下落相場では、どのように銘柄を選べばよいのでしょうか。信用取引では、買いだけでなく「信用売り」を活用することもできます。今回は、信用残高ランキングから需給を確認し、テクニカル分析と組み合わせて信用売りの候補を探す方法や、買残増加や取組倍率の見方、銘柄選びで注意したいポイントを株式会社インベストラスト代表取締役の福永 博之氏が解説します。
※本コンテンツは情報提供が目的であり、掲載している銘柄の取引を推奨するものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。
第1回のコラムを読む「信用取引の銘柄選び入門 移動平均線の活用法」
第2回のコラムを読む「信用取引の銘柄選び入門 信用残高ランキングとテクニカル分析の活用法」
初心者にもできる、下落相場でも利益を狙うための銘柄選びのポイント
前回は、値上がりが期待される銘柄を選ぶポイントについて解説しました。しかし、株式市場では常に多くの銘柄が値上がりするとは限りません。経済状況が良く、企業業績も好調な局面では、信用取引のレバレッジを活用して買いから取引することもできますが、相場が常に上昇基調にあるとは限りません。
ましてや、経済状況が悪化している局面などでは、値上がりが期待される銘柄を選ぶことが難しくなります。無理に買い銘柄を選んで投資をすると、損失の発生や拡大につながることも考えられます。
そこで今回は、下落相場における信用取引の銘柄選びのポイントについて解説します。
下落相場で力を発揮する信用取引
経済状況が悪化したときや、業績発表後に材料出尽くしとなったときなど、株価が高値をつけて反落することがあります。現物株に投資している場合、こうした局面では、売却する、あるいは株価が下げ止まるまで保有を続けるといった対応が考えられます。
一方、信用取引では売りから取引を始めることもできます。値下がりを見込む銘柄を売り建て、実際に値下がりした場合には買い戻して返済することで、利益を得ることができます。
また、信用売りは保有株の値下がりリスクをヘッジするために活用することもできます。このように、信用売りの仕組みを理解して活用することで、上昇相場だけでなく下落相場でも取引を検討でき、投資手法の選択肢を広げることができます。

銘柄選びで再びランキング情報を活用する
では、株価の値下がりが予想される銘柄を選ぶにはどのような方法があるのでしょうか。そこで活用するのが、前回解説したマネックス証券で確認できる「信用残高ランキング」です。前回は「売残増加」を使いましたが、今回は「買残増加」を使って、売り候補となる銘柄をピックアップします。
買残増加ランキングは、信用取引の買い残高が増加した銘柄を確認できるランキングです。信用買いは、反対売買で返済する場合には売り注文につながるため、買い残高の増加は将来の売り圧力となる可能性があります。
また、買い残高が増加している一方で株価が下落している場合、買い建玉を保有する投資家の中には含み損を抱えているケースも考えられます。こうした買い建玉が反対売買で返済されれば売り注文につながるため、需給を考えるうえでの一つの材料となります。
銘柄を選ぶ際には、買い残高の増加だけでなく、前回と同様にテクニカル分析を組み合わせて確認します。前回は上昇トレンドに注目しましたが、今回は下降トレンドに注目します。
ここで、今回の銘柄選びで用いる下降トレンドの目安を確認しておきましょう。今回は、株価が5日・25日・75日移動平均線を下回り、各移動平均線が下向きとなっている状態を下降トレンドの目安とします。こうした条件を信用残高ランキングと組み合わせることで、需給とトレンドの両面から売り候補となる銘柄を検討することができます。
具体的なランキングの活用

- 出所:マネックス証券ウェブサイト
- 2026年9月17日時点
こちらは2026年9月17日時点の信用取引の買残増加ランキングです。トップの日産自動車(7201)を見ると、買い残高が約580万株増加しているのに対して、売り残高は約8万株減少しており、買い残高の増加が目立っていることが分かります。この売り残高と買い残高の比率を表したものが、表の右端に表示されている取組倍率です。
日産自動車の場合、取組倍率は27.94倍となっており、売り残高に対して買い残高が約28倍となっていることが分かります。買い残高が多い場合、反対売買による返済が将来の売り圧力となる可能性があるため、取組倍率は売り候補となる銘柄を検討する際の一つの材料になります。
また、こうした信用残高の状況は、信用売りだけでなく、現物株の買いを検討する際にも需給を確認するための材料として活用することができます。
具体的なトレンド分析とエントリーのタイミング
次はテクニカル分析の活用です。テクニカル分析で、前述の下降トレンドの定義に該当するかどうかを確認します。日産自動車の実際のチャートを見てみましょう。

