連続増配銘柄とは、「年間の1株あたり配当金額」が増加し続けている銘柄のことです。
連続増配銘柄は、株式市場が急落したときなどに特に注目が集まることがあります。配当利回りは「1株あたり配当÷株価」で計算されるため、1株あたり配当金額が一定であれば株価が下落すると配当利回りが上昇することになり、相場の急落時に配当利回りの上昇に魅力を感じる投資家の買いが株価の下支えとなって株価の底堅さにつながることがあるためです。
相場の急落は予想が困難で突如起きることが多いため、日頃から連続増配銘柄に注目しておくのが有効でしょう。
本記事では、最近投資を始めたばかりのビギナー投資家に向けて「連続増配銘柄」の基礎知識を解説します。
「連続増配銘柄って何なのか知りたい」
「連続増配銘柄の購入を検討したい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、連続増配銘柄への理解が深まり、自分にとって適切な投資先か判断しやすくなります。では、さっそく解説を始めましょう。
まず基礎知識から見ていきましょう。
冒頭でも触れましたが、連続増配銘柄とは「年間の1株あたり配当金額が増加を続けている銘柄」のことです。
「そもそも配当って?」と疑問に思う初心者の方へ補足すると、配当とは企業が株主に支払うお金です。
※配当として株式等が割り当てられる場合もありますが、多くの場合は現金で支払われます。
企業が稼いだ利益を、株主(株を買って保有している人、企業にとってはお金を出資してくれた人)に還元する仕組みが配当です。
日本企業では通常年に1回か2回、米国企業では年に4回の配当が支払われるのが一般的です。
配当を出す・出さないは、企業の方針によって異なります。
例えば米国企業のアップル(AAPL)は配当がありますが、アマゾン・ドットコム(AMZN)はありません。
※2023年7月21日時点
どちらが良い・悪いという話ではないことに注意してください。
配当を出している・増配を続けている企業は、「配当金の形での株主還元」を重視する考え方で、配当を出さない企業は、他の形(例:事業投資等を通じた業績成長)を重視している、という違いがあるからです。もちろん、業績が悪いために配当金を出せない企業もありますので見極めには注意が必要です。
配当を出しているだけでなく「連続増配」を実現している企業は優良な企業の可能性があります。
いくら企業として配当を出したくても配当の原資となる利益を稼げなければ、配当を出す・増やすことはできないためです。
実際に業績不振によって配当が減る(減配)・止まる(無配)ケースは多々あります。2021年には新型コロナウイルス感染症の影響で業績が大幅に悪化したため減配や無配にせざるを得ず連続増配がストップした銘柄が多く見られました。こうした状況下でも増配を続けた企業は業績が安定しており、非常に株主還元に対する意識が高い可能性がありそうです。
次に連続増配銘柄を調べていると見かけることの多い言葉、「配当貴族」「配当王」についても触れておきましょう。
25年以上連続増配の銘柄を「配当貴族(Dividend Aristocrats)」、50年以上連続増配の銘柄を「配当王(Dividend Kings)」と呼ぶことがあります。
▼ 米国株の配当王銘柄の例
一方、日本株では50年以上連続増配の銘柄は存在しません。
30年以上の連続増配は花王(4452)のみです。2位のSPK(7466)は25年で、3位以下は25年未満です。米国の定義における配当貴族(=連続増配25年以上)は、日本株では花王とSPKだけと言えます。
※2023年7月21日時点
配当貴族に関連して有名なのが「S&P 500配当貴族指数」です。
「S&P 500配当貴族指数」は日経平均株価やTOPIXと同じ株価指数(インデックス)のひとつで、S&P 500という米国を代表する株価指数を構成する銘柄のうち、過去25年間以上連続して増配している銘柄で構成されています。
▼ S&P500配当貴族指数(トータルリターン)の推移
(出所)Bloombergデータよりマネックス証券作成 2000年1月~2023年7月21日の月足
後ほどご紹介しますが、「S&P 500配当貴族指数」に連動した投資信託やETFもあります。連続増配銘柄でも個別に選ぶのが難しいという方には、これらの金融商品を活用するのが良いかもしれません。
次に、連続増配銘柄に投資するメリットは何か、見ていきましょう。
1つめのメリットは「業績が堅調で株主還元意識の高い銘柄を選べる可能性が高い」ことです。
株式投資で銘柄選びが重要なのは言うまでもありません。本来はファンダメンタルズ分析という企業の業績や資産を分析する手法等を使って、企業の価値を見極めた方が望ましいですが、初心者のうちは難しく感じるでしょう。
そこで、企業の優良性を判断するために「連続増配銘柄」という誰にでもわかりやすい指標が役立ちます。
