マネックス証券の米国株取引では、2019年7月22日(月)現地約定分より最低取引手数料(税抜)を0米ドル(無料)に引き下げしたことで、少額での投資がより低コストで行えるようになりました。
今回は米国ETFの運用会社として世界最大規模のバンガードに高配当と増配に着目したETF(上場投資信託)についてご紹介いただきました。ETFの運用コストである経費率を抑えながら、安定的な利回りを目指すETFはどのようなものか、ご理解いただける内容となっております。
バンガードについて
バンガードは、米国ペンシルベニア州に本拠を置く世界最大級(※)の運用会社です。「インデックス・ファンドの父」として知られる創業者のジョン・ボーグル(1929年~2019年)は1975年にバンガードを創立し、1976年に現在S&P 500インデックス・ファンドとして多くの人に知られる世界初のインデックス・ファンド「ファースト・インデックス・インベストメント・トラスト」を設定しました。世界19拠点で約17,000人の社員が、ボーグルが残した遺産を継承しながら投資家と向き合っています。
バンガードは現在約600兆円の運用資産残高(AUM)を誇り、約2,000万人もの世界中の投資家に投資商品を提供しています。マネックス証券の投資家にも67本のETFを提供しており、今回はその中の「配当」に着目した米国籍ETF 2本についてご紹介します。
(※)2019年1月末時点の世界のオープンエンド・ファンド(投資信託、ETFを含む。ファンド・オブ・ファンズ、ベビーファンドによる重複は除く)の運用資産額の市場シェア。
出所:Morningstar Direct
「配当」に着目したバンガードの米国株ETF:「VYM」と「VIG」
ETFの中にも、「配当」に注目した商品があります。バンガードのETFを用いることで、配当に注目した低コスト投資を実現することができます。また、ETFの分配金は保有銘柄の配当と(実現)値上がり益をその主な源泉とするものです。オプションの売却や過去の(未実現の)値上がり益を利用して見た目上高い分配金を作り出している一部の日本の高分配投資信託とは異なります。
ETFを用いて、低コストで「配当株投資」をするためのツールとして、配当に注目した2つのバンガードETF:「VYM」(バンガード・米国高配当株式ETF)と「VIG」(バンガード・米国増配株式ETF)をご紹介します。
【VYM バンガード・米国高配当株式ETF】
<ベンチマーク&投資アプローチ >
バンガード・米国高配当株式ETF(以下:VYM)は、FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックスのパフォーマンスへの連動を目指すETFです。予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄から構成されていて、約400銘柄の米国株に投資しています。2019年5月末時点でのETF純資産総額は、約2.5兆円となっています(1米ドル=108円換算)。
2009年5月に1万ドルを投資した仮定の、過去10年間のパフォーマンスの推移
(純資産価額のトータルリターンで計算)
(出所:バンガード作成)
高配当銘柄に幅広く分散、高い分配金利回りを実現
高配当銘柄をうたったファンドやETFの中には、かなり絞られた銘柄のみに投資しているものもあります。一方で、VYMは、保有している上位10銘柄の割合は27%程度です。一番ウェイトが高いジョンソン&ジョンソンでも、3.7%となっています。銘柄を絞りすぎることなく、「高配当」をめざしつつも幅広い分散投資を実現しています。
この考え方は、先日他界したバンガードの創業者ジョン・ボーグルがよく話していた「長期投資」と「分散投資」を、高配当ETFでも実現している稀有な商品だと言えるかもしれません。
また、上位の銘柄の多くは、米国だけでなく、グローバルなビジネスから収益を上げている企業なので、長期的にVYMに投資をすることにより、今後、投資先企業のビジネスの成長とともに、その配当の恩恵を享受できる商品だとも考えられます。
VYMの構成銘柄と比率(上位10銘柄)
ティッカー | 名称 | ファンド構成比 |
---|---|---|
JNJ | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 3.7% |
JPM | ジェイピー・モルガン・チェース | 3.6% |
XOM | エクソン・モービル | 3.1% |
PG | プロクター・アンド・ギャンブル | 2.7% |
PFE | ファイザー | 2.5% |
CSCO | シスコシステムズ | 2.4% |
VZ | ベライゾン・コミュニケーション | 2.3% |
T | エーティー・アンド・ティー | 2.3% |
CVX | シェブロン | 2.2% |
MRK | メルク | 2.1% |
(出所:バンガード作成、2019年5月末時点)
継続的に高い分配金利回り
