てつ)氏

エモリキャピタルマネジメント株式会社 代表取締役

江守 哲 氏

慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。1996年に英国住友商事(現欧州住友商事)に出向しロンドンに駐在。その後、Metal lgesellschaftLtd.、三井物産フューチャーズを経て、2007年7月にアストマックス入社。同社でファンドマネージャーに就任。その後2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立。ヘッジファンドを中心とした資産運用や株式・為替・債券・コモディティ市場の情報提供などを事業として展開。

広瀬 隆雄 氏

コンテクスチュアル・インベストメンツ マネージング・ディレクター

広瀬 隆雄 氏

三洋証券、S.Gウォーバーグ証券(現UBS証券)、ハンブレクト&クィスト証券(現J.P.モルガン証券)を経て、2003年、投資顧問会社・コンテクスチュアル・インベストメンツLLCを設立。マネージング・ディレクターとして活躍している。米国企業の動向に精通。米国カリフォルニア州在住。

志摩 力男氏

元ヘッジファンドマネージャー

志摩 力男 氏

慶應義塾大学経済学部卒。1988年~1995年ゴールドマン・サックス証券会社、2006年~2008年ドイツ証券等大手金融機関にてプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。

今回米中間選挙の結果は......?

上院:共和党が過半数を獲得 下院:民主党が過半数を獲得

江守氏

米中間選挙は、事前の予想通りに共和党が上院の過半数を維持し、下院は民主党が多数派を奪回しました。トランプ政権への信認が確認されたことで、米国株は上昇に転じるでしょう。「ねじれ議会」を懸念する声もあります。トランプ政権が目指していた個人所得減税の恒久化など「減税第2弾」の実現可能性が消滅しましたが、逆に一段の財政悪化への懸念が後退し、米長期金利の上昇が一服し、これが株価にプラス材料になる可能性があります。これまでの米国株高は、選挙公約を実行してきたトランプ政権の成果といえます。ただし、最近は米中貿易戦争への懸念で株価が大きく下落しました。国内政治が停滞する可能性がある中、2020年の大統領選に向けて成果を上げたいトランプ大統領は、11月末の米中首脳会談で制裁関税の修正を行い、産業界の懸念払しょくに動く可能性があります。そうなれば、これまで米国株高を演出してきた「GAFA」「FANG」などの主力ハイテク株から、中国関連銘柄が多いダウ構成銘柄に物色がシフトする可能性があります。1946年以降の米中間選挙後のS&P500は、過去全てのケースで上昇しており、平均騰落率は14.5%に上ります。今後の米国株は乱高下が続きそうですが、堅調なパフォーマンスが期待できそうです。

広瀬氏

このレポートのまとめ

  • 下馬評通り下院は民主党、上院は共和党が勝利
  • 既に織り込み済みの結果なので相場は大きく動かない
  • 大票田のテキサス、フロリダで共和党が善戦
  • 中西部の州知事選挙では民主党が勝利する場面も
  • 米中貿易戦争に製造業拠点のある州の有権者がNOを突き付けた
  • 中間選挙の年は10月が大底になることが多い

中間選挙の結果

11月6日に米国で実施され即日開票された中間選挙の結果下院は民主党、上院は共和党が勝ちました。これは下馬評通りであり、ノー・サプライズです。このシナリオはすでに相場に織り込み済みであることからマーケットは大きく動かないと思います。

テキサス、フロリダで共和党が善戦

もう少し細かく選挙の結果を見ると、例えばテキサス州の上院議員選挙では共和党のテッド・クルーズ候補が勝利しました。テキサス州は2年後の大統領選挙でカギを握る州のひとつであり、そこで共和党が勝利したことはトランプ大統領にとって幸先が良いです。

加えてフロリダ州の州知事選挙ではトランプ大統領の支持者であるロン・デサンティスが「オバマの再来」と言われた民主党のアンドリュー・ギラム候補を破りました。フロリダ州はその時の風向きによってどちらにでもなびく「スイング・ステート」と呼ばれています。そのフロリダ州が大きく民主党へと傾いていないこともトランプ大統領としてはホッと胸を撫で下ろす展開だったと思います。