配当金を支払い続けていてかつ増配している企業は、配当の原資となる利益をしっかりと稼いでいてさらにそれを株主に還元する意識が強い可能性があるのです。
少なくとも、何も調べずに「人気がありそうだから」といった理由で銘柄を選ぶよりは大きなリスクは回避できる可能性が高いと言えます。
連続増配年数が長い企業ほど、長期に渡って堅調な業績と株主還元を続けてきた企業です。インフレ、不景気、市場の暴落、政情不安、ビジネスモデルの変化、顧客の変化など様々な逆風を経験してなお増配を続けている企業には、それだけその企業が世の中に必要とされている商品やサービスを展開し、競合に比べて強みを持っている可能性が高いと言うこともできそうです。
2つめのメリットは「相場の下落時に比較的堅調な傾向がある」ことです。
市場全体の大幅な下落は突然やってくることが多く、あらかじめ予想することは非常に困難です。上述したように相場が大きく下落するときでも、比較的堅調な値動きをする傾向があるのが連続増配銘柄です。
例えば2022年以降の米国株式市場は、連邦準備制度理事会(FRB)による大幅な利上げの影響で株価が大きく調整しました。以下のグラフは、S&P 500配当貴族指数(プライスリターン)とS&P500の推移を2022年1月3日の株価を100として比較したものです。
▼ S&P 500配当貴族指数(プライスリターン)とS&P500
出所:Bloombergデータよりマネックス証券作成 2022年1月3日~7月21日の株価を指数化
グラフをご覧いただくと、S&P 500配当貴族指数(プライスリターン)の方がS&P500よりも底堅く推移していることがおわかりいただけると思います。一方で、2022年10月以降の株価回復期にはS&P500の方が高い上昇率を達成しています。このように、相場の局面によってどちらの指数が有望であるかは異なるため注意が必要です。
3つめのメリットは「持続的な配当金受取を期待できる」ことです。
これまで説明してきたように連続増配銘柄は、長期的に業績が堅調で株主還元意識の高い銘柄の場合が多いため、今後も持続的に配当金の受け取りを期待できる可能性が高いと言えます。
もちろんこれまで連続増配を続けて企業だからといって、事業環境や株主還元方針の変化により将来的に必ず増額していくと決まっているわけではありません。しかし、特に「配当貴族」や「配当王」と呼ばれる数十年以上連続増配を続けている企業の場合、相対的には増配が続けられていく可能性が高いと言えそうです。
メリットが多く見える連続増配銘柄ですが、デメリットもあります。
それぞれ見ていきましょう。
1つめのデメリットは「業績急成長銘柄に比べると大きな値上がり益は期待しにくい場合がある」ことです。
株式投資で期待できるリターン(利益)は、配当(インカムゲイン)以外に、株価が購入時よりも値上がりしたところで売却する値上がり益(キャピタルゲイン)があります。当然株価が下落するリスクもありますが、一般的により大きなリターンを期待できるのは配当ではなく値上がり益の方です。
しかし、上述したように連続増配を続けている企業は自身が得た利益を事業投資等に回して成長を追うことよりも、株主に利益を返すことを選んでいる場合が多いため、高い業績成長は期待しにくい場合があります。長期的に見ると企業の株価は企業が稼いだ利益と連動する傾向があるため、長期的に利益成長が鈍い企業の場合、株価も冴えない場合があるのです。
例えば、以下のチャートは連続増配年数64年(2023年7月21日時点)を誇る米国企業の3M(MMM)の過去10年の株価推移です。
株価が比較的安定して推移していますが、10年前と現在を比較すると株価が上昇していないどころかむしろ下落しています。
▼ 3M(MMM)の株価推移
(出所)Bloombergデータよりマネックス証券作成 2013年8月~2023年7月21日 月足
参考に、近年よく話題になるテスラ(TSLA)の過去5年を見てみましょう。
▼ テスラ(TSLA)の株価推移
(出所)Bloombergデータよりマネックス証券作成 2013年8月~2023年7月21日 月足
2020年から2021年にかけて株価が急騰しています。業績が急成長している銘柄はこのように株価が急騰することがあるのが魅力の1つです。一方で2021年の後半に400ドル近い高値をつけたあとに一時は150ドル程度まで下落するなど、非常に荒っぽい値動きとなっています。
長期的に株価が冴えない3Mですが、株価が冴えない期間中も着実に増配は続けており、安定的に配当金を受け取ることができていました。リスクを取ってテスラのような業績急成長銘柄にうまく投資できれば大きなリターンが見込める可能性がありますが、投資タイミングを誤ると悲惨な結果に終わる可能性もあります。
このように連続増配銘柄と業績急成長銘柄ではそれぞれ株価の推移に特徴が出ることがあり、どちらが良い・悪いではなく、ご自身の投資目標に合わせてどのように銘柄を選定するかが大切です。
