「つみたてNISAって解約できる?」
「つみたてNISAを利用中だけれど解約したい、どうすればいい?」
そのような疑問を持っている方も多いでしょう。
結論からいえば、つみたてNISAはいつでも自由に解約できます。ただし、一般的に「解約」と呼ばれるものには「保有している投資信託を売却すること」と「つみたてNISAの口座自体を解約する(廃止)」ことの2種類があります。
「解約」と「廃止」どちらも手続き自体は簡単ですが、デメリットも大きいので慎重に検討する必要があります。
この記事では、つみたてNISAの解約について、さまざまな視点から解説していきます。
「つみたてNISAを解約する」とは厳密にはどういうことでしょうか?
つみたてNISAは、2018年に始まった非課税で資産形成をサポートするための制度です。
つみたてNISA専用口座での保有する投資信託の運用益は、通常の投資にかかる税金20.315%(2023年4月現在)がかからず、年間最大40万円まで、最長20年間の運用が可能です。安定した資産運用の王道とされる「長期・積立・分散投資」を少額から行える制度として、老後の資金形成などを目的とする人に広く利用されています。
このように、長期間の資産形成を目指す制度ではありますが、つみたてNISAはいつでも解約できます。その点で、同じ非課税の運用制度であっても、途中解約できないiDeCoとは異なります。
つみたてNISAを解約したい場合は、口座を開設した金融機関に連絡して手続きするだけです。その具体的な方法は、「2.つみたてNISA(積立NISA)を解約する方法」 で説明します。
注意したい点として、一般的につみたてNISAの「解約」と呼ばれるものには、2種類の異なる意味があり、さらに「解除」という似た言葉も使われます。
単に「解約」という場合は、保有している投資信託を売却することを指します。
それに対して、つみたてNISA専用の口座自体を解約することは、厳密には「廃止」と呼びます。
また、積立ての設定を「解除」するという手続きも混同して捉えられるケースもあります。
まず、つみたてNISAの「解約」とは、一般的には投資信託を売却することです。この解約は、積み立てた分をすべて売却する「全解約」と、一部を売却する「部分解約」があり、いずれもいつでも自由にできます。
全解約しても、つみたてNISA口座や、「毎月●●円買う」といった積立の設定は残ったままです。
積み立て期間中であっても「いますぐ手元に現金が必要」「毎月の積立が苦しい」という場合であれば、全解約または部分解約することで、資金を確保できます。
これについては、「5.つみたてNISA(積立NISA)を解約する代わりにできる4つのこと」 でくわしく説明しますので、そちらも参照してください。
それに対して、つみたてNISA専用口座自体を解約することは「廃止」と呼びます。
NISA口座自体もなくしたい(あるいは他の金融機関に移したい場合)には、保有している資産を売却するときとは別の、「口座解約=廃止」手続きが必要になります。
つみたてNISAは前述したように長期で運用し続けることに意味があるため、他社へ移管するケースなどを除いて基本的には「廃止」しない方が良いとされています。もし廃止をしても、再開することは可能です。
また、積立設定の「解除」という手続きもあります。
これは、つみたてNISAで買い付ける投資信託の積立設定を解除することで、たとえば「毎月〇日に〇万円ずつ引き落としで積み立てる」という設定をしていたものを、何の設定もない状態に戻すことです。解除をすると、それ以降の積立が停止されるため、新しく投資信託を購入することはなくなります。またあらためて積立設定をすれば再開することもできます。
金融機関変更(一般NISA・つみたてNISAのみ)・再開設をしたいお客様
「解約」=売却の方法には、以下の3つがあります。金融機関によって、3つのどれでも可能な場合や、ひとつの方法でのみ受付ける場合などまちまちですので、確認のうえ適切な方法で手続きしましょう。
マネックス証券では、ウェブの簡単な手続きで完了します。
解約には、すべての投資信託を売却する「全解約」と、一部のみ売却する「部分解約」があります。部分解約をする場合は、どの投資信託を売却するかを選んで解約しましょう。
投資信託の商品特性上、解約の申込みをした時点の基準価額(=投資信託の値段)で売却されるとは限らないので注意しましょう。
