金(ゴールド)価格は円建てで史上最高値を更新し、米ドル建てでも最高値近辺まで上昇しています。本コンテンツではNY在住トレーダーによる金価格の見通しや金をポートフォリオに組み入れるヘッジ効果などをご紹介します。
史上最高値更新を窺う金価格
円ベースで史上最高値を更新した金(ゴールド)価格ですが、米ドル建ての金価格も史上最高値更新を窺っています。金融システム不安や米国の景気減速懸念から安全資産とされる金に資金が流入してドル建ての金価格が上昇したことが金価格上昇の要因と考えられます。
出所:Bloombergデータよりマネックス証券作成
危機に強くヘッジ効果が見込める金
以下のグラフの通り1987年のブラックマンデーや2008年のリーマン・ショック時など、株式市場が危機に瀕した際に強さを発揮してきたのが金(ゴールド)の特徴です。金をポートフォリオに組み込むことで、ヘッジ効果を期待できそうです。
出所:Bloombergデータよりマネックス証券作成
出所:Bloombergデータよりマネックス証券作成
直近2年間の変動要因を振り返り
直近2年間の金(ゴールド)の値動きとその変動要因を振り返ります。2021年5月以降の金価格のチャートをご覧ください。
出所:Bloombergデータよりマネックス証券作成
- ① 2021/06-12 米国の量的緩和縮小
2021年6月のFOMCでは市場予想に反して利上げ実施時期の前倒しが示唆された。11月には量的緩和縮小、12月には縮小ペースの加速が決定され、金利上昇を嫌気した金相場はもみ合い。 - ② 2022/02以降 ロシアのウクライナ侵攻
地政学リスクの高まりを受けて安全資産とされる金の価格が高騰。 - ③ 2022/03-09 米国の政策金利引き上げ
2022年3月以降米FRB高官のタカ派発言が相次ぎ、4月にはハト派で知られるブレイナード理事も量的引き締めを示唆。5月のFOMCでは実際に政策金利の引き上げと量的引き締めの開始時期が示され、6月には約28年ぶりの大幅利上げを発表。
その後もFOMCでは継続的に利上げが実施される。大幅な金利上昇で相対的な金投資の魅力が薄れて金価格は下落。 - ④ 2022/12-2023/02 米国景気後退への警戒感や米FRB議長のハト派発言
12月雇用統計の平均時給の上昇率縮小や、米ISM非製造業景況指数が50を割り込んだことを受けて、金融引き締め継続による米国の景気後退不安が拡大。2月のFOMC終了後の記者会見でパウエルFRB議長がハト派と捉えられる発言をしたことで、今後の利下げ期待が広がり金相場が上昇。 - ⑤ 2023/03-04 金融システム不安と景気減速懸念
米中堅銀行の破綻を受けて金融システムや金融政策に対する不安が広がり金が買われた。その後破綻銀行の買い手が決定して過度な金融不安が沈静化したことで金相場の上昇は一服するも、米国の景気減速懸念は残り、史上最高値水準で推移。
NY在住コモディティトレーダー・松本 英毅氏の見通しは?