2つめのデメリットは「短期投資には向かないことがある」ことです。
繰り返し述べてきたように連続増配銘柄の中には業績や株価も冴えない銘柄もあり、短期的なキャピタルゲイン狙いにはあまり向いていないと言えそうです。連続増配銘柄は長期で保有してこそ配当取得の恩恵を受けやすいと考えておくと良さそうです。
前述の3Mの場合、2012年12月末の株価は92.85ドルでした。2022年12月末の株価は119.92ドルのため、せいぜい株価の値上がりは10年間で30%弱といったところです。しかし、以下の表のとおり3Mは過去10年間で合計48.16ドルの配当を支払っていることを考慮すると、(119.92ドル+48.16ドル=168.08ドル)÷92.85ドル=約81%のリターンを得ていることになります(税引き前で計算)。
▼ 3Mの1株配当推移
決算期 | 1株配当 |
---|---|
2013年12月期 | 2.54 USD |
2014年12月期 | 3.42 USD |
2015年12月期 | 4.10 USD |
2016年12月期 | 4.44 USD |
2017年12月期 | 4.70 USD |
2018年12月期 | 5.44 USD |
2019年12月期 | 5.76 USD |
2020年12月期 | 5.88 USD |
2021年12月期 | 5.92 USD |
2022年12月期 | 5.96 USD |
合計 | 48.16USD |
(出所)マネックス証券の「銘柄スカウター米国株」記載データをもとにマネックス証券作成 2023年7月21日時点
このように、連続増配銘柄は長期で保有してこそ高いリターンにつながる場合があります。
※なお、連続増配銘柄に限ったデメリットではありませんが、米国株の配当金は米ドルで受け取るため、リターンを円ベースで考える際には為替変動リスクがあります。
「連続増配銘柄に投資してみたい」と思ったら、具体的なやり方は2つあります。
1つめの方法は「配当貴族指数に連動する投資信託やETFを買う」ことです。
投資信託やETF(上場投資信託)は、多くの銘柄に分散投資した金融商品です。
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資格言があるように、株式投資では1つの銘柄に集中投資するのではなく、複数の銘柄に分けてリスク分散することがセオリーですが、投資信託やETFを活用すれば簡単に分散投資を実現できます。
配当貴族指数に連動する投資信託やETFを買うと、その配当貴族指数の構成銘柄に分散投資しているのと同じ投資効果を狙うことができます。
米国株の代表的な配当貴族指数は前述の「S&P 500配当貴族指数」です。
日本株にも10年以上増配・または維持の銘柄を対象とする「S&P/JPX 配当貴族指数」があるので、ぜひチェックしてみてください。
2つめの方法は「連続増配の個別銘柄を買う」です。
個別株投資とはひとつひとつの企業の株を自分で選んで買うことを言います。
ファンドマネージャーという投資のプロが運用してくれる投資信託やETFと比較すると難易度が高い投資法です。自分で銘柄を選び、購入し、売却のタイミングを見計らう必要があるためです。
しかし、銘柄の選定や売却をうまく行うことができれば、市場の平均である株価指数を上回るリターンを得ることも可能です。業績が堅調で株価が安定的に推移している連続増配銘柄の中から銘柄を選定すれば、比較的初心者の方にも取り組みやすいかもしれません。
興味のある企業があれば、調べてみましょう。
最後に「連続増配の個別銘柄を自分で探したい」という方へ、マネックス証券で連続増配している米国株を探す方法をご紹介します。
マネックス証券では「銘柄スカウター米国株」という米国上場企業の事業内容や業績、過去の配当金などを簡単に調べられるサービスを提供しています。中でも「10年スクリーニング」という機能を活用すると、過去の連続増配銘柄を簡単に探すことができます。
▼ 銘柄スカウター米国株の「10年スクリーニング」の利用方法
マネックス証券の証券総合取引口座にログイン後、[米国株・中国株]>[銘柄スカウター米国株]>[銘柄スカウター米国株]の順で銘柄スカウター米国株にアクセスし、「10年スクリーニング」をクリックします。
※銘柄スカウター米国株は「プロフェッショナル機能」と「ノーマル機能」に分かれており、連続増配銘柄を検索するには「プロフェッショナル機能」の利用条件を満たしていただく必要があります。
(出所)マネックス証券ウェブサイト
2つめのステップは「スクリーニング条件を入力」です。
[新規作成]をクリックし、スクリーニング条件入力画面を開いたら[条件を追加する]をクリックします。
条件追加画面が表示されたら[投資指標・株価]の中にある、[連続増配年数][配当利回り]にチェックを入れましょう。