次に、NISA口座自体を解約する「廃止」の手続きを説明します。廃止の手続きは難しいものではありません。
基本的には、NISA口座のある金融機関から「非課税口座廃止届出書」をもらって記入し、本人確認書類と一緒に提出するだけです。届出書を提出すると、口座が解約されたあとに「非課税口座廃止通知書」または「管理勘定廃止通知書」などの書類が金融機関から送付されます。
なお、つみたてNISA口座は、一度廃止してもまた再開することができます。後述の「4-5.解約後にまた始めることもできる」 で詳しく説明しているので、そちらもご参照ください。
金融機関変更(一般NISA・つみたてNISAのみ)・再開設をしたいお客様
つみたてNISAを解約したいと考えるのは、「運用益が出ていない」場合や「急にお金が必要になった」場合、もしくは「思わぬ運用益が出たので、利益を確定したい」場合などでしょう。ですが、解約にはメリットとデメリットがあり、それを踏まえて「本当に解約すべきか」をよく検討する必要があります。
ここでは、保有する投資信託の売却という意味での「つみたてNISAの解約」について、メリットとデメリットを考えてみましょう。
まず、メリットはいつでも現金化できるという「流動性」に集約されます。
つみたてNISAを継続するメリットは、資産運用の王道と言われる「長期・積立・分散投資」を少額から始められることで、個別株の取引などと比べて比較的安定した資産形成が可能です。
そのため、基本的には長期間保有することに意味があり、短期間で解約してしまうと旨みを十分に得られません。「どうしてもいますぐお金が必要」などの事情がある場合には、いつでも途中解約することで、手元に現金が入ります。
ただし、投資信託は売却したいと申込みをしたタイミングですぐに売却できるわけではない点に注意しましょう。出金手続きには各金融機関の定める日数がさらに必要になります。
一方で、解約のデメリットは以下の2点です。
上述したように、つみたてNISAは少額から「長期・積立・分散投資」を行えることがメリットです。
年間の積立上限額は年間40万円までと、大きな投資はできませんが、長期間運用を続ければ「複利効果」、つまり「運用で出た利益を再投資に回すことで、利益が大きくなる」効果が期待できます。
積立投資を短期でやめてしまうと、たとえ利益が出ていたとしても小さく、つみたてNISAならではのメリットが得られません。
つみたてNISA専用口座を解約すると、つみたてNISAの非課税枠=年間最大40万円×最長20年間の投資には税金がかからないというメリットもなくなります。
通常の口座で投資をすると、利益には20.315%の税金(2023年4月時点)がかかるので、運用を続けたいなら、基本的にはつみたてNISAの口座は解約しない方が良いと考えられます。とは言え、一度廃止してもまた再開したり、他の金融機関で新たな口座を開いたりすることが可能です。
ただし、再開設には以下の条件があるため、希望通りには再開できないリスクもあることを理解しておきましょう。
この再開設については、「4-5.解約後にまた始めることもできる」 で説明します。
金融機関変更(一般NISA・つみたてNISAのみ)・再開設をしたいお客様
つみたてNISAの解約には、メリット・デメリットがあることがわかりました。それを踏まえて「やはり解約したい」という方もいるでしょう。
そんな方のために、実際に解約した場合について、より詳しく解説します。
基本的に、つみたてNISAの投資信託を解約=売却する際には、解約手数料はかかりません。
ただ、投資信託の銘柄によっては、「信託財産留保額」という費用が発生するケースがあります。その場合は、売却日の基準価額の0.2~0.3%程度が一般的です。
前述したように、解約する際の損益が確定するのは、解約=売却の申込みをした日ではありません。
申込み日の翌日~2日後が「約定日=売買が確定する日」となる場合が一般的で、その日の基準価額で売却されるため、損益もそのタイミングで確定します。
解約や口座解約をした際の投資信託の売却代金は、事前に登録した希望の金融機関の口座に出金されます(証券会社の口座から銀行の口座への入金など、ご自身で入金の依頼・操作が必要な場合があります)。
解約=売却の申込みから1~2日後が約定日で売買が確定した場合、一般的にはその3日程度後に売却代金が出金されます。つまり、申込みから入金まではおおむね数日~1週間程度と考えておけばいいでしょう。