騰勢強める金相場、史上最高値の更新はあるのか
NYの金相場が騰勢を強めています。
きっかけは3月前半に起こった、シリコンバレー・バンク(SVB)の破綻をきっかけとした銀行システム不安の高まりで、市場全体にリスク回避の動きが加速する中で安全資産としての需要が大きく相場を押し上げる格好となりました。
4月13日には、昨年3月につけた史上最高値に迫るまでに上げ幅を拡大、その後はポジション調整の売りに押され、やや値を切り下げていますが、依然として1トロイオンス=2,000ドルの大台近辺で、底堅い値動きが続いています。
ここから改めて騰勢を強め、最高値を更新する展開となるのか、それとも一段と値を切り下げてしまうのか、今後の金相場の行方を予想してみたいと思います。
金相場を動かすのは、金利やドルの動向と安全資産の需要
まずは金相場が、どのような要因によって動いているのかを、整理してみたいと思います。
現時点では金利やドルの値動きといった金融市場の動向と、いわゆる安全資産としての需要の2つによって相場の方向性が決定されているといっても、過言ではないでしょう。
3月に入ってからも上昇局面でも、最初は銀行不安を背景とした安全資産の需要が相場を押し上げましたが、市場が落ち着きを取り戻して以降は、インフレ圧力の後退を受けてFRBの早期利上げ停止観測が高まったことを背景にした、米長期金利の低下やドル安の進行を背景に一段と上げ幅を拡大する展開となりました。
そうした状況下、目先の値動きを考える上で警戒すべきは、やはりインフレ再燃に対する警戒感の高まりと、それを背景とした金利の上昇やドル高の進行でしょう。
4月初めにOPECプラスが日量100万バレルを超える大幅な追加減産を表明したことを受けて原油価格の上昇したことで、ここへきて米国ではインフレ圧力が再び高まる兆しが見え始めています。
4月半ばに発表された3月の消費者物価指数や生産者物価指数が予想を下回る伸びにとどまったことは、金市場に買いを呼び込むきっかけとなりましたが、5月に発表される4月分の物価指数は逆に大きな伸びとなることも十分にあり得るでしょう。
そうなれば金にもポジション整理の売りが膨らむことが予想されます。
インフレがしばらく高止まりする可能性が高いことを考えれば、金相場も不安定な値動きが続くと見ておくべきでしょう。
中長期的にリセッション懸念高まるなら、市場最高値更新も
もっとも中長期的には、史上最高値を超えて一段と値を切り上げるとの見通しを維持したいところです。
その際に相場の大きな下支えとなるのは、もう一つの変動要因、安全資産としての需要となるでしょう。
昨年からFRBが積極的に利上げを進めたことの影響が出てくれば、米景気が一段と減速するのは避けられない状況です。
米経済がリセッションに陥るのかについては意見の分かれるところですが、少なくともリセッションに対する懸念が高まるのは間違いなさそうです。
そうなれば安全資産としての金に対する需要が、一段と相場を押し上げると思われます。
このように金相場は、市場の不安が高まる時に上昇することが多いという特徴を持っています。
株式市場の投資家にとっては、株価の下落に対する最適なヘッジ対象ということができるでしょう。
どのような銘柄でも相場である以上、価格変動のリスクからは逃れることは出来ませんが、それだけに投資対象の選択肢をいくつも持ち合わせておくことは重要なのです。
様々な局面に合わせて、最適な投資手段を選択することが出来るなら、投資の成績も当然のように上がってくるでしょう。
そして今のようにリセッションに対する懸念が高まっている状況下では、金は組み入れるべき投資対象の一つということが出来るのではないでしょうか。
不安定な相場では、参入のタイミングを分散させることでリスクを減らす
とはいえ、金相場は前述したように、しばらくは不安定な値動きが続くことになりそうです。
いずれはリセッションに陥り、市場の不安が高まるのだとしても、それが来月に起こるのか、半年後なのかまで正確に見通すことができません。
もちろん、相場が下がった局面でうまく投資することができれば最高なのですが、投資のタイミングを正確に予想することは、上がるか下がるかの方向性を予想するよりも、はるかに難しいのです。
ましてや専業トレーダーのように一日中値動きを追いかけることができない一般の投資家にとっては尚更でしょう。
そういう時はベストのタイミングで投資するという理想を、思い切って捨て去ることも大切です。
中長期的な方向性がはっきりとしているのであれば、タイミングを気にせず、まずは相場に参入するべきでしょう。
その際、一度のタイミングで全ての資金をつぎ込むというやり方はお勧めできません。
悪いタイミングで入ってしまえば、勝てる相場にも勝てなくなってしまうからです。
資金をできるだけ小口に分けて、いろいろなタイミングで相場に参入するようにすれば、そうしたリスクを減らすことが可能になるでしょう。
毎月決まった額で投資することが出来る積み立て投資も、賢い投資方法の一つだと思います。
