生前贈与は認知症にそなえた相続対策として有効です。
認知症と判断されたときの財産管理・運用・処分はできなくなりますが、渡したい人に財産を渡せて、上手く贈与を行えば相続税対策にもつながります。
家族信託 | 遺言 | 生前贈与 | |
---|---|---|---|
効力を巡る相続争い対策 | △(※) | △(※) | △(※) |
財産承継対策 (財産を渡す相手を選べるか) |
◎ | ◎ | ◎ |
相続税対策 | × | × | 〇 |
認知症になったときの財産管理対策 | ◎ | × | × |
費用 | 30万- 100万円 |
数万- 50万円 |
1万- 25万円 |
「◎」:最適
「〇」:適している
「△」:注意が必要
「×」:適していない
※効力を巡る相続争い対策について、公正証書で文書を作成した場合効果あり
生前贈与とは、財産の所有者が生きている間に財産を他者に無償で渡すことです。生前贈与を行う場合は、贈与契約書を作成するのが一般的です。
必ずしも作成しなければいけないわけではありませんが、契約書がないと、後から渡した・渡していないを巡って当事者同士や家族と言い争いになったり、税務調査で追及されたりするおそれがあります。
トラブルを避けるためにも契約書を作成するようにしましょう。
生前贈与には大きく次のようなメリットが挙げられます。
相続税の節税対策ができることは生前贈与の大きなメリットです。
生前贈与をすることで、相続発生時の財産額を減らすことができ、相続税の軽減につながります。
ただし、生前贈与加算には注意が必要です。贈与を受けた日から3年以内に贈与者が亡くなった場合、相続財産として扱われるため相続税の対象になります(相続税法第19条)。
なお、生前贈与加算の対象は、相続税法改正により相続開始前3年以内から7年以内に変更されます。適用は「2024年1月1日以降の贈与」からで、贈与者の相続開始日によって加算対象期間が決まります。
生前贈与も、家族信託や遺言同様、財産を渡したい人に渡すことができます。
渡すタイミングを自分たちで決められるのも生前贈与の強みです。たとえば、今後評価額が上がりそうな不動産は、早めに渡しておくと、その分課せられる贈与税(または相続税)も低く抑えられます。
生前贈与のデメリットは、「贈与税がかかる」ことです。
生前贈与により相続税の税額を減らせても、贈与税が発生するのでは節税効果が薄れてしまいます。
とはいえ、贈与税には様々な特例や控除があるので、上手く活用すれば税負担を抑えることが可能です。
期限 | ||
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暦年贈与 | 年間110万円以下の贈与なら贈与税が課せられない方法 | なし |
配偶者控除 | 結婚して20年以上経った夫婦間の、居住のための贈与は2,000万円まで非課税になる制度 | なし |
教育資金の一括贈与の特例 | 教育のための贈与は1,500万円まで非課税になる制度 | 2026年3月31日まで延長 |
結婚・子育て資金の一括贈与の特例 | 結婚や子育てのための贈与は1,000万円まで非課税になる制度 | 2025年3月31日まで延長 |
※リンクから国税庁のホームページに移動
贈与税と相続税の計算方法は、国税庁のホームページに掲載されていますので、どの程度の税負担になるかご確認いただけます。
【贈与税と相続税の計算方法(国税庁ホームページ)】
生前贈与を行う場合は、贈与者と受贈者で贈与の内容に合意してから契約書を作成します。
贈与契約書をもとに、預貯金や有価証券であれば金融機関で振込や移管を、不動産ならば所有権移転の登記を手続きします。