金投資の魅力をお届けするため、コモディティ市場に詳しい江守哲氏(エモリファンドマネジメント株式会社 代表取締役)に「金の歴史」について解説していただきました。ぜひ最後までお読みください。
エモリファンドマネジメント株式会社 代表取締役
江守 哲(えもり てつ) 氏
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に『LME(ロンドン金属取引所)入門』(総合法令出版)など
共著に『コモディティ市場と投資戦略』(勁草書房)
金の歴史は長い。金は扱いやすい特性もあり、様々な用途で使われてきた歴史がある。現在もリングやネックレスなどに代表されるゴールドジュエリーがあり、さらに貨幣やインゴット(バー・延べ棒)などの資産としても利用されている。金には「高い価値がある」と理解されており、これが金そのものの価値を高めているともいえる。金を英語で言うと「ゴールド(Gold)」だが、これはサンスクリット語の「輝く」にちなんだとも言われている。金は光の中の青だけを吸収し、その他の色は反射するという特性があり、これが金独特の輝きの源であり、歴史的に金が高い価値を維持してきた背景にある。また、金の展延性も他の金属にはない特徴であり、これも金の価値を高めている。加工のしやすさから、リングやネックレスなど多彩なデザインを形成するのに適しているのである。さらに、耐酸化性が高いため、他の金属に比べて錆びづらく、経年劣化もしづらい特徴がある。この点も、歴史的に金の価値が保たれた背景にあるといえるだろう。
このような特性のある金だが、これらはあくまで現物としての金の価値を認めるものである。その一方で、金には大きく分けて、二つの歴史がある。ひとつは、「通貨の価値としての歴史」、もう一方が「外貨準備の価値としての歴史」である。後者も広義では通貨の価値ともいえるだろう。この大きな二つの歴史を理解しておけば、現代の金の動向を見るうえで参考になるだろう。
まずは「通貨の価値としての歴史」だが、昔から金を通貨の代替としての価値を見出す向きが少なくなかったようである。つまり、「貨幣としての金」の価値である。投資家の立場から見れば、むしろこの点に関する興味の方が大きいだろう。紀元前から金貨が作られ、国際通貨としての性格を持っていたことはよく知られている。世界共通の価値を持つ金は、歴史的に貨幣制度における重要な位置づけとなっていた。現代では、中央銀行が発行する紙幣が当然のように流通しているが、これは国の信用を背景にした管理通貨制度である。しかし、昔は国家にこのような信用を置くといった考えはなく、金銀をベースとした金銀複本位制度がとられていた。この制度は金または銀と貨幣を引き換えることを約束したもので、自国貨幣を金銀で保証したものである。しかし、19世紀に入ると、銀が大量産出され、価値が不安定になったことで、金本位制度が広がっていったのである。
金本位制の考え方は、かなり古くからあったとされるが、金貨は貨幣として実際に流通させるには希少価値が高過ぎたことや、金貨を鋳造するための地金が絶対的に不足していたことから、なかなか広がらなかったとされる。金本位制が法的に初めて実施されたのは、1816年の英国の貨幣法とされている。ソブリン金貨(発行は1817年)と呼ばれる金貨に自由鋳造、自由融解を認め、唯一の無制限法貨とし、これを1ポンドとして流通させたことが最初といわれている。
その後は、欧州各国が次々と追随し、19世紀末には金本位制が国際的に確立された。日本では1871年に「新貨条例」を定めて、新貨幣単位円とともに確立されたが、金準備が充分でなかった上に、まだ経済基盤が弱かった日本からは正貨である金貨の流出が続いた。1871年に法律を改めて暫時金銀複本位制としたが、実質的には銀本位制となった。日清戦争後に清から得た賠償金3800万ポンドの金を準備金として1897年には平価を半分に切り下げた貨幣法が施行され、実質的に金本位制に復帰した。
1914年に始まった第一次世界大戦により、各国政府とも金本位制を中断し、管理通貨制度に移行した。これは、戦争によって増大した対外支払のために金貨の政府への集中が必要となり、金の輸出を禁止、通貨の金兌換を停止せざるをえなくなったことが背景にある。また戦局の進展により、世界最大の為替決済市場であったロンドンのシティが戦災に遭い活動を停止したこと、各国間での為替手形の輸送が途絶したことなども影響した。その後、1919年にアメリカ合衆国が金本位制に復帰したのを皮切りに、各国も次々と復帰したが、1929年の世界恐慌で再び機能不全に陥り、1931年9月の英国を契機に1937年6月のフランスを最後にすべての国が金本位制を離脱した。日本では、戦後に金本位制復帰の機会をうかがうも、関東大震災などの影響で時期を逸し、1930年に濱口雄幸内閣が「金輸出解禁」を実施したが、多額の貿易赤字に伴い多量の金流出が起り、翌年犬養毅内閣が金輸出を再禁止した。
1933年、金融恐慌を契機に、ルーズベルト大統領は米国民に対し、保有する金を平価(1オンス=20.67ドル)で強制的に搬出させ、市民の金保有を禁じた。これは、当時金本位制の下で紙幣が金保有高に制限されてしまうため、インフレ政策が取れなかったための措置とされた。その後、1934年に、米国は金の買上げ価格を1オンス=35ドルと定め、この価格で外国通貨当局に対し金を引き渡す措置をとるようになった。第二次世界大戦後には、米ドル金為替本位制を中心としたIMFによる「ブレトン・ウッズ体制」が構築された。他国が戦災で疲弊する中、米国は世界一の金保有量だったため、各国は1オンス=35ドルの平価で金と結びつけられた米ドルとの固定為替相場制を介し、間接的に金と結びつく形での金本位制となった。
