サイト内の現在位置を表示しています。

FXにおける米中間選挙後のシナリオ

米国中間選挙の見通しと株式市場への影響について

いよいよ米中間選挙の投開票(11月6日(火))が迫ってきました。米中間選挙に備え、過去の選挙時と比べたときの注目点、またパターンごとのシナリオをまとめていただきました。

当レポートの民主党・共和党議席数につきましては執筆者が確認した当時の状況です。他のメディア情報と異なる場合がございますので、あらかじめ、ご了承ください。

元ヘッジファンドマネージャー

志摩 力男 氏

慶應義塾大学経済学部卒。1988年~1995年 ゴールドマン・サックス証券会社、2006年~2008年 ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー(自己勘定トレーダー)を歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。世界各地のヘッジファンドや有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。

サマリー

  • トランプ大統領への信任投票とも言える米中間選挙まで、あと半月あまり。現状、上院および下院ともに共和党が制しており、大統領、上下院ともに共和党が支配するという構図が強い政権の源泉でした。今回、この構図が変わる可能性が濃厚。
  • 世論調査等の予想では、民主党が下院で、共和党が上院で過半数を獲得するという見方がコンセンサス。金融市場参加者も同様の見方をしている模様。しかし、下院における民主党の優位は完全なものではなく、かなりの僅差。
  • 選挙後の政策としては、インフラ整備に注目が集まりそう。上下院共和党というケースの場合、下院民主党/上院共和党というケースよりも、より積極的なインフラ支出プログラムになる可能性はあるが、既に大規模な減税を行っているので、ものすごく大きくはならない。ただ、下院共和党の場合の方が大きな支出になるのは間違いないので、その意味でも、下院共和党勝利の場合、ドル高・金利上昇につながりやすい。
  • 米中間選挙の結果は、政権の貿易政策には影響を与えない。新NAFTA協定(USMCA)の承認は民主党議会の場合は混乱が予想されるが、いずれにせよ承認はされる。共和党の場合は早期の承認になりそう。
  • 下院において民主党が大勝すれば、「トランプ弾劾」という問題が再浮上しそうだが、結局上院の60%が支持しないといけないのでハードルが高すぎる。

注目度が比較的高い2018年米中間選挙

まず下院、上院の現状から。下院は定数435議席。すべてが改選であり、現状共和党235議席、民主党193議席(欠員7)。一方、上院は定数100議席で、共和党51議席、民主党49議席。今回改選されるのは35議席(任期6年で、2年ごとに1/3が改選)、そのうち共和党が9、民主党が26議席。

下院は、現状の世論調査では民主党が過半数を制しそうな勢い。民主党の勢いは上院でも同様ですが、今回は民主党議員が26人も改選を迎え、しかも前回の選挙で風に乗って共和党地盤にも関わらず勝った議員が多い。よって、26人を維持するのも少し難しいかもしれません。

米中間選挙は大統領が所属する政党がほぼ確実に負けるというジンクスがあります。これは南北戦争以来のジンクスで、例外は3回だけ(1934年、1998年、2002年)。1950年以降、大統領側の政党が失う議席数の平均は24議席。仮にジンクス通りに24議席が民主党に加わると、217議席となり(共和党は211議席)、民主党勝利濃厚です。

過去の米中間選挙と比べても、今年の中間選挙は注目度が高いと感じます。前回2014年の時は、その直前に黒田日銀が金融緩和第2弾、いわゆる「バズーカ2」を行い、ドル円は110円前後から120円台に向けて吹っ飛んでいる途中でした。米中間選挙の結果は為替市場にほとんど影響を及ぼさなかったと言えます。その前、2010年はオバマ大統領への信任投票の意味合いもありましたが、2008年リーマンショックの傷が癒えておらず、金融市場は政治というよりも、経済指標に一喜一憂している局面でした。

今回、注目度が高いのは、やはりトランプ大統領誕生の際の「トランプラリー」があまりにも強烈だったからでしょう。同じことが起こるかというと、それはほぼないと思われますが、(上院共和党勝利がほぼ固いとして)下院が共和党勝利となると、今後日程に上ってくるインフラ整備へ投入される金額が大きくなる=財政支出大=ドル高、という連想が働きやすくなります。

選挙結果と為替の動き

為替マーケットの動きは、中間選挙以外のファクターも当然大きいので、結果からくる推測で決まるわけではありませんが、今回は3つのパターンを考えます(下院共和党、上院民主党という組み合わせも当然ありますが、そうなる確率があまりにも低そうに見えるので、今回は除きます。)

(1)上院、下院、ともに共和党が勝利する場合(確率30%)
当然、トランプ大統領への強い支持とみなされ、為替市場はドル高、株は上昇し、債券は金利上昇となるでしょう。ただ、効果は「トランプラリー」の時と違い、動きは比較的短命に終わるかもしれません。トランプ政権が決してドル高を好んでいるわけではないこと、大統領がFRBの政策に最近しつこく異を唱え始めているため、115円を超えて行くのは難しいでしょう。

(2)上院は共和党、下院は民主党が勝利する場合(確率65%)
ほぼ、折り込み通りの結果。あまり動かない可能性が高そう。ただ、民主党が下院で大勝した場合、少しだけ「弾劾」という文字がちらつき始めるので、少しドル売りになります。

(3)上院、下院、ともに民主党が勝利する場合(確率5%)
最初のリアクションはドル売りでしょう。トランプ路線への明確な反対であり、2020年大統領選におけるトランプ再戦に黄色信号です。過度な財政支出への批判という解釈もできます。株価が崩れ、債券が急騰(金利低下)しそうです。マーケットは全体的にリスクオフとなり、ドルは売られるでしょう。

情報提供に関するご留意事項

本情報は、マネックス証券株式会社(以下「当社」といいます)が信頼できると考える情報源から提供されたものですが、当社はその正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。本情報は有価証券やデリバティブ取引等の価値についての判断の基準を示す目的で提供したものではなく、有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。本情報に含まれる過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
本情報は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。
当社は本情報の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。なお、本情報は当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。