幅広く高配当銘柄に分散投資を行うことで、S&P500と過去の配当利回りと比較して、VYMは安定的に高い分配金利回りを実現しています。
過去10年間のVYMの分配金利回りとS&P500の配当利回りの推移(%)
(出所:バンガード作成)
再び注目を集める配当株投資を低コストで
足元、米国の利下げが予想される中、世界の投資家による「配当」株式への投資が再び注目されてきています。バンガードが運用するVYMは、高配当株ETFとして、運用開始以来、継続的に経費率を下げてきており、0.06%という経費率(年率)は、米国の配当株式関連のETFの中では、現在最も低くなっています。
VYMの過去7年間の経費率(年率)の推移(%)
(出所:バンガード作成)
【VIG バンガード・米国増配株式ETF】
<ベンチマーク&投資アプローチ >
バンガード・米国増配株式ETF (以下:VIG)は、NASDAQ USディビデンド・アチーバーズ・セレクト・インデックスのパフォーマンスへの連動を目指すETFです。10年以上連続して増配の実績を持つ米国株式で構成されています。
大型株の中でも長期間にわたる増配の実績を持つ銘柄に重点を置いており、投資先の顔ぶれをみてみると、米国に上場している世界を代表する優良企業が多くなっています。高配当ではなく、「増配」に注目するので、優良企業且つ今後も成長を期待できる潜在力のある企業群から成るETFです。2019年5月末時点でのETF純資産総額は、約3兆6千億円です(1米ドル=108円換算)。
2009年5月に1万ドルを投資した仮定の、過去10年間のパフォーマンスの推移
(純資産価額のトータルリターンで計算)
(出所:バンガード作成)
長期にわたって配当を増やし続けてきた優良企業
保有銘柄の上位をみてみると、継続して増配してきた実績を持つ、マイクロソフト、ビザ、ウォルマート等、米国に上場している世界を代表する優良企業が目立ちます。
VIGの構成銘柄と比率(上位10銘柄)
ティッカー | 名称 | ファンド構成比 |
---|---|---|
MSFT | マイクロソフト | 4.4% |
V | ビザ クラスA | 4.3% |
PG | プロクター・アンド・ギャンブル | 4.2% |
WMT | ウォルマート | 4.1% |
JNJ | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 3.8% |
CMCSA | コムキャスト クラスA | 3.7% |
MCD | マクドナルド | 3.0% |
ABT | アボット・ラボラトリーズ | 2.6% |
MDT | メドトロニック | 2.5% |
UNP | ユニオン・パシフィック | 2.4% |
(出所:バンガード作成、2019年5月末時点)
また、業種別にみるとVIGは、資本財、消費者サービス、ヘルスケアが上位を占めています。比較的収益が安定した業種が多いだけではなく、このセクターには継続的に配当を増やしてきた企業が多い傾向があります。
2006年に運用を開始したVIGですが、その後、リーマンショックに端を発した世界金融危機や、過去数年間の好調な株式相場を経験しつつ、長期に安定的なリターンを実現してきました。2018年秋から株式市場の変動が高まっている感もありますが、連続増配を実現してきている企業群への投資は安定したリターンを狙える可能性が高いという考え方から、多くの投資家の注目が再び集まっています。
VIGのセクター比率
セクター | 比率 |
---|---|
資本財 | 27.0% |
消費サービス | 20.1% |
ヘルスケア | 12.1% |
金融 | 11.8% |
消費財 | 10.8% |
テクノロジー | 8.4% |
公益 | 5.9% |
素材 | 3.8% |
電気通信 | 0.1% |
(出所:バンガード作成、2019年5月末時点)
連続増配株式への投資を低コストで
株式市場の変動率が高まる中で、安定して配当を継続的に増やしてきた企業にも注目が集まりつつあります。バンガードが運用するVIGは、連続増配ETFとして、運用開始以来、継続的に経費率を下げてきており、米国の増配関連ETFの中では、現在、最も低くなっています。
VIGの過去7年間の経費率(年率)引き下げ推移(%)
(出所:バンガード作成)
「配当」ETFの長期的価値と持続性
本稿でご紹介した2つのETFは、高配当または増配銘柄に幅広く分散投資を行って、リーマンショックのような大荒れの株式相場も乗り越えて継続的に投資家に分配金を出してきたETFであり、長期目線での投資を検討されている投資家にも向くETFであると考えられます。
2018年末以降、株式市場の変動が高まり、米国の金利が低下してきている環境の中では、これらの配当に注目したETFの魅力は高まってきているのではないでしょうか。
米国ETF関連情報
長期に賢く分散投資!おすすめの米国ETF
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