小野りりあん
2022.9.28

市民運動を通して
社会の仕組みごと変えていきたい小野りりあん/気候活動家

14歳からモデルとして活躍してきた小野りりあんさん。2015年、気候変動対策強化を求め、世界各地で行われた気候マーチに東京で参加したことを機に、本格的に気候変動に関心を寄せるようになった。特にここ数年は、温暖化の影響と言われる、アマゾン熱帯雨林火災やオーストラリア森林火災のニュースに触れ、「気候変動の問題は待ったなし」と危機感を覚え、メインの活動をモデル業から「気候活動家」へシフト。多くの仲間を増やすために、環境問題に関する情報を積極的に発信している。

「モデルの仕事は最低限に抑えて、気候変動に関する活動をすることは勇気がいりました。でも、すべては地球があってこそ。今、やらないと後悔すると思ったんです。世界中で声を上げる本気の若者たちも多く、私自身が立ち上がる勇気をもらえました」

2019年からは、環境への学びを深める旅へ。約100日間で10か国を巡ったが、その2/3は、飛行機を使わず、環境への負荷の低い移動手段を選んだ。宿泊先は、SNSやCouch Surfing で“climate change”などのキーワードで検索して連絡。科学者にも会えたという。
※ インターネット上の無料国際ホスピタリティー・コミュニティーであり、現在世界で最も大きなホスピタリティー・エクスチェンジ・ネットワーク。

「陸と海を渡って移動していると、地球って意外と小さいんだなって気づきました。それだけ地球と私が近い距離で旅できましたね」

旅中、スペイン・マドリードで開催されたCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)に参加した。

「こんなにも熱心に人生をかけて、気候変動に取り組む人たちを見て、希望を感じたと同時に、それでも解決しない、問題の困難さも感じました。だからといって、地球が“ヤバい”と気づいているのに、何もせずにはいられませんでした」

社会を動かすパワーを生むコミュニティ作り

旅でエネルギーを溜めたものの、帰国と共にコロナ禍に見舞われ、移動を制限されるなど思ったような活動ができなかったと振り返る。それでも、一軒家を借りてシェアハウス「アクティビストハウス」を始めるなど積極的に動く。アクティビストハウスには、彼女が活動で大切にしている、仲間との繋がりを深める目的があった。

「一部の人が資源を搾取して利益を得る構造が、自然を失わせ、温暖化を押し進めてしまっています。それは一例で、気候変動はさまざまな社会問題と関連があるので、違うテーマの活動家も集まれたらと考えました。人はそれぞれ異なる価値観を持っていて、互いに学ぶことが大事ですし、対立して分断してしまえば、社会を動かす大きなパワーは絶対に生まれません。だから、繋がり合えるコミュニケーションはすごく大事だと思っています。また、環境に関心があっても、孤立して動けない人もいると思うんです。そうした人が、市民運動に足を踏み入れられるプラットフォームを今後も作っていけたら」

繋がりを増やしながらも、「社会の仕組みごと変えなければ、加速度的に進む温暖化を止めることはできない」ともどかしい想いも抱えている。

「個人や地域の取り組みによって、いい変化も起きているんですが、そのスピード以上の速度で地球が壊れていき、もう手遅れなんじゃないかと落ち込むんです。新しい挑戦には失敗がつきものですし、何かを変えようとすれば反発も起きます。そうした中で、自分が大切だと思うことをやり続けるために、メンタルヘルスを保っていかないと」

エシカル投資は今後、さらにより良いものに

人との繋がりを大事にする小野さんにとって、人との繋がりは、お金以上の価値を持つという。

「今は、モデルをちょこちょこやりながら、貯金でやりくりしてるんですけど、貯金が尽きても、ひとりになることはないだろうなって。金銭面に限らずだけれど、困った時に助け合える関係性を築くことの方が大事に感じています。なので、お金にはまったく詳しくなくて」と苦笑するが、気候活動家らしく、エシカル投資への関心はとても高い。

エシカル投資とは、環境に配慮する、動物実験をしない、軍需産業に関わらないなど、倫理的・道徳的な課題に積極的に取り組む企業を投資対象とする投資のこと。例えば、投資家が、投資先を決めるとき、J-クレジット制度という温室効果ガスの排出削減量や吸収量を売買できる国の認証を受けているかなどが、ひとつの判断材料になる。

「私からみると、“クレジット”する基準がヨーロッパと比べて低いと思います。せっかくある制度なので、もっと注目されれば、クオリティが上がって、よりよいものになっていくのではないでしょうか」

実は、8年ほど環境問題に取り組むNGOに寄付を続けてきたが、最近やめたという。

「スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューのリサーチでNGOに寄付をするよりも、市民による気候アクション団体に寄付する方が圧倒的にCO2削減に効果的だという結果が出たんです。環境について何か始めたいと思った時、有名なNGOへの寄付はいい入口ではありますが、よりインパクトのある市民運動に“寄付”する選択肢も考えてもらえると嬉しいですね」

小野りりあん
小野りりあん

1989年八戸生まれ札幌育ち。『Spiral Club』、『Green TEA ~Team Environmental Activists』を共同設立。COP25マドリードへ飛行機に乗らずして目指す旅の実践から、Instagramにて気候変動情報&アクションを発信。LA在住の俳優TAOと 『Emerald Practices』のPodcast配信。気候危機対策を求める〈平和的ハンガーストライキを含むアクション〉を2021年4月に友人eriと実践。

@_lillianono_

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