マイナス金利は、学資保険などの貯蓄性保険にどんな影響を与えたのか


マイナス金利は、学資保険などの貯蓄性保険にどんな影響を与えたのか

2016年1月29日付で「マイナス金利」の導入が決定されました。記憶に新しいかもしれませんが、約1年半が経過しています(2017年7月現在)。マイナス金利政策は、預金金利、住宅ローン金利だけでなく、学資保険などの貯蓄性保険にも影響を与えました。今回は、学資保険などの貯蓄性保険にどのような影響を与えたのか、株式会社Money&You代表取締役/マネーコンサルタントの頼藤太希さんに解説いただきます。

日本銀行本店外観

(出所)日本銀行

政策委員会の風景

(出所)日本銀行




そもそも「マイナス金利」ってなに?

「マイナス金利」とはなにかを理解するためには、日本銀行(以下、日銀)と各金融機関との関係性を知る必要があります。
第一に、日銀は「銀行の銀行」であるということ。日銀は、金融機関に対しては保有する預金の一定割合以上の金額を、日銀の当座預金に預け入れることを課しています。これを「準備預金制度」と言いますが、これによりお金の流通量を操作しているわけです。

マイナス金利政策導入前は、私たちが銀行に預けると、銀行に利子をつけてもらうことと同様、各金融機関は、日銀の当座預金にお金を預けていることで利子をつけてもらっていました。それが、利子率がマイナス0.1%になったことにより、各銀行が日銀に対して利子を払う必要が出てきたわけです。
「各銀行が日銀に対して利子を払う」というイメージを得られない方がいると思いますが、日銀に預けるには「手数料」がかかるようになったと理解しておくとわかりやすいでしょう。

マイナス金利の導入でなぜ保険料が上がるの?

実はマイナス金利は、銀行だけでなく、将来の保険金支払いに備えて、長期で運用している生命保険会社にも大きな影響があります。

まず、知っておかなければならないのは、生命保険会社は、保険契約者に対して、将来の保険金のために一定の運用利回り(予定利率)で運用すること約束して、保険料を決定しているということです。
正確には、予定利率の他に、予定死亡率(過去の統計から、性別・年齢別の死亡者数を推計したもの)と予定事業費率(保険会社の運営にかかる必要経費を織り込んだもの)を踏まえて、保険料は決定されています。

次に、言われれば当然と思うかもしれませんが、日本の生命保険会社は、将来の保険金をほぼ円で支払っています。そして生命保険の性質上、保険金の支払いは20年、30年先と遠い将来になることが多いため、必然と長期の運用になり、将来の保険金を確実に支払うためにはリスクを取りすぎず安定した運用が必要になります。以上のことから、運用資産は円建ての債券が中心です。

債券とはお金を借りたときに発行する「借用証書」のようなもので、預貯金にお金を預けると利息がもらえるのと同様、債券を購入することでも定期的に利息がもらえます。債券を購入した金額を「元本」と呼びますが、定期預金と同様、満期が来れば元本が返済され、株式や投資信託よりも安全性の高い資産です。

マイナス金利の影響は当然、国債や社債にも及ぶため予定通りの運用ができなくなるわけですが、そうなると損をしてしまうため、生命保険会社の財務状態は悪化してしまいます。
財務を健全に保つためには、金利が下がると、生命保険会社としては予定利率を下げざるをえないわけです。
従来の予定利率よりも予定利率が下がってしまうと運用利益が少なくなるため、契約者が将来もらいたい保険金を得るには、より多くの保険料が必要になるので、保険料が上がるという仕組みです。

【保険料が上がる一連の流れまとめ】
金利が下がる→保険会社は予定通り運用ができない→予定利率を下げる→保険料が上がる

保険料が上がるのは学資保険などの貯蓄性保険

各生命保険会社は、このように市場動向を踏まえ独自に予定利率を下げていますが、予定利率を決めるのに参考にしている指標が、金融庁が提示している標準利率です。2017年4月にこの標準利率は1.0%から0.25%へ下げられました。
これにより、各生命保険会社も予定利率を引き下げることになり、その結果保険料が上がっています。
保険料が上がった商品は、学資保険、終身保険、個人年金保険、養老保険などの貯蓄性が高く保険期間も長い保険が中心です。定期保険などの掛け捨てで、かつ保険期間が短い保険は少しの値上がりか据え置きになっています。
理由としては、貯蓄性保険は支払った保険料のうち運用に回る部分が大きいため、予定利率の影響を受けやすいからです。

各社の貯蓄性保険の保険料の値上がり率を見てみると20%〜30%となっているケースが多いようです。また、単に保険料が上がるだけでなく、新規に販売を中止する場合もあります。マイナス金利が始まってから、早々に動いていた生命保険会社もありましたが、マイナス金利政策が導入されて以降、多くの商品が販売中止または販売縮小になっています。

保険の予定利率が下がると、解約返戻金が少なくなる

解約返戻金は、貯蓄性保険を中途解約した際に戻ってくるお金のことです。予定利率が高い商品は、払い込んだ保険料よりも解約返戻金が多かったので資産運用の一つとして人気がありました。しかし、予定利率が下がると運用利益が少なくなるため、解約返戻金が少なくなります。
払い込んだ保険料に対する解約返戻金の割合を「返戻率」と呼びますが、以前はこの返戻率が110〜120%と、100%を超える商品がたくさんありましたが、一部を残して、現在は100%を切る商品が増えています。つまり元本割れするということです。

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頼藤 太希 氏

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント

頼藤 太希 氏

慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性のための、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場『FP Cafe』を運営。メディアなどで投資に関するコラム執筆、書籍の監修、講演など日本人のマネーリテラシー向上に努めている。著書は「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)、「税金を減らしてお金持ちになるすごい!方法」(河出書房新社)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。



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