また、口座解約=廃止の場合は、さらに申込みから「非課税口座廃止通知書」が届くまで、1~2週間程度かかると考えておきましょう。
これまでも何度か触れたように、つみたてNISAは口座解約=廃止した後でも、再開することが可能です。その際には、口座解約したときに受け取った「非課税口座廃止通知書」が必要になりますので、大切にとっておきましょう。
口座再開設の流れは以下の通りです。
ただし、再開設には以下の条件があります。これに該当する場合は、翌年まで再開設できませんので注意してください。
金融機関変更(一般NISA・つみたてNISAのみ)・再開設をしたいお客様
一方で、「やはり解約はやめよう」と考えた方もいることと思います。ただ、そもそも「解約はしたい」と考えた事情、たとえば「手元にお金が必要」「利益が上がらない」といった状況は変わらないでしょう。
そこで、つみたてNISAを解約せずに、状況を変えられる4つの方法を、目的別に説明します。
何らかの事情で「とりあえず手元にお金が欲しい」「現金が必要だ」という場合は、「全解約」はしない代わりに、つみたてNISA口座で保有する、一部の投資信託を売却する「部分解約」を検討してください。たとえば、30万円積み立てたうちの10万円分だけを売却する、といった方法です。
ただし、部分解約した分の非課税枠が増えるわけではありません。仮にその年の非課税投資枠を使い切っている状態で10万円分を売却したとしても、同じ年に再度10万円をつみたてNISAで投資することはできないので注意しましょう。
保有資産は崩したくないと思う反面、「思うように運用益が出ていない」「毎月の積立が苦しい」といった場合には、一時的に積立て=新規の買付を休止するという方法もあります。
つみたてNISAの積立額や引き落としタイミングは、途中で設定変更することができます。積立額をゼロに設定すれば、それまでの積立ててきた保有資産は引き続き運用しながら、新たな積み立てだけを停止することが可能です。
つみたてNISAには、口座管理手数料などの維持費もかからないので、積み立てを休止したままにしても無駄な出費になる心配はありません。
運用成績に疑問を持っている方は、積み立てる投資信託の銘柄変更を行うことができます。この場合、以下の2つのパターンが考えられます。
なお、スイッチングを行う場合には、売却分の非課税投資枠が回復するわけではないという点に注意が必要です。
たとえば、銘柄Aにその年30万円を積み立てたとします。つみたてNISAの非課税枠は年間40万円までですから、その年に非課税で投資できるのはあと10万円だけです。
そこで、銘柄Aを売却して30万円を銘柄Bに投資したいと考えても、非課税枠は30万円増えるわけではなく、変わらず10万円しか残っていません。
となると、その年には10万円しか非課税で投資ができず、残りの20万円は運用せず寝かせておくか、課税口座で20.315%(2023年4月現在)の税金がかかる投資をするかになります。
「別の金融機関のほうが条件がよい」「今の金融機関に買いたい銘柄がない」などの理由で、今の金融機関でのつみたてNISAを解約したい方もあるでしょう。
その場合は、金融機関の変更が可能ですので、検討してみても良いでしょう。
金融機関変更(一般NISA・つみたてNISAのみ)・再開設をしたいお客様
どうしてもつみたてNISAを解約=売却したい場合は、できるだけよいタイミングで売却したいものです。そこで、解約に適したタイミングを考えてみましょう。
投資の鉄則として、買う時点であらかじめ目標を決めておくと良いとされています。
つみたてNISAを始めるときに、例えば、「資産総額1,000万円を目指す」「100万円の運用益を出す」といった目標を決めておくと、積み立てを続けるモチベーションになりますし、反対に目標金額に達したタイミングを解約する目安とすることもできます。
解約後は、改めて次の目標を立て、つみたてNISAの非課税期間(最長20年間)が残っていれば再開するのもよし、別の運用方法を検討するもよし、です。
もちろん、予想以上の利益が上がった場合に、売却して利益を確定してしまうのもいいでしょう。
資産運用で失敗しがちなのは、相場が下がって状況が悪いときに慌てて売却するパターンです。しかし、長期投資のつみたてNISAは、そういうときこそ持ち続けることが重要になります。相場の細かい乱高下に一喜一憂せず、長い目でゆっくり利益を上げていく性質のものだからです。
反対に、含み益がある程度あっても、長期の間に目減りする恐れはあります。
