青木大和

いくつになっても
夢を持てれば日常は動き出す青木大和/実業家・パラアルペンスキーヤー

会社経営とアスリート、
どちらもやり切る覚悟

モビリティ事業を手掛けるEXx Incの社長であり、障がい者アルペンスキーの強化選手という、二つの顔を持つ青木大和さん。電動キックボードを事業の柱として、誰もが自由に移動できる未来を思い描き、自身ではパラリンピックでの金メダルを目指している。

「僕は、21歳で脊髄を損傷したんですが、一番不便なのが、尿意を感じないことなんです。いつ尿意が襲ってくるかわからないので、外を出歩くのが億劫になったんですが、LAに出張した時に、街に電動キックボードが置かれているのを見て、これだったらすぐにトイレに行けて、好きだった海外旅行も諦めなくて済むなと思ったんです。長時間歩けないご高齢の方も、電動キックボードがあれば、いつもとは違う景色に出合えます。身体的障害や心理的障害によって限られた生活圏から、一歩踏み出すサービスにしていきたいですね」

日曜日を除く毎朝、2~3時間ほどトレーニングを行ってから仕事に入るのがルーティン。トレーニング時間を固定させてからは、経営者とアスリートのスイッチが切り替えやすくなったという。それでも、時間的にも肉体的にも過酷であることは想像に難くない。しかし、青木さんは、二つの顔を持つことで得られるメリットを大きく感じている。

「仕事で知り合った社長さんがスキーのスポンサーになってくれたり、スキー場のリフトに乗っている時に話した方から仕事をいただいたり、会社経営とスキーが交錯しないと出会えなかった人が多いんです。会社のメンバーには、僕がスキーをすることで負担を掛けているのでは? という心配もありますが、二刀流だからこそ還元できたことが大きいので、みんなも応援してくれています。正直、会社とスキーのどちらに軸足を置くか、かなり悩みました。でも、お世話になっている方々から『本気の姿勢は伝わる』と言われ、絶対にどっちつかずになることだけは避けようと決めたんです。どっちもちゃんとやり切る。働くこと、稼ぐこと、自分の欲求が満たされていること。この3つに丸がつけられる今の状態に、二兎を追う意義を感じられるし、前に進めている実感があります」

※株式会社EXxは、産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」を用いた電動キックボードの公道での実証実験の計画認定を受けており、特定エリアにおいてヘルメットの着用が任意化されています。

何歳だって夢を追いかけることは
恥ずかしくない

がむしゃらに二刀流を貫く青木さんの姿は、とある30代のスポンサーの心も動かす。学生時代の夢だった弁護士を目指して、ロースクールに通い始めたという報告を受けた。夢を追う姿勢が誰かの背中を押す、またとない喜びとなったそうだ。

「夢を追えるのは若者だけという空気を感じますが、何歳になっても挑戦できるし、夢を追うことは恥ずかしことじゃないと思うんです。自分主導でプロジェクトを立ち上げて、いろんな人の声を集めながら、いくつになっても夢を追うことのできる空気感をムーブメントとして、日本だけでなく世界に広げていきたいですね」

〝夢〟は青木さんの人生にとって大切なキーワードだ。

「ある日突然、事故で体が動かなくなって、それから2年くらいは普通の生活に戻りたい、普通の人でありたいうという想いばかりでした。でも、究極的には〝普通〟ってたぶんない。自分自身が与えられた環境の中でどうなっていきたいかが大事なのだと気づいたんです。ハンディキャップを背負ったことで、自分の選択肢は狭まったけど、その中で探って探って出合えたのが、今の夢。起業するために18歳で諦めたアルペンスキーを、27歳になった自分が本場のヨーロッパで世界のトップ選手に混じって滑っている未来なんて、まったく想像できませんでしたよ。どこまで夢に近づけるのか、自分自身が楽しみです」

投資をきっかけに
良い人間関係が作れている

目標は金メダルと公言する青木さんにとって、「お金は夢を実現するための大切なピースのひとつ」だ。パラアルペンスキーで世界を目指すには、最低でも年間500~600万円かかる。

「活動資金とある程度の生活費が担保されないと、競技を継続すること自体が難しいので、お金についてはシビアに考えていますね」

もともと株式投資をしていた父親の存在もあって、株式投資との距離は近かった。高校時代から株主優待や配当の概念、株価の調べ方などを教わってきたという。二十歳前後から、自分も資産運用を始め、現在は、株式投資から、インデックス投資、ビットコインまで幅広く分散投資を行っている。資産運用を続けてきて得た知識は、意外なところで役に立った。ナショナルチームに所属する先輩アスリートたちから資産運用について聞かれ、教えたところ、同じ競技者同士では聞きにくいスキーの技術的なアドバイスをもらいやすくなったのだ。

「僕からは、ポートフォリオや分散投資によるリスクヘッジについて話して、最後には『投資は自己判断』ということもきちんと伝えたら、みなさん運用を始めていて、会うたびに結果を報告してくれます。資産運用のことで頼ってもらえるおかげで、僕は先輩たちにスキーの技術的なアドバイスを聞きやすくなりましたね。おかげで良い関係を作らせてもらっています」

青木大和
青木大和

1994年3月9日生まれ、東京都出身。起業家。パラスキーヤー(日本代表強化指定選手)。EXx Inc 代表。 -Mobility for Possibility- を掲げ、社会の公器となる事業をつくるモビリティスタートアップを経営。不動産ではなく可動産を掲げ、動く滞在施設である『BUSHOUSE』や電動キックボードを用いた短距離移動ソリューションを提供するサービス『ema』を手がける。一方で、 2022年北京冬季パラリンピックへの出場を目指すアルペンスキーヤーでもある。

https://www.exx.co.jp
@aokiyamato