NY在住コモディティトレーダー
松本英毅 氏
1963年生まれ。
音楽家活動のあと米国でコモディティートレードの専門家として活動。
2004年に業界新聞等への執筆やTV東京モーニングサテライトへの出演など、コメンテーターとしての活動を開始。
現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロの投資家を対象に情報発信を行っている。
NYを拠点に米国市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深く、商社や金融機関のコモディティー担当者に読者が多い。
毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自ら運用に当たっている。
2020年4月には株式投資家東条麻衣子氏との共著、「米国商品情報を活用して待ち伏せする、先取り株式投資術」をパンローリング社から出版、商品市場におけるファンダメンタルズ分析の基礎を詳しく解説、米国商品市場の情報を日本株投資に応用する方法を紹介している。
ツィッター(@yosoukai)やYouTubeチャンネル(松のすっとびストラテジー)でも精力的に情報を配信。
普段なら有料読者にしか伝えないような情報がYouTube配信ではポロリと出てくることもしばしば。
一般投資家からの質問にも時間の許す限り答えている。
マネックス・ゴールドのご紹介
マネックス証券の「マネックス・ゴールド」なら、金(ゴールド)・プラチナ・銀(シルバー)の現物取引が可能です。マネックス・ゴールド口座の開設は無料で、管理・維持・解約にも手数料はかかりません。
取扱商品は金・プラチナ・銀の3種類
金(ゴールド)は古くから通貨として用いられており、市場に流通する量も多いです。株式と逆の値動きをする傾向があり、分散投資の対象としてもおすすめです。
プラチナは金より希少性が高く、自動車をはじめとする工業用としての需要が多いため、価格が大きく変動しやすいです。
銀(シルバー)も金と同様に通貨として用いられてきましたが、工業用としての需要もあるため景気動向の影響を受けます。また、金に比べると市場が小さく価格が変動しやすいです。
スポットでも積立でも買付けできる
マネックス・ゴールドの取引方法はスポット取引と積立プランの2種類です。積立プランには毎月一定の金額で積み立てる「定額プラン」、毎月一定の数量を積み立てる「定量プラン」があります。スポット取引と定額プランは1,000円から1,000円単位で、定量プランは1グラムから1グラム単位(銀は10グラム以上10グラム単位)でお申込みいただけます。
定額プランを活用すればドルコスト平均法のメリット受けることが期待できます。
業界最低水準の売買手数料
金(ゴールド)・プラチナ・銀の購入時の手数料は約定代金の1.65%(税込)です。スポット取引も積立プランも同じです。一方、売却時には手数料がかかりません。積立プランの購入分はスポット取引でご売却いただけます。
主要取扱会社(※)の積立手数料の比較
積立金額 (/月) | マネックス証券 | SBI証券 | 楽天証券 | 田中貴金属工業 | 三菱マテリアル |
---|---|---|---|---|---|
1,000 円以上 3,000 円未満 | 1.65% | 1.65% | 1.65% | 取扱なし | 取扱なし |
3,000 円以上 10,000 円未満 | 2.5% | 3.10% | |||
10,000 円以上 30,000 円未満 | 2.60% | ||||
30,000 円以上 50,000 円未満 | 2.0% | ||||
50,000 円以上 | 1.5% |
※主要取扱会社の積立手数料を比較しています。ここでの主要取扱会社とは、田中貴金属工業、三菱マテリアル、SBI証券、楽天証券、マネックス証券の5社を指します。なお、田中貴金属工業、三菱マテリアルは1,000円以上3,000円未満の取扱いはありません。各社ウェブサイトより2022年9月1日マネックス証券調べ。
ドルコスト平均法を活用しよう
ドルコスト平均法とは金融商品を定期的に一定金額で購入する投資手法です。定期的に一定数量を購入する場合と比べると平均購入単価が低く抑えられ、同じ投資金額でより多くの商品を購入できます。
また、一括で購入する場合と異なり高値掴みのリスクが低いため、価格が上昇している局面でも始めやすい投資手法です。
例えば下記の例では、毎月1万円分ずつ購入した場合、購入金額の合計は4万円・購入個数は467個となり、その平均単価は85.7円になります。一方で毎月100個ずつ購入した場合、購入金額の合計は4万円・購入個数は400個となり、その平均単価は100円になります。商品の値動きにもよりますが、2つの購入方法を比較すると毎月一定の金額で購入した方が平均購入単価が低く抑えられることが分かります。
例:みかんを定期的に購入する場合
※値動きは仮定のものです。実際に金融商品を購入する場合は税金や手数料等がかかります。