- 出所:マネックス証券ウェブサイト
- 2026年9月18日時点。移動平均線(緑色:5日、黄色:25日、橙色:75日)
このチャートを見ると、株価は上下に変動していますが、5日・25日・75日移動平均線を下回った後も下落基調が続いていることが分かります。また、株価が25日移動平均線付近で上値を抑えられる場面が見られるとともに、株価水準も切り下がっています。この例では、買い残高が増加しているなかで、テクニカル面でも下降トレンドが確認できます。こうした需給とトレンドの状況は、売りを検討する際の判断材料の一つになります。
信用残高ランキングは定期的に更新されるため、継続的にチェックすることで、1週間ごとの信用残高の変化を確認できます。こうした変化を追うことは、需給の変化を捉えるための材料になります。
また、信用残高の変化は、信用取引の銘柄選びだけでなく、自身の保有銘柄について今後の値動きを考える際の判断材料の一つにもなります。信用残高と株価のトレンドをあわせて確認し、銘柄選びに活用してみてください。
信用売りの注意点
最後に、信用取引で売り候補となる銘柄を選ぶ際の注意点について確認しておきましょう。信用売りでは、発行済み株式数や売買高などを確認し、流動性の高い銘柄を選ぶことがポイントです。そのため、比較的流動性の高い銘柄が多い東証プライム市場を中心に検討するのも一つの方法です。
その理由は、発行済み株式数が少なく、流動性が低い銘柄では、買い注文が集中すると株価が急上昇し、思わぬ損失につながる可能性があるためです。特に信用売りでは、株価が上昇すると損失が拡大するため、急激な値動きには注意が必要です。
スタンダード市場やグロース市場には、発行済み株式数が少なく、流動性が低い銘柄もあります。こうした銘柄は、材料の公表などをきっかけに買い注文が集中すると、株価が大きく上昇し、希望する価格で買い戻すことが難しくなる場合があります。また、プライム市場でも同様に、流動性が低い銘柄には注意が必要です。市場区分だけで判断せず、売買高や値動きなども確認したうえで銘柄を検討することが大切です。
まとめ
これまでのコラムで信用取引の銘柄選びについて解説してきました。信用取引を利用して上昇相場、下落相場のどちらでもチャンスを逃さず取引できるよう、トレンドと需給関係など、売買判断の根拠になる情報をもとに銘柄選びを行うようにしてください。
また、相場の雰囲気だけで判断するのではなく、需給や株価のトレンドなど複数の情報を確認し、銘柄選びや売買判断に活用してみてください。

株式会社インベストラスト 代表取締役
福永 博之 氏
日本テクニカルアナリスト協会副理事長、国際テクニカルアナリスト連盟、国際検定テクニカルアナリスト。勧角証券(現みずほ証券)を経て、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)に入社。同社経済研究所チーフストラテジストを経て、現在、投資教育サイト「itrust(アイトラスト)」を運営し、セミナー講師を務めるほか、毎日マーケットコメントを発信。また、大前研一氏のビジネス・ブレイクスルー大学株式・資産形成実践講座の講師を務める。
テレビ、ラジオでは、日経CNBC「朝エクスプレス」、テレビ東京「モーニングサテライト」、TokyoMX「東京マーケットワイド」、ラジオ日経「ウィークエンド株」「スマートトレーダーPLUS」などの番組にレギュラー出演中。また、「四季報オンライン」や「ダイヤモンドZAI」などのマネー雑誌にも連載を持つ。
近著に、2018年6月発売『テクニカル分析 最強の組み合わせ術』(日本経済新聞出版社)、『ど素人が読める株価チャートの本』(翔泳社)、『信用取引の基本と儲け方ズバリ! 新取引ルール対応』(すばる舎)、『FX一目均衡表ベーシックマスターブック』(ダイヤモンド社)など多数。また、『ど素人が読める株価チャートの本』は、2016年8月に台湾でも翻訳されて出版される。
テクニカル指標の特許「注意喚起シグナル」を取得、投資&ビジネスメモツールi-tool(アイツール)を提供。
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