州知事選挙では中西部でトランプに「黄信号」

州知事選挙では中西部のイリノイ州、オハイオ州、アイオワ州、ミシガン州、ウィスコンシン州、カンザス州が注目されました。これらの州は先の大統領選挙でトランプが善戦し、「流れが変わった」州ですので、それらの州が引続きトランプを支持しているのか今回の州知事選が「踏絵」になると言われているのです。

これを書いている時点でイリノイ州、ミシガン州、カンザス州で民主党の州知事が誕生しています。そのことはテキサス州やフロリダ州などの南部で共和党が善戦したこととは対照的に2年後の大統領選挙に向けて中西部をトランプ大統領が今後固めてゆかなければいけないことを示唆していると思います。これらの州では航空機や自動車などの製造業が盛んであり、米中貿易戦争が州知事選挙の結果に影を落としていると見ることも出来ます。

投資戦略

中間選挙のアノマリーとして「中間選挙の年の10月に相場が大底をつける」という言い伝えがあります。事実、1950年以降、中間選挙の年は春先に相場が天井をつけ、秋にかけて平均すると-16.9%相場が下がることが通例となっています。しかし10月頃に大底をつけるとそこから半年間で平均すると+21.7%相場は反発しています。つまり今は積極的なスタンスで臨むべき局面なのです。

志摩氏

米中間選挙の結果を受けて、為替市場はどのように反応するか

 米中間選挙の結果は、ほぼ事前予想通りの内容。上院は共和党が過半数を維持しましたが、下院は民主党が奪還しました。下院における民主党の勝利が大規模なものであれば、明確なトランプ政策への不支持と解釈できるところでしたが、そこまでには至ってないでしょう。よって、トランプ大統領はこれまでの自らの政策を続けていくものと思われます。

両院が共和党で支配された場合、より大規模なインフラ投資や中間層への減税がテーマとなったでしょう。すなわち、大きめの財政支出となります。その結果、米長期金利は上昇、ドル高という反応になったと思われます。しかし、下院が民主党に支配されたので、議会の承認が必要な政策は止まります。民主党もインフラ投資には積極的ですが、2020年の大統領選挙を控え、トランプ大統領に花を持たせる形での妥協は絶対にできないでしょう。よって、インフラ投資も進むかどうかわかりません。基本的に大統領権限の大きな、貿易、外交、防衛を除くと、政策は膠着するものと思われます。債務上限問題も、少し揉めることになるでしょう。

政策は膠着しますが、金融市場はこれをむしろ好感するかもしれません。懸案であった法人税減税等は昨年既に実現しました。少し危なっかしいトランプ大統領を民主党が抑える役割を果たすことが期待されます。

財政支出が控えめになると思われることから、米長期金利は安定した推移となりそうです。そして、株式市場はそれを好感するでしょう。10月は株式市場にとって厳しい展開でしたが、今月以降は少し「リスクオン」的な展開になるかもしれません。

為替市場は、選挙結果が予想通りということで膠着する面もありますが、米国株が反発していけば、少し「リスクオン」的にもなりそうです。選挙前にクロス円が大きく反発しましたが、選挙前のポジション調整に加え、選挙後の「リスクオン」を少し先取りしていたかもしれません。リスクオンとなると、ドル円の上昇、クロス円の上昇となります。ただ、米中貿易問題が顕在化してくると、動きは逆方向となります。要は、選挙の結果だけで言えば、ドル円、クロス円の上昇となるのですが、トランプ政権が中国との対決姿勢を強めると、その逆方向の動きとなるので、選挙結果というよりもトランプ政権の姿勢次第です。

まもなく米中首脳会談が開かれます。今の所、良い状況にあるとトランプ大統領は言っていますが、実際にどうなるかはその時になってみないとわかりません。突然、会談が中止となるリスクも当然あります。
また、選挙以外の材料を列挙しますと、もちろん最重要はブレクジット交渉です。これが山場を迎えます。そして、欧州経済が軟化しているという問題もあります。イタリアやドイツの政局も気になります。

結論から言いますと、純粋に選挙結果から類推すると、比較的「リスクオン」的な展開が望めるのですが、他の大きな材料、米中貿易問題、ブレクジット、欧州政局等々が戻ってくるので、その展開次第では「リスクオフ」的な動きも当然ありえるというところでしょう。特に、米中首脳会談に注目です。

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