そのため、ある程度満足できる利益が出たら、そのタイミングでいったん売却するのは悪くない選択だと言えるでしょう。
このように、つみたてNISAには解約してもいいタイミングがあります。その際に注意したいポイントご説明します。
一度にすべての資産を売却するのではなく、複数回に分けて売却するというのも戦略のひとつです。たとえば、30万円を一気に解約するより、10万円ずつ3回に分けて売却するイメージです。
マーケットの動きを予想するのは非常に難しく、「今が売り時」と思っても、その後さらに急騰するかもしれません。また、解約申込みから実際の売却までタイムラグがあるため、その間に値下がりしてしまう恐れもあります。そういうリスクを一度に負わないために、何回かに分けて売却する方法もあります。そうすれば、「1回目は思ったように売却できなかったけれど、2回目はよりよいタイミングで売却できた、というように、リスクを分散させることができます。
特に短期間において、保有している資産の価値が下がったときや、相場が下落したときなどに、焦って売却してしまうのは、長期目線での投資でよくある失敗です。つみたてNISAは、短期的な相場の動きを気にして売買を繰り返すスタイルには適していません。
制度そのものがそうであるように、つみたてNISAで購入した銘柄は、最長20年間かけてゆっくり時間をかけてお金を育てるつもりで臨むのが良いでしょう。
金融機関変更(一般NISA・つみたてNISAのみ)・再開設をしたいお客様
最後にもう一度、記事のポイントをおさえておきましょう。
以上を踏まえて、つみたてNISAの効果を最大限活用して、資産形成していただければと思います。
金融機関変更(一般NISA・つみたてNISAのみ)・再開設をしたいお客様
ご注意
当コンテンツにて提供する情報は、作成時または提供時現在のものです。最新の制度等の情報は、金融庁のウェブサイト等にてご確認ください。
NISA口座の開設およびお取引に関するご留意事項
<口座開設および金融機関変更に関して>
NISA口座は、同一年(1月~12月)において、1人1口座(1金融機関)までの開設となります。その年の買付けがすでに行われている場合、金融機関変更はできません。また、NISA口座の残高を他金融機関へ移管することはできません。<お取引に関して>
投資信託取引に関する重要事項
<リスク>
投資信託は、主に値動きのある有価証券、商品、不動産等を投資対象としています。投資信託の基準価額は、組み入れた有価証券、商品、不動産等の値動き等(組入商品が外貨建てである場合には為替相場の変動を含む)の影響により上下するため、これにより元本損失が生じることがあります。また、外貨建て投資信託においては、外貨ベースでは投資元本を割り込んでいない場合でも、円換算ベースでは為替相場の変動により投資元本を割り込むことがあります。投資信託は、投資元本および分配金の保証された商品ではありません。<手数料・費用等>
投資信託ご購入の際の申込手数料はかかりませんが(IFAを媒介した取引を除く)、購入時または換金時に直接ご負担いただく費用として、約定日の基準価額に最大0.75%を乗じた額の信託財産留保額がかかります。また、投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用として、純資産総額に対して最大年率3.1%(税込:3.41%)を乗じた額の信託報酬のほか、その他の費用がかかります。また、運用成績に応じた成功報酬等がかかる場合があります。その他費用については、運用状況等により変動するものであり、事前に料率、上限額等を示すことができません。手数料(費用)の合計額については、申込金額、保有期間等の各条件により異なりますので、事前に料率、上限額等を表示することができません。なお、IFAコースをご利用のお客様について、IFAを媒介した取引から投資信託を購入される際は、申込金額に対して最大3.5%(税込:3.85%)の申込手数料がかかります。詳しくは当社ウェブサイトに掲載の「ファンド詳細」よりご確認ください。<その他>
投資信託の購入価額によっては、収益分配金の一部ないしすべてが、実質的に元本の一部払い戻しに相当する場合があります。また、通貨選択型投資信託については、投資対象資産の価格変動リスクに加えて複雑な為替変動リスクを伴います。投資信託の収益分配金と、通貨選択型投資信託の収益/損失に関しては、以下をご確認ください。