しかし、1971年8月15日に当時のニクソン米大統領が、金と米ドルの兌換を停止すると宣言した。この「ニクソン・ショック」以降、同年12月に締結されたスミソニアン協定で1オンス=38ドルとドルの平価を切り下げつつも、金本位制の性格を維持しようとしたが、各国の通貨も1973年までに変動為替相場制に移行する形で、先進国の通貨は金本位制が有名無実化する形で離脱することになった。73年に1オンス=42ドル22セントと再び切り下げとなり、1976年1月には変動相場制と米ドルの金本位制廃止が確認され、1978年4月に先進国の通貨における金本位制は完全に終焉した。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)日本語版』
最終更新 2021年11月17日(水)02:09 UTC
一方で、「外貨準備の価値としての歴史」も重要なポイントである。歴史的に各国は、金を自国通貨の価値を維持するために保有してきたが、現在は自国通貨の脆弱性を懸念する新興国が金保有量を増やす動きが確認されている。ただし、このように各国政府・中央銀行などが金を積極的に購入し、買い姿勢に転じたのは2010年と最近のことである。それ以前はむしろ、欧州を中心に金の売り手だった時期がある。その中でも、「歴史的大失態」とされているのが、英国による保有金の売却である。1999年5月7日に、英国が当時保有していた金準備715トンの内、401トンの売却を公表した。これにより、金価格は当時の安値となる1トロイオンス=252ドルを付けるに至ったのである。
英国は1999年から2002年の間に、401トンの金準備を売却した。この売却価格の平均はトロイオンスあたり275ドルとされている。この売却を主導したのが、当時の英国のブラウン元蔵相である。そのため、この金価格の暴落は、ブラウン氏のファーストネームを模して「ゴードンの呪い」と呼ばれている。現代の政策判断の中でも歴史上、最悪のものであると言えるだろう。
一方、これとほぼ同時に行われたのが、「ワシントン協定」の締結である。欧州の各国中央銀行は、金価格の維持を目的に、1999年にワシントン協定を結び、保有金の売却量を制限したのである。金を保有している中央銀行にとって、金価格の値下がりは保有資産の目減りを意味する。当時、各国が保有金を売却していたため、この売りが金価格を押し下げるといったジレンマに陥っていた。そのため、これ以上の金価格の下落を防ぐために、欧州各国の中央銀行が売却量を制限することを決めたのである。
ワシントン協定は、1999年9月にワシントンで開催されたIMF(国際通貨基金)総会で、欧州中央銀行(ECB)および11カ国の中央銀行、スウェーデン、スイス、イギリスの各中央銀行が合意した協定である。この協定は、米国、日本、IMF、BIS(国際決済銀行)も同意していた。これは「第一次ワシントン協定(GBGA)」と呼ばれ、年間の金売却量を400トン以下、5年間で最大2000トンを超えないこととした。その後、5年後の第二次協定では、年間上限を500トン、5年間で最大2500トンとし、上限を引き上げた。さらに2009年9月に発効した第三次ワシントン協定の適用期間では、再び年間上限を400トン、5年間で最大2000トンに下げた。そして、2014年5月19日の第四次ワシントン協定では、年間の金売却上限枠の設定が外れたが、中央銀行が金の売り手となり、金相場を押し下げる懸念が低下したことが背景にあるといえる。そして、2019年9月26日にワシントン協定は終了した。
この間の欧州各国の金売却量は、ワシントン協定の直後は上限近くだったが、その後は売却量を減らし、2010年に136トン、2011年には53トンの売却にとどまった。ワシントン協定が締結される前後の当時は、欧州通貨制度の進捗で、現在のユーロが発効する時期でもあった。欧州各国はユーロの価値が高くなることを信じて疑わなかったことから、準備通貨としての金を保有する意味はないとの考えが根底にあったことも、金売却につながったといえる。しかし、実際にユーロが導入されると、ユーロの価値は1ドル=1ユーロ以下となり、各国の想定外のことが起きたことも皮肉な現象だったといえる。
このように、金には通貨と関係した歴史が存在するが、現在では新興国が自国通貨の価値の保全のために、金を外貨準備として保有し、その規模を拡大させている。主要国は中国、インド、ロシア、トルコ、カザフスタンなどである。これらの国は、基本的に安定的に金を購入しているが、金価格が安くなったときに買いを増やす傾向がある。したがって、これらの国々の金買いが下値を支える役割を果たしている面もある。このように考えると、金は依然として通貨の価値を保有しているともいえる。最近では、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)が誕生し、ハードの世界(金)の存在感に対してソフトの世界(仮想資産)への関心も高まってきている。新しい歴史が始まった感もあるが、今後もハード資産の代表格である金がその価値を維持し続けるのかどうか、見守っていきたいところである。
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