例えば、以下の条件で検索してみます。
34の銘柄が表示されました。
(出所)銘柄スカウター米国株 2023年7月21日現在
さまざまな条件を入力し、自分の投資目的に合った銘柄を探していきましょう。
連続増配銘柄とは年間の1株あたり配当金額が増加し続けている銘柄のことです。
25年以上連続増配の銘柄を配当貴族、50年以上連続増配の銘柄を配当王と呼ぶことがあり、有名なインデックスに「S&P 500配当貴族指数」があります。
連続増配銘柄に投資するメリットは以下のとおりです。
連続増配銘柄に投資するデメリットは以下のとおりです。
連続増配銘柄に投資する2つの方法をご紹介しました。
連続増配銘柄は、まだ個別銘柄に投資をしたことのない投資ビギナーの方にも比較的取り組みやすい投資対象と言えるかもしれません。まずは自分でスクリーニングするところから始めましょう。
\かんたん3ステップ!最短で申し込みの翌営業日に開設完了!/
米国上場有価証券等のお取引に関する重要事項
<リスク>
米国株式および米国ETF、REIT、預託証券、受益証券発行信託の受益証券等(以下「米国株式等」)の売買では、株価等の価格の変動、外国為替相場の変動等、または発行者等の信用状況の悪化等により、元本損失が生じるおそれがあります。米国ETF等の売買では、裏付けとなっている資産の株式相場、債券相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等(これらの指数を含む。)や評価額の変動により、元本損失が生じるおそれがあります。国外株式等の場合には、その国の政治的・経済的・社会的な環境の変化のために、元本損失が生じるおそれがあります。米国株式等は、国内金融商品取引所に上場されている場合や国内で公募・売出しが行われた場合等を除き、日本の法令に基づく企業内容等の開示が行われておりませんので、取引を行うにあたっては十分にご留意ください。外国為替相場の変動により、外貨お預り金の円換算価値が下がり、円ベースでの元本損失が生じるおそれがあります。<保証金の額または計算方法>
米国株式等の信用取引では、売買代金の50%以上かつ30万円を下回らない範囲で当社が定める米ドル額以上の保証金が必要です。信用取引では、元本(保証金)に比べ、取引額が最大2倍程度となる可能性があるため、価格、上記各指数等の変動、または発行者の信用状況の悪化等により元本を上回る損失(元本超過損)が生じるおそれがあります。<手数料等>
<その他>
お取引の際は、当社ウェブサイトに掲載の「上場有価証券等書面」「契約締結前交付書面」「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」を必ずお読みください。投資信託取引に関する重要事項
<リスク>
投資信託は、主に値動きのある有価証券、商品、不動産等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた有価証券、商品、不動産等の値動き等(組入商品が外貨建てである場合には為替相場の変動を含む)の影響により上下するため、これにより元本損失が生じることがあります。また、外貨建て投資信託においては、外貨ベースでは投資元本を割り込んでいない場合でも、円換算ベースでは為替相場の変動により投資元本を割り込むことがあります。投資信託は、投資元本および分配金の保証された商品ではありません。<手数料・費用等>
投資信託ご購入の際の申込手数料はかかりませんが(IFAを媒介した取引を除く)、購入時または換金時に直接ご負担いただく費用として、約定日の基準価額に最大0.75%を乗じた額の信託財産留保額がかかります。また、投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用として、純資産総額に対して最大年率3.1%(税込:3.41%)を乗じた額の信託報酬のほか、その他の費用がかかります。また、運用成績に応じた成功報酬等がかかる場合があります。その他費用については、運用状況等により変動するものであり、事前に料率、上限額等を示すことができません。手数料(費用)の合計額については、申込金額、保有期間等の各条件により異なりますので、事前に料率、上限額等を表示することができません。なお、IFAコースをご利用のお客様について、IFAを媒介した取引から投資信託を購入される際は、申込金額に対して最大3.5%(税込:3.85%)の申込手数料がかかります。詳しくは当社ウェブサイトに掲載の「ファンド詳細」よりご確認ください。<その他>
投資信託の購入価額によっては、収益分配金の一部ないしすべてが、実質的に元本の一部払い戻しに相当する場合があります。また、通貨選択型投資信託については、投資対象資産の価格変動リスクに加えて複雑な為替変動リスクを伴います。投資信託の収益分配金と、通貨選択型投資信託の収益/損失に関しては、以下をご確認ください。